FXニュース:春の年度末決算で輸出企業の外貨売り円買いが円高に影響
2022年3月30日東西FXニュース – 2022年3月30日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- ウクライナ停戦協議期待値でリスクオンのドル売りがユーロや円に波及
- 原油先物下落で日本の貿易赤字懸念後退や岸田首相会談も円買い要因に
- 今夜発表の米国の四半期国民総生産(GDP)等の経済指標にも注意
今日2022年3月30日の東京外国為替市場の円相場の為替レートは、今夜17時の終値が121円81~83銭で、前日比1円76銭の円高ドル安であった。その後の今夜18時頃のロンドンと欧州の外為市場でも121円60銭前後で推移し、19時10分になっても121円89〜90銭で前日比1円68銭の円高ドル安が続いていた。
主な理由は、今日は春の期末決算期で、国内輸出大企業がまだ高値圏の外貨を朝から売って円を買って利益を上げる中で、投資家の外貨の利益確定売りや調整売りも起き、日本市場の朝9時からドルなどの外貨が売られて円が買われたことが円高に繋がった。また、ウクライナ情勢での和平会談への期待値から、緊急時に流動性の高いリスク回避の安全資産として余剰に買われていたドルが売られたドル安も今日の円相場にも波及した。
今日は原油先物価格も、3月8日頃には126ドル台付近まで高騰していたのが下落して104〜106ドル台で取引されており、原油や商品先物取引(コモディティ)価格の高騰によって日本の貿易赤字が継続すれば、「低リスク通貨」としての日本円のリスクになるという懸念が減少したので、今日は投資家にもまだ安値圏の円が買われやすかった。
今朝未明までのニューヨーク市場でも、ロシア国防省がウクライナの首都キエフなどで軍事活動を縮小すると発表し、昨日からのトルコのイスタンブールでの停戦協議継続の期待からリスク回避時に流動性の高さから安全資産として買われていたドルがユーロなどの外貨に対して売られており、先述の通り、今日の円相場の円高ドル安に波及した。
その為、ドル対ユーロも、その後の今日の東京外為市場17時の終値が1.1132~33ドルで前日比1.33セントのドル安ユーロ高であった。
ただし、ユーロは日本円に対してはまだ高値圏であり、外貨利益確定売りと円買いの期末決済期の今日の東京17時の終値は、135円61~63銭で前日比31銭の円高ユーロ安だった。
しかし、一昨日までの数週間連続の円安原因となっていた日米金利差が、今日も日銀が公開市場操作の指し値オペについて予定されていた対象年限での国債の購入額を増やし、更に超長期債も追加で実施すると発表した為に、日銀の金利上昇抑制姿勢で日米金利差拡大予想が再熱し、発表後に円売りの抵抗も起きている時間帯も午後などにあった。また、朝から下落していたドルが、正午過ぎに121円31銭付近に達した為、安値でのドルの買い戻しの緩やかな円高反発も起き始めた。
日銀は、円安が日本の輸出企業の製品の国際価格競合性を高めて業績を後援し、日銀の考える「日本経済」にとって利益のある「良い円安」としてきた。しかし、円安は同時に、コロナ景気や脱ロシアなどで商品価格が世界的に高騰する中で、国内天然資源が乏しく輸入大国である日本の輸入コストや国内物価を上昇させ、インフレが家計を圧迫する「悪い円安」もあると、国民と政府は懸念して来ている。
日本はこれまで欧米の様に金利を上げて海外からの投資を集めなくとも、過去の貿易黒字の積み重ねの世界最大の対外純資産と世界的に高い貯蓄率で世界的に見ても裕福な国とされており、世界の国民総生産(GDP)のトップを米国や欧州連合と争う中国に比べ個人資産率が約十倍近いともされており、国が赤字で投資が必要な時には政府が自国民に大人気の国債を売れば円の需要がとりあえず賄えるという特殊な財政体質を持っていたために、長らく大規模緩和の金利抑制の金融政策が行われて来た。その一方で、政策金利の利上げでインフレ抑制と海外投資を集める米国との日米金利差拡大予想や今後の金融政策の違いから、一昨日に一時125円を超えたことで、最近は日銀と政府と国民の間で円安問題が浮上してきていた。
今日は円安問題で政府と日銀と会談があると朝から報道され、政府が何か対策を協議するのではと期待され、利益確定もあって朝からドルが売られて円が買われていたのだが、その後、会談後に政府は特に何もしないと言う報告では、午後に円売りドル買いが起きた。
政府や日銀と国民の間での温度差が、以前より国内からの円売りによる外貨投資増加にも繋がっており、政府や日銀の対応によっては、今後も再び日本内外の投資家達に影響を与える可能性が考えられる。日本政府と日銀が何もしないまま、海外の金利が上がると、再び金利差で円安ドル高になっても不思議ではない。
また、ユーロに関しても、ウクライナ危機の地政学リスクや脱ロシアの欧州エネルギー危機で以前は円に対しても下落したユーロが最近は回復しており、昨日からのウクライナとロシアの4回目の停戦協議への期待値から、更に安全資産のドルや低リスク通貨の円に対してもユーロがリスクオンで買われて上昇しているので、今後の欧州経済のコロナ禍からの回復や、欧州中央銀行(ECB)の金融政策が期待されていることもあり、今後の和平会談の経過や欧州金利金融政策などによっては、対ユーロの為替レートに影響を与える可能性がある。
英国ポンドにも今日は同様の円高傾向が見られ、今日の東京外為終値17時頃が159円94銭〜160円00銭前後で前日比93銭前後の円高ポンド安であった。同時刻のスイスフランやオーストラリアドルに対しても、前日比で全般的な円高に及んだ。
昨夜23時の米国の景気経済指数の3月消費者信頼感指数は前回の110.5%よりを下回る107.2%でほぼ予想の107%に近かったので、特に新たなドル買いの材料にはならなかったが、今夜もこの後に、より重要な21時15分に米国ADP雇用統計や、21時半の米国内総生産(GDP)などの景気経済指標の発表や、世界の投資家達が今後の米金利政策関連の予想の情報源にしている連銀関係者の発言の速報が予定されている。
その結果によっては、今後のドル相場に影響を与える可能性も高いので注意が必要である。
今夜の東京終値後のロンドンと欧州市場の後にニューヨーク市場が開くが、その取引時間内のニュース発言や発表は、為替レートやテクニカル分析の数値にもリアルタイムで影響を与える可能性があるので、今後もファンダメンタル・ニュースには注意が必要である。
大きなファンダメンタル・ニュースは、それまでのテクニカル分析の数値を変えることさえある。そのため、FXの相場予想では、現在のニュースを踏まえて、最新のファンダメンタル分析とテクニカル分析の両方を使いこなすことが重要である。
今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年3月30日の日本時間(JST)19時20分(英国夏時間(GMT+1)11時20分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 19:20の為替レート | 東京外国為替市場前日比 |
ドル/円 | 121.85 〜 121.86 | -1.72(円高) |
ユーロ/円 | 135.62 〜 135.64 | -0.30 (円高) |
ユーロ/ドル | 1.1128 〜 1.1130 | +0.0129 (ドル安) |
英ポンド/円 | 160.13 〜 160.19 | -0.74 (円高) |
スイスフラン/円 | 131.61 〜 131.67 | -0.39 (円高) |
豪ドル/円 | 91.51 〜 91.55 | -0.75 (円高) |
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