FXニュース:米連邦準備理事会(FRB)金融引き締めと景気減速懸念のリスク回避とは

2022年5月20日
FXニュース:米連邦準備理事会(FRB)金融引き締めと景気減速懸念のリスク回避とは

 

東西FXニュース – 2022年5月20日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 物価高と供給不足で米景気懸念の米株安国債リスクオフで米長期金利が低下
  • 米長期金利低下で日米金利差縮小時のドル売り円買いが今日の値動きに影響
  • 欧州中央銀行(ECB)金融引き締めの利上げ予想で今日はユーロ買いも

今日2022年5月20日の金曜日の東京外国為替市場のFXの円相場の為替レートは、9時から17時までの東京外為取引時間の円の安値が128円21銭前後から高値127円53銭前後の値動き幅68銭程で、今夜17時の東京市場終値は127円90〜92銭前後で、同時刻の東京終値の前日比で約32銭の円高ドル安であった。

原因は、まず昨夜から今朝の米国ニューヨーク外国為替市場で、米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めと、物価高と資源供給問題などで米景気減速懸念から、米株安時のリスク回避で米国債が買われたことで米長期金利が低下し、日米金利差縮小によるドルからの低リスク通貨の日本円買いが強まり、一時は127円3銭まで円が買われ、今朝の東京外国為替市場開場前のニューヨーク終値が127円80~90銭で前日比40銭円高ドル安であった影響で、今日は朝から円高傾向から始まっていた。

フィラデルフィア連邦銀行が昨夜に発表した米国経済指標の5月製造業景況指数は、前月の17.6と市場予想の15.0よりも大幅に低い2.6だった。他の米統計の住宅関連指標も市場予想以下で、4月の米景気先行指標総合指数も前月比で前回0.3%(修正0.1%)と予想の0%を下回る-0.3%であったために、米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めが米国景気減速に繋がる懸念で、リスク回避姿勢の米株売りと米国債買いが強まっていた。

そのため、ニューヨーク株式市場で米株価が続落しており、ダウ工業株30種平均が今年の安値を更新し、リスクオフの米国債買いでは債券価格が上昇する一方で米長期金利が下がり、一時は前日比0.11%減の2.77%付近まで下落したことで、日米金利差縮小時のドルからの低リスク通貨の円買いで、今朝のニューヨーク市場の円の高値の127円3銭を記録した。しかし、それを底辺に最近の円の高値での利益確定売りのドルの買い戻しも入った。

その流れを受けて始まった今日の日本東京外国為替市場では、総務省が今朝8時半に発表した日本の景気経済指標の4月全国消費者物価指数(CPI)が、変動の激しい生鮮食品は除く総合指数が101.4で、前年同月比で2.1%上昇していた。市場予想通りの2.1%で、日本銀行の2%の物価安定目標を少し超えたインフレ傾向ではあったが、2%物価安定水準は、日本だけでなく米国や欧州英国なども目標としており、物価がこのペースで安定することはその国の企業の収益拡大や賃上げに繋がり、経済活性化への好循環が生まれるとされている理論的数値であるために、日本銀行の金利抑制の大規模緩和金融政策が今後も維持される予想から、今後の日米金利差再拡大予想での円売りドル買いも入った。

ただし、日本の物価上昇は外的要因の影響が強く、上昇率が2%に達したのは、過去に消費税が値上げされた時や、世界的資源高のあった2008年以来で、今回もロシアのウクライナ侵攻による世界的な原油資源高の影響と、長引く円安による輸入コスト増加等の影響である。日米欧英の目標2%の物価安定に対して、現在公開中の4月統計で米国が8.3%、欧州ユーロ圏が7.4%、英国は9.0%の記録的なインフレに達していることに比べると、日本の物価上昇率はまだ安定している。そのため、米国市場では米インフレ景気経済懸念時のリスク回避に、ドルから買える低リスク通貨の円が買われていたことが分析できる。

今日の朝10時の中値決済では、今日は20日で10がつく日のために、日本企業の決済日の集中しやすい5と10のつく「五十日」取引にあたるため、まず輸入企業の実需の円売りのドル買いが先行し、10時から11時にドルが127円台から128円台に上昇した後に、12時から13時は五十日狙いの投資系の利益確定売りと輸出企業のまとまったドル売り円買いで、ドルが127円台中盤近くにまで一時は急落した。

しかし、今日の午後には安値になった世界的な安全資産のドルは次第に買い戻されていき、本日の下げ幅を縮めていた。背景に、中国中央銀行の人民銀行が、住宅ローン用の実質的政策金利の指標金利を下げた影響や、日経平均株価が300円超上昇回復したこともあった。また、夕方に欧州市場が参入すると、後述のユーロに対する円安の影響も波及して、昨日に比べると少し小幅な円高ドル安の今夜の東京終値を迎えた。

今日のユーロは、欧州中央銀行(ECB)が昨夜に4月開催分の理事会議事要旨を公表し、欧州の高インフレ対策でECBが7月にも利上げする予想が強まり、ユーロ買いが起きていた。そのため、今日の東京終値17時には135円23~25銭で、前日比70銭の円安ユーロ高であった。ユーロは対ドルでも、17時に1.0572~73ドルで、前日比0.80セントのドル安ユーロ高だった。

今日発表された欧州ユーロ圏のドイツの4月独生産者物価指数は、前月比で前回の4.9%と予想1.0%に対して結果2.8%で、前年比でも前回30.9%と予想29.4%に対して結果33.5%で、予想を上回っていたことも欧中銀の利上げ予想のユーロ買いを強めた。尚、今夜この後の23時に欧州ユーロ圏の景気経済指標の、消費者信頼感指数(速報値)5月分が発表予定なので、今後もニュースによる値動きには注意が必要である。

英ポンド関連では、今日発表の英国GfK消費者信頼感調査5月分が、前回と予想-38に対して結果が-40だった。しかし、英国小売売上高4月分は、前月比で前回-1.4%(改定値-1.2%)と予想-0.1%に対して結果1.4%で改善されていた。そのため、今日の東京終値17時には、159円 54〜60銭で、前日比7銭の円安ポンド高であった。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年5月20日の日本時間(JST)19時21分(英国夏時間(GMT+1)11時21分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 19:21の為替レート 東京外国為替市場前日比
ドル/円 128.09 〜 128.10 -0.13(円高)
ユーロ/円 135.68 〜 135.69 +1.15(円安)
ユーロ/ドル 1.0591 〜 1.0593 +0.0099(ドル安)
英ポンド/円 159.82 〜 159.88 +0.35(円安)
スイスフラン/円 131.82 〜 131.88 +0.43(円安)
豪ドル/円 90.49 〜 90.53 +0.41(円安)


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