FXニュース:日米金利差拡大予想と米長期金利3%台で一時133円の円安ドル高を記録
2022年6月07日東西FXニュース – 2022年6月7日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 日欧金融政策の違いで今日は一時2015年1月以来の142円台の円安ユーロ高に
- 英現政権維持でも英中銀の利上げ継続予想では日英金利差の円安ポンド高継続
- 豪中銀が政策金利を0.85%へと0.5%利上げ発表し日豪金利差でも円安豪ドル高
今日2022年6月7日の火曜日の東京外国為替市場のFXの対ドル円相場の為替レートは、9時から17時までの東京外為取引時間の円の安値が133円0銭前後から高値132円10銭前後の値動き幅90銭程で、今夜17時の東京市場終値は132円78〜79銭前後で、同時刻の東京終値前日比で約2円2銭の大幅な円安ドル高であった。
今日の15時台には、2002年4月以来の一時133円0銭の円安ドル高も記録した。その後の高値での利益確定売りと欧州市場参入の持ち高調整などで、上昇していた米長期金利が3.06%台から3.04%前後に一時低下して少し戻したところで、今夜17時の東京終値を迎えたが、今日は記録的な円安ドル高となった。
原因はまず、米国の経済指標で雇用状況が予想以上に改善しており、米景気後退懸念が減少し、米連邦準備理事会(FRB)が積極的な金融引き締めを進める予想が強まったことによる日米金利差拡大予想によるドル買いと円売りの影響が大きい。
最新の米雇用統計5月分で非農業部門の前月比の雇用者数が市場予想の32万8000人以上の39万人増え、米失業率は横ばいの3.6%で米国では完全雇用状態に近いとされる水準で移行しており、米労働需給の逼迫はインフレ圧がある一方で米経済の堅強さを示すと考えられているために、米連邦準備理事会(FRB)が米景気減速の懸念なく今後も利上げを加速可能とのタカ派の予想が強まり、日米金利差拡大予想による円安ドル高が進んだ。
昨夜から今朝までの米国ニューヨーク市場時間の米債券市場でも米長期金利が3%を超えて上昇し、3.04%のニューヨーク終値を記録しており、先週末の2.93%の同時刻の終値と比較しても大幅な上昇で、日米金利差でのドル買い円売りが進んでいた。
そのトレンドを受け継いで始まった今日の日本の東京市場でも、米長期金利の3%超えの上昇を受けて、日米金利差の拡大による円売りとドル買いが継続した。また、金融引き締めで利上げの米連邦準備理事会(FRB)に対照的な金融緩和の金利抑制の日本銀行の日米の金融政策の違いによる金利差拡大予想でも円売りドル買いも増加した。
今朝も参院の財政金融委員会で日本銀行の黒田東彦総裁は、「強力な金融緩和を粘り強く続ける。急激な変動でなく安定的な円安方向の動きなら、我が国の経済全体で見てプラス」と発言しており、円安要因に歯止めがかからない状態となっている。
日本銀行の黒田東彦総裁は、昨日の東京都内での講演でも、食料品などの値上げが国内で相次いでいることに関して、「日本の家計の値上げ許容度も高まってきている」と発言しており、ガソリン高騰などでも国民の負担が懸念される中で、「一つの仮説として、コロナ禍の行動制限により貯蓄が増えたことで、日本の家系が値上げを受け入れている間に、良好な経済環境を維持し、賃金の本格上昇につなげていけるかが当面のポイント」という自説を語った。また、「エネルギー価格の大幅上昇などにより一時的に2.1%の2%の物価上昇目標位以上に達したが、金融引き締めを行う状況には全くない。揺るぎない姿勢で金融緩和を継続していく」と、現在の円安要因となっている日本銀行の大規模緩和の金融政策の継続を強調していた。
一方で、今朝10時の仲値決済での円安による実需増加の円からのドルや外貨買いに加えて、ロシアのウクライナ侵攻の影響による資源高や原油高の継続も、円安ドル高の要因になっていた。エネルギーを輸入に頼る日本では、資源や原油の高騰で輸入決済用のドルや外貨実需が増えており、円安時の輸入コスト増で貿易赤字が起きやすく、今朝発表された最新の日本の貿易の統計でも、エネルギー輸入の赤字増により、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は、2兆1739億円の赤字であった。実需では、高値であってもドルや外貨準備が必要なため、円安ドル高が進む要因となっている。
対する円買い実需では、日本がコロナ入国規制後に外国人観光客の受け入れ再開を始めるというニュースは最近あったものの、まだ円安抑制が期待できるほど規模には至っていない。
外国人観光客が日本に観光に来る際に外貨から日本円で支払いをする実需は増えるものの、入国時の水際対策の緩和は段階的であるために、当面は政府は外国人観光客の入国上限を一日2万人までに規制し、観光ビザ発給の対象を一部の国の行動範囲が特定できる添乗員付きグループツアーに限定している。そのために、上限2万人の観光客からの外貨獲得だけでは現在の貿易赤字を相殺できる様な規模には達し難いために、円安抑制要因とは考え難い。
今日の他の円安要因としては、堅調な米景気経済指標に加えて、コロナ規制解除後の中国経済の影響する世界経済回復への期待などで、米国や欧州や日本の株式相場が上昇しており、以前の株安時のリスク回避で買われていた低リスク通貨の日本円が売られたことも影響していた。
今日のユーロは、今週9日に予定されている欧州中央銀行(ECB)理事会を前に、欧州中央銀行(ECB)でも7月の利上げ予想が強まっており、金利抑制の日本銀行との日欧の金融政策の違いから、円売りユーロ買いが優勢となっていた。そのため、今日は15年1月以来の一時は142円台の円安ユーロ高も記録し、17時の今日の東京終値でも141円88~90銭で、前日比1円41銭の大幅な円安ユーロ高だった。対ユーロの円相場も円安続伸で、今日で8営業日連続の円安ユーロ高となっていた。
ただし、米経済指標や米長期金利の米欧金利差などを受けたドル買いによるドル高要因は、円相場だけでなくユーロなどの外貨にも波及しており、ユーロはドルに対しては続落しており、今夜17時の東京終値では1.0685~1.0686ドルで、前日比0.57セントのドル高ユーロ安であった。
今日の英ポンドは、日本時間今朝未明発表の不信任投票ではかろうじて僅差で現状政権維持となったボリス・ジョンソン英首相の結果発表時からはポンド売りの抵抗が入ったものの、英国の現在9%で年内10%超え予測の記録的なインフレで、既に1%に政策金利を利上げしていた英国中央銀行のイングランド銀行にも更なる利上げ継続予想が強まっており、日英金利差と拡大予想で円からのポンド買いが優勢で、今夜17時の東京終値でも165円72 〜78銭で前日比51銭の円安ポンド高だった。英国の与党保守党(トーリー)の信任投票の実施前には大幅に上昇していたポンドは、発表後に小幅上昇に切り替わった。
今日のオーストラリアの豪ドルは、オーストラリア中央銀行(豪中銀)が今朝の理事会で政策金利を市場予想以上の0.5%引き上げ、0.85%にする決定をした。そのため、日豪金利差でも豪ドルに対して円売りが進み、米ドルなどの外貨に対する円安に波及した影響も出た。
円相場は対豪ドルでも下落し、一時は2015年6月以来の95円98銭付近まで売られたが、利益確定売りや持ち高調整などの抵抗も入り、今夜17時の東京終値では95円38 〜42銭で前日比51銭の円安豪ドル高であった。
今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年6月7日の日本時間(JST)19時16分(英国夏時間(GMT+1)11時16分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 19:16の為替レート | 東京外国為替市場前日比 |
ドル/円 | 132.68 〜 132.70 | +1.92(円安) |
ユーロ/円 | 141.73 〜 141.75 | +1.26(円安) |
ユーロ/ドル | 1.0680 〜 1.0682 | -0.0062(ドル高) |
英ポンド/円 | 166.05 〜 166.11 | +0.84(円安) |
スイスフラン/円 | 135.90 〜 135.96 | +0.04(円安) |
豪ドル/円 | 95.39 〜 95.43 | +0.52(円安) |
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