FXニュース:米欧利上げ速度差のドル買いユーロ売りの影響が円相場にも波及
東西FXニュース – 2022年6月29日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米連邦準備理事会(FRB)関係者が景気懸念を退けた利上げ発言でドル買いが
- 米消費者信頼感悪化では景気懸念の株安時のリスク回避市場も
- G7ロシア制裁案で原油高時の日本貿易赤字懸念リスクの一時軽減も
今日2022年6月29日水曜日の東京外国為替市場のFXの対ドル円相場の為替レートは、9時から17時の東京外為取引時間の円の安値が136円28銭前後から高値135円78銭前後の値動き幅約50銭で、17時の今日の東京外国為替市場の終値は136円5〜6銭前後の、同時刻の前日比で約30銭の円安ドル高であった。
原因はまず、昨夜の東京終値直後の欧州英国市場時間に、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁がECBフォーラムで発言し、欧州インフレ対策の金融政策の正常化で、来月0.25%の利上げをし、状況によっては9月にも大きな追加利上げをするという、以前の発言と同じ内容を繰り返し、特にタカ派の意見がなかったことから、米国の利上げ加速予想と比較すると欧州の利上げ加速予想の減退から、持ち高調整でのユーロ売りとドル買いが起き、ユーロが対ドルで下落し、ユーロに対するドル高の影響で円に対してもドルが上昇した。
そして、その後から今朝までの米国ニューヨーク市場でも、米連邦準備理事会(FRB)関係者のニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が、米経済チャンネルのCNBCテレビのインタビューで、「米景気後退は基本的なシナリオにはない。今の米政策金利は、適切な水準からはかなり低い。次回会合では50ベーシスポイント(bp)もしくは75bpの利上げを巡って討議されることは明白だ。」と発言し、FRBの今後の積極的な利上げ加速の可能性についてタカ派の発言があったことでドル買いが起き、ドルは対円で再び136円台に上昇した。
それ以前にも、米連邦準備理事会(FRB)の他の関係者のサンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁が、ビジネス系ソーシャルメディア(SNS)とのインタビューで、「FRBが過剰に積極的な行動をすることで、米経済がリセッション(景気後退)になるのではないかと多くの人が懸念しているが、私自身はこのままインフレが抑制されないままで放置されることの方が、米経済の持続可能な拡大への大きな制約と脅威になると懸念している。そのため、FRBは需要抑制で利上げをすることにより、インフレにブレーキをかけるつもりだ。私達が可能な限り迅速に行動することで、あらゆる場所の米国人達が懐に安堵を覚え始めるようになるようにしたい。」というような発言をしていた。
両者の共通意見は、米失業率は現在の3.6%からコンマ数ポイントの上昇を見込んではいるが米労働市場は堅調で、米経済には充分な勢いがあるため、リセッションは想定していないということで、セントルイス連銀のブラード総裁も同日の論文で、過去に米連邦準備理事会(FRB)が利上げをした際にリセッションを起こさなかった事例の1983年と1994年のケースステディを発表し、「今後数カ月で追加利上げの可能性が高いというFRBのフォワードガイダンスは、米連邦公開市場委員会(FOMC)がインフレ率をFRB目標の2%に回帰させるために必要な政策をより迅速に実行できるようにするための意図的な措置だ」と発言していた。
ただし、昨夜23時頃に発表された最新米国経済指標の6月消費者信頼感指数は前回と予想よりも悪化しており、株式市場での景気懸念は継続しており、米株が売られて株式市場が下落したことでは、低リスク通貨の円もリスク回避で買われる機会があった。しかし、同時に米株安時のリスク回避のコモディティー買いもあって原油価格が一時111ドル台に高騰したため、原油高は輸入コスト増加による日本の貿易赤字継続懸念の円のリスクと考えられているために、原油高騰時の低リスク通貨買いは弱く、今日の円安要因を凌ぐほどにはならなかった。
また、金利抑制の日本銀行(日銀)に対して、米連邦準備理事会(FRB)には投資に有利な利上げ継続期待が高まっているために、日米金利差拡大予想での円安要因も継続していた。
その流れを引き継いで始まった今日の日本の東京市場時間では、今朝10時前の仲値決済に向けては輸入企業による円売りドル買いが出たが、今朝までの米株下落の影響で今日の日経平均株価が低迷した際に、111ドル台だった原油価格が110ドル台に下げてきていたこともあって、日本時間の投資家達のリスク回避では低リスク通貨の円買いの動きがよく出て、一時は今日の円の高値の135円78銭付近まで買われた時間もあった。
原油先物価格が一時低下した要因には、主要7カ国(G7)首脳会議が今朝までに、原油価格の高騰によるロシアのウクライナ侵攻の武器購入等の戦争の資金源増加を抑制するために、ロシア産原油に価格上限を設定し、一定以上の価格で売却されたロシア産の石油の輸送禁止を検討することで合意した。世界的な原油不足が需要と供給での高騰要因であるために、安値で供給可能なロシア産が加わる可能性が出てきたことでは下げに転じた。米政府は現在、ロシア産石油を購入しているインドなどを含む大規模なロシア産石油消費国との協議を進めており、アフリカや中南米などの小規模消費国とも近く協議を始める予定と発表したニュースが値動きに影響した。
しかし、午後には時差で朝の欧州英国市場も参入しており、再び日米金利差拡大予想などで欧米側の円安トレンドが優勢になり、136円5〜6銭前後の前日比約30銭の円安ドル高の今夜17時の東京終値をつけた。
なお、ドル円には今夜この後の21時半に、米国最新重要経済指標の1〜3月期四半期実質国内総生産(GDP)の発表が予定されており、22時にはFRBのパウエル議長の発言も予定されているために、市場ではイベント前の持ち高調整やなどの動きも出てきており、世界の投資家たちに注目されている。
今日のユーロは、先述の通り、欧州中央銀行(ECB)の金融引き締めの利上げ速度が米連邦準備理事会(FRB)と比較すると遅くなる予想が強まっていたことで、ドルに対してユーロが売られた影響で円に対しても下げており、今夜17時の東京終値のユーロ対円は143円4~7銭で、前日比約64銭の円高ユーロ安であった。ユーロ対ドルもユーロ安で、今夜17時の東京終値は1.0513~1.0515ドルで、前日比約0.71セントのユーロ安ドル高になった。
18時に発表された欧州ユーロ圏の最新経済指標の6月消費者信頼感指数(確報値)は、前回と同じ横ばいであったが、今夜21時に発表予定のドイツの6月消費者物価指数(CPI)の鈍化予想からのユーロ売りも出ているが、結果によっては値動きに影響する場合があるので、今後も最新のFXニュースが注目されている。
英ポンドは、昨夜のロンドン市場で、スコットランドの英国からの独立の賛否を問う住民投票の2023年10月実施計画が浮上し、英政治懸念のポンド売りと安全資産のドル買いが優勢となり、ポンドはドルに対して下げていた。その影響はドルに続く安全通貨の低リスク通貨の円にも波及しており、今日は前日比で円高ポンド安と円安ポンド高の境界レンジ付近での値動きが見られ、今夜17時の東京終値時のポンド対円は、165円89〜95銭の前日比でわずか1銭の僅差の円安ポンド高であった。しかし、その後の欧州市場では、それまでの日英金利差による円安要因が影響し、19時頃には円安ポンド高になっていた。
今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年6月29日の日本時間(JST)19時16分(英国夏時間(GMT+1)11時16分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 19:16の為替レート | 東京外国為替市場前日比 |
ドル/円 | 136.40 〜 136.42 | +0.65(円安) |
ユーロ/円 | 143.50 〜 143.51 | -0.18(円高) |
ユーロ/ドル | 1.0519 〜 1.0520 | -0.0065(ドル高) |
英ポンド/円 | 165.99 〜 166.05 | +0.11(円安) |
スイスフラン/円 | 143.22 〜 143.28 | +1.01(円安) |
豪ドル/円 | 93.73 〜 93.77 | -0.31(円高) |
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