FXニュース:一時137円付近の円安ドル高記録を更新後の今日の為替相場を分析
2022年6月30日東西FXニュース – 2022年6月30日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 1998年9月以来の約24年ぶりの円安ドル高記録を更新した原因とは
- 欧州中央銀行(ECB)主催の金融シンポジウムでのパウエル議長達の発言
- 今日は四半期末の五十日決算実需や日米株安時のリスク回避の動きも影響
今日2022年6月30日木曜日の東京外国為替市場のFXの対ドル円相場の為替レートは、9時から17時の東京外為取引時間の円の安値が136円80銭前後から高値135円96銭前後の値動き幅約84銭で、17時の今日の東京外国為替市場の終値は136円20〜22銭前後の、同時刻の前日比で約18銭の円安ドル高であった。
日本時間で昨夜から今朝の米国ニューヨーク市場では、対ドルの円相場は一時137円付近に下落し、今月21日の136円71銭の安値を超えて、1998年以来の約24年ぶりといわれる円安ドル高記録を更新した。今年3月から約20円近い円安が急速に進み、ドル円の1年リターン率は今日で22.66%に達しているために、最近は米景気不安の米株安時や仮想通貨下落時などに為替に流れ込んでくるトレーディング・ボリュームも目立ってきている。
原因はまず、昨日もお伝えした通り、米連邦準備理事会(FRB)関係者の発言続出で、来月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%などの大幅利上げ予想が強まってきており、利上げ方向の米国に対し、日本銀行(日銀)は金利抑制の大規模緩和継続で、日米の金融政策の方向性の違いによる日米金利差拡大予想によるドル買い円売りが継続していた背景があった。また、今週は四半期末と月末を控えており、実需でのドル買い需要もあった。
そして、昨夜は日本時間の22時頃から欧州中央銀行(ECB)主催の金融シンポジウムのECBフォーラムで、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長や、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁や英国中央銀行(BoE)のベイリー総裁達が発言をした。ここでも、米国でインフレ対策の利上げ方向の金融引き締めが加速するとの予想が強まり、金利抑制方向の大規模緩和金融政策を現状維持の日銀との違いがより明確になった。
パウエル議長は同フォーラムで、「米国の労働市場の方はとても堅強で、金融引き締めの利上げにも耐え得るだろうが、物価の安定と回復に失敗することの方が、大きな過ちとなる」と発言し、米景気懸念を退け、米インフレ抑制の方を優先するという見解を示し、米連邦準備理事会(FRB)が今後も積極的な金融引き締めを継続する予想が更に強まり、ドル買い円売りが優勢になり、137円付近の円安ドル高を記録した。
ただし、同じく昨夜に発表された米国経済指標の1〜3月期の四半期実質国内総生産(GDP)は、前期比年率で前回と予想の1.5%減よりも悪い結果の1.6%減で、1〜3月期の四半期GDP個人消費の前期比年率は前回と予想の3.1%に対して結果が1.8%で株式市場では米景気懸念の株売りによる株安時の安全資産で米国債買いが起きており、米長期金利が3.09%になり前日比で0.08%下げたため、137円付近の高値を付けた後のドルは利益確定売りなどで下げ、米株安時のリスク回避で低リスク通貨の円が買われた時間もあった。
そのため、今朝のニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は136円55~65銭で、前日比約45銭の円安ドル高で終値をつけた。
その後に始まった今日の日本の東京市場でも、今朝のニュースで米連邦準備理事会(FRB)関係者の米インフレ抑制の積極的な利上げ継続予想が強まっており、日米の金融政策の方向性の違いから、早朝には円売りのドル買いが優勢となっていた。
10時前の仲値決済では、今日は四半期末の月末の30日であることに加えて、元々日本企業の決済日の集中しやすい5と10日のつく日の五十日決済日で、輸入企業の円売りのドル買いも円相場に影響を及ぼした。
しかし、日本市場時間には世界的な利上げ加速による景気減速懸念や、急速に進む円安による輸入物価高への懸念などもあり、特に米株安の影響で今日の日経株価も下落した時には、リスク回避での低リスク通貨の円買いや、持ち高整理などでの円買いとドル売り抵抗も入った。
今日の午後の日経平均株価は、前日比で411円56銭安の大幅下落で大引けしており、米株のダウ先物も一時150ドル以上も下落し、時間外の米10年債利回りが一時3.05%台付近に低下したことや、時間外のWTI原油先物が110ドル付近に停滞していたことでも、原油高時の日本の貿易赤字継続懸念の一時減退から、低リスク通貨のリスク円買いを促した。そのため、16時半頃には一時135円96銭付近の今日の円の高値にも達した時間もあった。
ただし、日本の夕方には時差で朝の欧州英国市場も参入しており、再び欧米の円安トレンドでドルが買われて円が売られ、今夜17時の東京終値を136円20~22銭の前日比で約18銭の円安ドル高で迎えた。
ユーロ対円は、今日は欧州エネルギー問題を含めた欧州景気不安や欧州株安などのリスク回避のユーロ売りと安全資産のドル買いや低リスク通貨の円買いの影響の方が強く出ており、今夜17時の東京終値では142円29~31銭で、前日比約74銭の円高ユーロ安であった。
ユーロ対ドルも、同様の理由に加えて先述のパウエル発言のドル買いの影響などもあり、17時の今日の東京終値では1.0446~1.0447ドルで前日比約0.69セントのドル高ユーロ安だった。
昨夜の欧州市場で発表されたドイツの消費者物価指数(CPI)の伸び率が、前年同月比7.6%と前月から低下し、市場予想も下回っており、欧州インフレが減速すると、利上げ加速期待が減退するとともに、欧州債の利回りも低下し、欧米金利差拡大予想のドル買いとユーロ売りが優勢になっていた。それに加えて、前述の米FRBのパウエル議長と比較すると、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁からは特にタカ派の意見が出なかったことも、今日のユーロ売りの要因になった。
英ポンド対円の今日の17時の東京終値は、165円21〜27銭で前日の同時刻比で約36銭の円高ポンド安であった。
原因は、米FRBパウエル議長に比べると、英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)のベイリー総裁からも特にタカ派の意見は出なかったことから、英国の積極的な金融引き締め加速予想が減退し、ユーロ同様にドルに対してポンド売りが優勢になった影響が円相場にも波及していた。また、前述の株安時に低リスク通貨の円が外貨に対して買われた影響も出た。
尚、今日の午後に発表された英国の最新経済指標の1〜3月期四半期国内総生産(GDP)は、前回と同じ横ばいであった。
今夜この後には、日本時間21時半頃に、米国の最新経済指標のPCEデフレーターの発表が予定されており、前回の発表時にはドル円の為替相場に+12.3pipsの値動きの影響を及ぼしたことから、世界の投資家達に注目されている。
今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年6月30日の日本時間(JST)19時19分(英国夏時間(GMT+1)11時19分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 19:19の為替レート | 東京外国為替市場前日比 |
ドル/円 | 136.25 〜 136.27 | +0.23(円安) |
ユーロ/円 | 141.97 〜 141.99 | -1.06(円高) |
ユーロ/ドル | 1.0418 〜 1.0420 | -0.0097(ドル高) |
英ポンド/円 | 165.26 〜 165.32 | -0.31(円高) |
スイスフラン/円 | 142.00 〜 142.06 | -1.04(円高) |
豪ドル/円 | 93.77 〜 93.81 | -0.19(円高) |
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