FXニュース:米PCE予想以下で景気懸念の米長期金利低下時の円買いが円安抵抗に

2022年7月01日
FXニュース:米PCE予想以下で景気懸念の米長期金利低下時の円買いが円安抵抗に

 

東西FXニュース – 2022年7月1日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 米株安時の米国債リスクオフで米長期金利低下ドル売りと低リスク通貨の円買いが
  • 7月に入り新四半期の投資系の持ち高調整の円買いドル売りも為替相場に影響
  • OPECプラスの原油増産維持と米増産依頼予定の原油先物低下も円買いを助長

今日2022年7月1日金曜日の東京外国為替市場のFXの対ドル円相場の為替レートは、9時から17時の東京外為取引時間の円の安値が135円99銭前後から高値134円75銭前後の値動き幅約1円24銭で、17時の今日の東京外国為替市場の終値は135円26〜27銭前後の、同時刻の前日比で約93銭の円高ドル安であった。

主な原因は、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場で発表された米連邦準備理事会(FRB)も重視する米国経済指標の5月個人消費支出(PCE)が、市場予想よりも悪化しており、前月比では0.2%の増加率で前回の0.6%や市場予想の0.4%以下であった。また、食品・エネルギーを除く5月個人消費支出のPCEコア・デフレーターの前年同月比でも、修正済みの前回4.9%と予想4.8%に対して今回は4.7%で、前月比でも予想の0.4%に対して前回の修正後と同じ0.3%で、いずれも市場予想を下回っていた。

同日発表の5月個人所得の前月比では前回0.4%修正された0.5%の予想と同じ0.5%ではあったが、同時刻発表の米前週分新規失業保険申請件数も増加しており、PCE物価指数の総合指数は前年同月比で6.3%上昇と高止まりしている一方で、6月シカゴ購買部協会景気指数も前回60.3と予想の58に対して56の予想以下で、米インフレ対策での米連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融引き締めの利上げ加速予想で、買い控えも含めた消費停滞と、兼ねてからの株安に影響していた米景気経済後退懸念が再燃した。

そのため、米株式市場では米景気懸念のリスク回避の米株売りで米ダウ工業株30種平均が一時600ドル近く下落するなど株価が低下し、株安時の安全資産の米国債買いが起き、債権価格は上昇する一方で米長期金利が一時2.97%に下落し、前日比で0.12%も下がったことから、日米金利差縮小時の低リスク通貨の円買いとドル売りが優勢になり、今回のPCE発表後には約1円以上の円の上昇が起き、最新経済指標の為替相場への影響が顕著となった。

また、昨夜には石油輸出国機構(OPEC)に先日の主要国会議のG7で原油価格上限が協議されたロシアも含めた産油国の「OPECプラス」がオンライン会合を開き、前回決定の1日あたり43万2000バレルから64万8000バレルへの原油増産量を来月8月にも維持することを決定したが、ロシアのウクライナ侵攻の影響による世界的な原油高で、日本や欧米では更なる増産を要求していることから、バイデン米大統領が今月中旬に増産余力を持つサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)などを訪問し、湾岸協力会議(GCC)で石油増産を要請する予定を発表し、「全ての湾岸諸国が石油増産をするべきだ」と強調したことで原油先物価格が下落し、日本の貿易赤字リスクの低減から今日は低リスク通貨の円が買われやすくなったことも影響した。

その影響で今朝のニューヨーク終値でも円相場は上昇しており、135円70~80銭の前日比で約85銭の円高ドル安であった。そして、その流れを受けて始まった今日の日本の東京市場でも、円高ドル安のトレンドが継続した。

ただし、日本市場では今日から7月に入り、先月末の四半期末の実需でのドル買いよりは落ち着いてきたものの、10時頃の仲値決済に向けては輸入実需で一時135円99銭付近にドルが買われた時間もあった。しかし、今日からの新四半期で、投資系の持ち高調整や利益確定の外貨売りでの円の買い戻しもその後には強まった。

日本時間の午前の取引でも米長期金利が再び3%以下で推移していた際に、これまでに日米金利差拡大予想から持ち高が増えていたドルを持ち高調整で利益確定売りした円買いなどがまとまって入っており、昨日までには日米の金融政策の方向性の違いから一時は137円付近の約24年ぶりの円安ドル高が急速に進んでいたことに対する大きな抵抗が加わった。

米株式市場下落の影響で、今日は日本や欧州の主要な株価指数も軒並み低下に転じたことからも、米長期金利の低下時に加えて、日欧株安時と原油安時にも、リスク回避の低リスク通貨の円買いが優勢だった。

特に早朝には上昇して始まった日経平均株価が午後には一時500円以上も下落した際には、投資家のリスク回避による低リスク通貨の円買いが入っていた。また、今日の日経平均は457円42銭安で大引けし、株安時の低リスク通貨の円買いが影響した。

日本銀行(日銀)が今日発表した日本の経済指標の6月企業短期経済観測調査(短観)は、大企業の業況判断指数(DI)が2四半期連続で悪化し、市場予想以下であった。同日発表の6月東京都区部・消費者物価指数(CPI)の前年同月比では、生鮮食品を除く総合が2.1%上昇していた。日本では2.1%のインフレは家計の懸念であるが、欧州英国市場では欧米英での8〜9%を超えるインフレ率と比較すると、日本経済の低リスク性から低リスク通貨の円買いにやや影響を及ぼしていた。

ユーロ対円は、今日の17時の東京終値では、先述の今日の低リスク通貨の円買いの影響もあり、141円28~31銭で前日比約97銭の円高ユーロ安を続伸した。同時刻のユーロ対ドルは横ばいレンジ圏で、1.0446~1.0447ドルで前日比0.01セントのドル安ユーロ高の境界付近であった。

昨夜の欧州市場では、欧米の金融引き締めによる欧州経済減速懸念で欧州株が下落し、ユーロ売りの安全資産のドルと低リスク通貨の円買いが優勢となっていた。

ニューヨーク市場でも円は対ユーロで続伸したが、前述の米経済指標の悪化や原油安でドルよりも低リスク通貨の円の方が買われたため、ユーロ対ドルは3日ぶりに反発し始め、東京市場では前日比でドル安ユーロ高の境界付近で終値をつけ、その後の欧州市場ではユーロの現地実需もあり、18時台には前日比でドル安ユーロ高になっていた。

英ポンドにも、英景気懸念と株安時と原油安時の今日の低リスク通貨の円買いトレンドが影響し、特に欧米で最悪の年内10%超え予想のインフレ率の英国が目標としているインフレ率目標の2%に日本のCPIが近かったことでもポンド売りで円が買われ、今夜17時の東京終値は、163円82〜88銭で前日比1円43銭の大幅な円高ポンド安であった。

オーストラリアの豪ドルはリスク資産の価格に連動しやすいと考えられており、今日の株安時のリスク回避市場では、豪ドル売りが安全資産のドルや低リスク通貨の円に対して優勢で、米ドルに対しても下げた他に、日本円に対しても17時の今日の東京終値は91円97銭〜92円1銭で前日比で約1円73銭の大幅な円高豪ドル安となった。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年7月1日の日本時間(JST)19時分(英国夏時間(GMT+1)11時21分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 19:21の為替レート 東京外国為替市場前日比
ドル/円 135.49 〜 135.50 -0.70(円高)
ユーロ/円 141.80 〜 141.81 -0.45(円高)
ユーロ/ドル 1.0464 〜 1.0466 +0.0019(ドル安)
英ポンド/円 163.59 〜 163.65 -1.66(円高)
スイスフラン/円 141.34 〜 141.40 -0.79(円高)
豪ドル/円 92.24 〜 92.28 -1.46(円高)


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