FXニュース:欧州景気懸念リスク回避で安全資産のドルと低リスク通貨の円買いが
2022年7月06日東西FXニュース – 2022年7月6日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 欧州エネルギー問題の景気懸念で2002年12月以来のドル高ユーロ安を記録
- 欧米景気減速懸念の需要停滞予想で原油先物価格下落時のリスク減で円上昇
- 米中外相が明日からバリ島で開催予定のG20後の9日に会談予定
今日2022年7月6日水曜日の東京外国為替市場のFXの対ドル円相場の為替レートは、9時から17時の東京外為取引時間の円の安値が135円76銭前後から高値135円3銭前後の値動き幅約73銭で、17時の今日の東京外国為替市場の終値は135円42〜44銭前後の、同時刻の前日比で約66銭の円高ドル安であった。
原因は、欧州エネルギー問題による欧州ユーロ圏のインフレ悪化と景気減速懸念のリスク回避で、安全資産のドルと低リスク通貨の円買いが優勢のドル高ユーロ安や円高ユーロ安になった一方で、欧米経済減速時の需要停滞予想で原油価格が下落し、輸送コスト増加による日本の貿易赤字継続リスクが減り、低リスク通貨の円が買われる機会が増えたことが影響した。
また、今日の日本市場ではリスク回避の安全資産買いの米国際買いで米長期金利が低下した日米金利差縮小時の円の買い戻しに加えて、今日は日経平均株価が下落し、26,107円65銭の前日比で315円82銭減の大引けをしたことでも、日本市場ではリスク回避や持ち高調整などで低リスク通貨の円が買い戻されやすかった。
世界市場の流れでは、まず昨夜から今朝の欧州英国市場と米国ニューヨーク市場で、昨日からのノルウェーの油田労働者組合のインフレ対応の賃上げ要求ストライキで欧州エネルギー供給問題が懸念されるなかで、ロシアの欧州への天然ガス供給停止の拡大懸念もあり、欧州エネルギー問題による高インフレ悪化と欧州景気減速懸念が強まり、欧州中央銀行(ECB)による積極的な金融引き締め継続も景気減速材料と見られていることから、ユーロ売りの安全資産のドル買いが加速し、対ドルのユーロは一時1.0236ドル付近に売られ、2002年12月以来の約20年ぶりと言われるドル高ユーロ安を記録した。
世界的な景気懸念が続く中で、流動性が高くリスク回避時の安全資産で買われやすいドルは、対ユーロだけでなく英ポンドなどの多数の通貨に対しても買われ、米祝日連休明けの今朝までのニューヨーク市場では対円でもドル買いが優勢で、今朝のニューヨーク終値時点では135円85~95銭で米連休前の前営業日比で約70銭の円安ドル高だった。
しかし、景気減退懸念による需要停滞予想で原油先物価格が下落したことでは、日本の貿易赤字継続リスクが減り、低リスク通貨の円の価値が高まって、ユーロやポンドなどのドル以外への外貨に対しては円も上昇し始めていた。
また、リスク回避の安全資産の米国債買いで米長期金利が一時2.78%に下がり、前営業日比で0.10%減の5月下旬以来の低水準になった時には、日米金利差縮小でのドル売りの円買いも起きていた。
そのため、今朝までの米国ニューヨーク市場の後に始まった今日の日本東京外国為替市場でも、欧米景気後退リスク回避の安全資産の米国債買いで米長期金利が低下しており、日米金利差縮小時のドル売りの円買いや、持ち高調整のドル売りの円の買い戻しが強まり、今朝の東京市場で対ドルの円相場が上昇し、前日比で円高ドル安のレンジに入り始めた。
今朝10時頃の仲値決済に向けては、輸入企業の円売りドル買い実需もあったものの、輸出企業のドル売り円買いの方が強く、10時前には135円台後半だったドルは、10時半頃には135円前半に下落した。
また、欧米景気後退懸念の米国債リスクオフで米長期金利が低下して日米金利差縮小時の円の買い戻しが起きた一方で、今日の日経平均株価が下落しており、今日の原油価格下落時の日本円の貿易赤字リスク軽減と日本の株安時のリスク回避の低リスク通貨の円買いが、投資系でも優勢になった。
特に時差で朝の欧州市場が参入した午後15時過ぎには、投資系の円買いドル売りが強まり、一時は135円3銭付近の今日の円の高値を記録した。
しかし、その後には今日のドルの安値のショートカバーが入り、また、一時は2.79%付近の低水準だった米長期金利が2.83%付近にまで再上昇したことで、夕方には日米金利差拡大によるドル買い円売りが入り、135円42〜44銭前後の、前日比で約66銭の円高ドル安で今夜17時の東京終値をつけた。
なお、今後のドル円予想に関しては、今夜この後の日本時間22時に米連邦準備理事会(FRB)関係者のウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁の発言が予定されているほか、最新の米国経済指標速報の米ISM非製造業景況指数が速報で23時に発表予定で、明日未明3時には6月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公表が予定されており、世界のFX投資家達が今後の市場予想用に注目している。
また、明日以降のニュースになるが、米国務省のブリンケン長官が明日からインドネシアのバリ島で開催予定の20カ国地域(G20)の外相会合に出席した後に、9日に中国の王毅国務委員兼外相と米中会談すると発表しており、米中関係改善は米景気支援材料になる可能性もあることから最新ニュースで注視されている。
ユーロは、先述の通り、昨夜の欧州英国市場と米国ニューヨーク市場で欧州エネルギー問題と景気懸念でユーロが安全資産の対ドルや低リスク通貨の円に対して下落した影響が、今日も続いている。
欧州ユーロ圏に近いノルウェーでのストライキに加えて、ロシアからの天然ガスの供給停止懸念の欧州エネルギー問題が強まった上に、欧州や英国で天然ガス価格が昨夜17%近く高騰し、高インフレを悪化させるエネルギー問題や供給不足による経済への悪影響などから、欧州景気後退懸念が強まった。
さらに、欧州中央銀行(ECB)のインフレ対策での金融引き締め継続による欧州景気減退懸念のユーロリスクから、ユーロ売りとドル買いが約20年ぶりの記録的なドル高ユーロ安に達し、景気懸念の欧州主要株価指数下落時のリスク回避で低リスク通貨の円に対してもユーロが売られて円高ユーロ安になった。
そのため、今夜17時の東京終値のユーロ対円は138円93~96銭で、前日比で約2円24銭の大幅な円高ユーロ安になった。ユーロは対ドルでも続落し、17時は1.0258~1.0260ドルで前日比1.16セントのドル高ユーロ安であった。
もしも今後、ロシアがドイツへのガス供給を完全に停止した場合には、更なるユーロ安やユーロとドルが1対1のパリティ(等価)になる可能性も専門家に指摘されており、欧州市場ではリスク回避が優勢になっていた。
しかし、今夜その後の欧州市場では、ユーロは対ドルでの下げ幅を一時は少し縮めた時間もあった。昨日に下落していた欧州主要株価指数が、今日の欧州の午前に回復上昇した時に、投資系のリスク回避姿勢が弱まり、持ち高調整でのユーロ買いや利益確定の高値でのドル売り抵抗も起きたからだ。ただし、18時に発表された欧州ユーロ圏の最新経済指標の小売売上高5月分の前月比は市場予想の0.5%以下の0.2%で、市場反転に至るほどではなかった。
英ポンドも、欧州通貨同様のリスク回避が原因で、今日は低リスク通貨の円に対して下げており、17時の今日の東京終値は162円8〜14銭で前日比約36銭の円高ポンド安であった。
今夜その後の17時半に発表された英国の最新経済指標の6月建設業購買担当者景気指数(PMI)は前回の56.4と市場予想の55.0に対して今回52.6で、ポンド売りが起きて、東京終値後の19時頃までにさらに円高ポンド安の幅が増えていた。
今日は低リスク通貨の円が買われた影響で、スイスフランや豪ドルなどに対しても前日比で円高の東京終値をつけており、今夜17時のスイスフラン対円は139円82〜88銭で前日比約44銭の円高スイスフラン安で、同時刻の豪ドル対円も92円21〜25銭で前日比約15銭の円高豪ドル安であった。
今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年7月6日の日本時間(JST)19時21分(英国夏時間(GMT+1)11時21分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 19:21の為替レート | 東京外国為替市場前日比 |
ドル/円 | 135.28 〜 135.30 | -0.80(円高) |
ユーロ/円 | 138.24 〜 138.26 | -2.93(円高) |
ユーロ/ドル | 1.0218 〜 1.0220 | -0.0156(ドル高) |
英ポンド/円 | 161.57 〜 161.63 | -0.87(円高) |
スイスフラン/円 | 139.39 〜 139.45 | -0.87(円高) |
豪ドル/円 | 91.96 〜 92.00 | -0.40(円高) |
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