FXニュース:米消費者物価指数(CPI)が市場予想以下で米長期金利が下落
2022年8月11日東西FXニュース – 2022年8月11日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 円安要因の日米金利差拡大予想の減退でドル売り円買いの大幅円高に
- 9月米連邦公開市場委員会(FOMC)利上げ予想が0.75%から0.5%優勢に
- 米連邦準備理事会(FRB)関係者には大幅利上げ継続のタカ派発言も
今日2022年8月11日木曜日の日本は山の日の祝日で東京外国為替市場は休場であるが、世界市場と東西FXで扱う海外FXは通常営業のため、今日の日本時間の9時から17時の東京外為取引時間相当の今日の対ドル円相場の為替レートは、円の安値が133円31銭前後から高値132円61銭前後の値動き幅約70銭で、17時の今日の東京外国為替市場終値相当の時間には132円44〜46銭前後で、前日同時刻の前東京終値の134円93〜95銭と比較すると、今日は約2円49銭の大幅な円高ドル安であった。
原因は、昨日までの東西FXニュースでも予告をしていた通り、最新の米国重要経済指標の米消費者物価指数(CPI)の発表を受けて、夏休み時期で流動性が減り、まとまったオーダーの値動きの影響が出やすくなっていた欧米の外国為替(FX)市場で、為替相場の値動きに大きく反映されたことが挙げられる。
市場の流れとしては、昨夜21時半に欧州英国市場の午後に時差で朝の米国ニューヨーク市場で発表された最新の7月の米消費者物価指数(CPI)の上昇率が前月比では前回の1.3%と市場予想の0.2%に対して今回は0.0%で、前年前月比は前回の9.1%と市場予想の8.7%を下る8.5%であったために、記録的な米インフレのピークアウト感から米長期金利が下落し、日米金利差縮小時のまとまったドル売り円買いが入った。
世界需要停滞予想による原油価格の低下から、車社会の米国でガソリン価格が下落したことなどが影響したと考えられていたが、エネルギーと食品を除いたコア指数の前月比も前回の0.7%と市場予想の0.5%に対して0.3%に低下しており、前年同月比は前回と同じ5.9%で市場予想の6.1%を下回っていた。
米連邦準備理事会(FRB)による高インフレ抑制のための大幅利上げ継続予想が減退し、日米金利差縮小時予想のドル売りの円買いで、発表前は134円台後半だったドルの円相場は、発表後に132円台前半に2円以上も急落し、夏休み時期の流動性の関係もあり、米ニューヨーク市場でのドル円の値動きは円の安値135円12銭付近から高値132円3銭付近の3円近いボラティリティの大きなFX市場となった。
米CMEグループの世界的に有名な米金利予測ツールのFedWatch(フェド・ウオッチ)でも、以前は次回9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%の大幅利上げ継続予想が優勢だったものが、0.5%利上げ予想が優勢になったことが意識された。
ただし、その後に米連邦準備理事会(FRB)関係者のシカゴ連銀のエバンズ総裁が、最新の7月の米消費者物価指数(CPI)の結果ついて、「今回初の前向きな統計と言えるが、それでも米国のインフレ率はまだ受け入れ難いほど高い」と発言し、年末に政策金利目標のフェデラルファンド(FF)金利を3.25%~3.5%で来年末には3.75%~4.0%を考えているなどのタカ派的な意見を示しており、依然として今回の記録的な米国インフレに対する警戒を緩めてはいないという姿勢から、米連邦準備理事会(FRB)はより継続的な次回データを待っており、まだインフレには警戒姿勢と利上げ目標を持っているとの見解から、0.5%〜0.75%の次回9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での米利上げ継続予想も継続し、安値でのドルの買い直しの抵抗も入り始めた。
米連邦準備理事会(FRB)関係者の米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も、アスペン経済戦略グループ主催のパネルディスカッションで、「米インフレ率が目標を大幅に上回っている可能性は非常に高く、来年初めに利下げを始めるという考えはまだ非現実的だと思う」と発言したというFXニュースが流れた。「米インフレの予想外の鈍化は嬉しいニュースだが、金融当局がこのインフレとの闘いで勝利を宣言するには程遠く、今日発表された7月の米消費者物価指数(CPI)は物価が正しい方向に進んでいることを示す最初のヒントであるが、米利上げの道筋を変えるものではまだない」とも語っており、カシュカリ総裁は米フェデラルファンド(FF)金利誘導目標について、「年末までに3.9%と、2023年末までに4.4%に上昇の見込み」というタカ派の発言をしていた。
しかし、米景気懸念の減退で米株価が上昇し、欧州株や英国株も上昇したために以前のリスク回避で買われていた安全資産のドルが売られて下げて、リスクオンでドル売りのユーロ買いやポンド買いなども入ったために、米消費者物価指数(CPI)発表後の2円以上のドル急落をカバーできるほどのドルの買い戻しにはならなかったことから、今朝の米国ニューヨーク市場の円相場の終値は132円85~95銭で、前日同時刻の前ニューヨーク終値比で約2円25銭の大幅な円高ドル安になっていた。
今日の日本は山の日の祝日で東京外国為替市場も休場であるが、時間帯の近いアジア・オセアニアなどの世界市場や海外FX市場は通常営業で、今朝の米国ニューヨーク市場のトレンドを引き継いだ。
日本企業は今日は祝日休業でお盆休みも近く、今朝は日本企業のまとまった輸入実需の買いがないために、世界市場でも米消費者物価指数(CPI)発表後の米長期金利低下を受けてドルが売られやすくなり、9時過ぎに132円61銭付近に下落した。
ただし、米景気後退懸念が和らぎ、欧州エネルギー問題で景気懸念のある欧州通貨や、比較的リスク市場に弱いと考えられているオセアニア通貨に対して、安全資産のドルの買い戻しなどの抵抗も入っており、その後のドル円は一時戻し、11時半頃には今日の日本市場相当時間のドル安トレンドの中でもドルの高値の133円28〜31銭付近を一時記録した。
しかし、午後になり、米国のバイデン大統領が、最近の米下院議長の台湾訪問を巡る米中対立で、以前は米国の物価高対策で検討中だった中国への米国の関税制裁の一部撤廃案を撤回し、中国に更なる経済制裁の追加の関税を検討していると報道され、米中関係悪化の予想から地政学リスクで米ドルが売られ、低リスク通貨の円が買われて再びドルが円相場で下げ始めた。
また、午後に時差で朝の欧州英国市場の参入では、英国の経済新聞のフィナンシャルタイムズ(FT)に、米連邦準備理事会(FRB)関係者の米サンフランシスコ連銀のデイリー総裁が「米インフレを抑制したと勝利宣言するにはまだ早過ぎる。」とインタビューに応じており、しかし、デイリー総裁は「0.5%程の小規模な利上げを支持している」と発言したことで、次回9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では意見が分かれる可能性もあることから、米10年債利回りが2.75%台に低下し、欧州英国市場では再び日米金利差拡大予想減退での円買いドル売りが優勢になった。
そのため、今日の17時の東京終値相当時間のドルの円相場は、132円44〜46銭付近で、前日同時刻比では約2円49銭の大幅な円高ドル安になった。
今夜この後には、21時半から米国経済指標の生産者物価指数の7月卸売物価指数(PPI)等や、前週分新規失業保険申請件数、前週分失業保険継続受給者数などの発表があり、世界のFX投資家達が引き続き注目している。
今日のユーロは、今夜17時には136円75〜77銭付近で、前日同時刻の前東京終値の137円70~73銭と比較すると、約96銭の円高ユーロ安であった。米消費者物価指数(CPI)の発表を受けてのドル売り円買いの円相場の上昇が、ユーロなどの外貨にも波及した。
今夜17時のユーロドルも1.0324〜1.0326ドルで、前日同時刻の前東京終値の1.0204〜1.0206ドルと比較すると、約1.2セントの大幅なドル安ユーロ高となった。
円などの外貨へのドル売りのドル安が影響した他にも、米長期金利低下時には欧米金利差拡大予想の減退からも、ドルが売られてユーロが買われており、米景気減退懸念の減退ではリスクオンでドルからユーロが買われた動きもあった。
英ポンドの今日の円相場は、17時には161円89〜95銭で、前日同時刻の163円5〜11銭と比較すると、約1円16銭前後の大幅な円高ポンド安であった。米消費者物価指数(CPI)の発表を受けてのドルに対する円の上昇が英ポンドにも影響を及ぼしたほか、英国景気減退懸念で低リスク通貨の円が買われていたことなども影響していた。今日発表された最新の英国経済指標の住宅価格指数(RICS)7月分は、前回の65%と市場予想の60%に対し今回は63%で英国の物価高による景気懸念は続いていた。
今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年8月11日の日本時間(JST)19時10分(英国夏時間(GMT+1)11時10分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 19:10の為替レート | 東京外国為替市場前日比 |
ドル/円 | 132.64 〜 132.65 | −2.31(円高) |
ユーロ/円 | 137.08 〜 137.09 | −0.66(円高) |
ユーロ/ドル | 1.0332 〜 1.0336 | +0.0126(ドル安) |
英ポンド/円 | 161.97 〜 162.03 | −1.08(円高) |
スイスフラン/円 | 140.96 〜 141.02 | −0.87(円高) |
豪ドル/円 | 94.14 〜 94.18 | +0.21(円安) |
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