FXニュース:米FRBパウエル議長タカ派発言で一時139円の円安ドル高に
2022年8月29日東西FXニュース – 2022年8月29日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米インフレ対策優先の利上げ継続予想で米長期金利上昇と日米株安に
- 米個人消費支出(PCE)デフレーターは市場予想以下の高止まりデータ
- 欧州ECBも利上げ予想優勢で金利抑制の日銀との日欧金利差拡大予想が
今日2022年8月29日月曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時の外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値が139円0銭前後から高値138円9銭前後の値動き幅約91銭で、今夜17時の東京外国為替市場の終値は138円71〜72銭前後で、前営業日17時の前東京終値の137円1〜2銭前後と比較すると、約1円70銭の大幅な円安ドル高であった。
原因は、前回の東西FXニュースでも予想していた通り、日本時間で金曜の夜23時の米連邦準備理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長の米経済シンポジウムのジャクソンホール会議での講演発言の影響が、週明けの今日の為替相場の値動きに大きく出ていた。
市場の動きしては、先週末金曜の日本時間の夜21時半に時差で朝8時半の米国ニューヨークでは、最新の米国経済指標で物価指標の7月の米個人消費支出(PCE)デフレーターなどが発表され、エネルギーと食品を除くコア指数が前年同月比で4.6%の上昇率で、前月の4.8%と市場予想の4.7%をやや下回る高止まり傾向で、その1時間半後のパウエル議長講演のイベント前リスクもあり、早朝にはドル売りが見られたものの、日本時間23時から約10分間の世界が注目の米連邦準備理事会(FRB)パウエル議長の講演イベントのタカ派発言から、全面ドル高へと外国為替市場のトレンドが一転した。
米連邦準備理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は、米国ニューヨーク市場の朝10時にカンザスシティー連銀主催の経済シンポジウムのジャクソンホール会議で世界ライブ中継の講演をし、依然として高すぎる現在の米国のインフレについて言及し、米利上げ継続による景気への影響の可能性はあっても、「FRBは全力を尽くして米国の高インフレを抑制する」と、インフレ対策が最優先とするタカ派発言をした。このことにより、積極的な米利上げ継続予想が優勢になり、ドルが買われて大幅に上昇した。
急騰したドルには一旦利益確定売りの抵抗は入ったものの、パウエル議長は「物価安定のためには、金融引き締めの政策をしばらく続ける必要がある」とも発言したことで、米利上げ継続が長期化するという予想から米長期金利が上昇し、日米金利差拡大で再びドルが買われて円が売られ、円安ドル高トレンドに繋がった。
米連邦準備理事会(FRB)のメンバーの米クリーブランド地区連銀のメスター総裁も、パウエル議長の講演発言について、彼の「メッセージは力強くて、正しいものであった」と賛同した上で、更に米政策金利を「4%以上に引き上げる必要があると思う。来年もこの水準を維持しなければならない可能性が高い」と大幅利上げのタカ派の発言をした。
一方、米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は、利上げの米雇用市場への影響を考慮しながらも今年中に米政策金利を3.5〜3.75%の水準にするために、来月9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.75%の大幅利上げよりは0.5%の利上げ支持派であることを示唆したが、利上げ後には利下げに転じるよりも長期間に渡って利上げ後の水準をキープすることを希望していると長期化への意見を唱えた。
米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は、「米連邦準備理事会(FRB)の金融政策が、深刻なリセッション(景気後退)や雇用市場の弱体化などを引き起こさずに、高インフレを抑制していくことは可能であると確信している」と発言した。
米利上げ予想による全面ドル高の一方で、米企業などのローン金利上昇による次年度決算への影響の可能性から、米株式市場は急落し、ダウ工業株30種平均は1000ドル以上も暴落し、株価三指数共に低下の米株安時のリスク回避で、上昇トレンドになったFX(外国為替)のドル円などが買われたことも、円安ドル高の値動き幅を増幅した。
先週末の米国ニューヨーク外国為替市場では、パウエル議長発言前の朝の円の高値の136円19銭からパウエル議長発言後の円の安値の一時137円75銭の値動きで、7月中旬以来の円安ドル高水準を記録した。また、米国債利回りが上昇し、日米欧英金利差拡大でイベント後のドル買いではドルが全面高を記録した。
そのため、先週末の日本時間の土曜の朝までの米国ニューヨーク外国為替市場のドル円相場の終値は137円60~70銭付近で、前日同時刻比の前ニューヨーク終値比では約1円15銭の大幅な円安ドル高であった。
今週になり、今日の日本の東京外国為替市場が始まると、前述のジャクソンホール会議でのパウエル議長とは相対的に、同会議に出席の日本銀行(日銀)の黒田総裁は相変わらずの金利抑制の大規模緩和の金融政策を継続するという発言であったことからも、日米の金融政策の方向性の違いと、米利上げ継続による日米金利差拡大予想が強まり、円売りドル買いが優勢で、円安ドル高トレンドが加速した。
また、米国債利回りが一時3.08%台に上昇したことでも、かねてからの日米金利差による円安ドル高が進み、今朝のドル円相場は138円を超えて更に上昇した。急速な値動きの中で、円の安値のロスカットに引っかかった自動売りも段階的に入った。
今朝10時前の仲値決済に向けては、日本企業の輸入実需のドル買いの後に輸出企業の高値でのドル売りやドルの利益確定売りの一時抵抗も混在したが、日本時間の朝の債権市場で米2年物国債の利回りが2007年11月以来の高水準を記録し、米長期金利も上昇していたことから、日本市場でも再び日米金利差拡大による円売りドル買いが優勢になった。
金曜夜のパウエル発言後の今日の円安ドル高トレンドは月曜の午後にも継続し、14時過ぎには一時139円0銭付近の7月15日以来の円安ドル高水準を記録した。
午後には欧州市場の参入もあり、急速に高値になったドルの利益確定売りなどの抵抗でやや高止まりをし始め、また、前日の米株安を受けて今日は日経平均株価も一時850円以上急落しており、15時15分に27,878円96銭の前営業日比762円42銭安で大引けしたことでは、株安時のリスク回避では低リスク通貨の円買い抵抗もやや入ったものの、今回の株安時には上昇トレンドのドルを買う動きもあり、抵抗で下げるというよりは高止まり後の小幅抵抗の横ばいに近い動きとなって観測された。
そのため、17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は138円71〜72銭前後で、前営業日同時刻の前東京終値比で約1円70銭の大幅な円安ドル高になった。
今日のユーロも、先週末の欧州英国市場で欧州中央銀行(ECB)の大幅利上げ継続予想が優勢で、欧州債利回りが上昇しており、日欧金利差拡大予想のユーロ買い円売りや、ドルに対する円安の他の主要通貨への波及の影響もあり、今夜17時の東京外国為替市場のユーロ円の終値は137円89~92銭付近で、前営業日同時刻比で約1円24銭の大幅な円安ユーロ高になった。
ユーロドルは、前述のパウエル議長の発言後にドルは主要通貨に対して全面高になり、今夜17時の東京外国為替市場の終値でもユーロドルはパリティ(等価)以下の0.9943~0.9944ドルで、前営業日の同時刻比で約0.30セントのドル高ユーロ安であった。
先週末の欧州英国市場では、欧州中央銀行(ECB)が来月9月の理事会で、通常の3倍の0.75%の大幅利上げを議論する可能性から欧州債利回りが上昇し、ユーロ買いドル売りが起き、米国市場でも一時は等価以上のユーロの市場高値の1.0090ドルを朝に記録していたが、パウエル議長のタカ派発言後にはドル買いに一転し、再び等価割れのユーロの安値の0.9957ドル付近を記録し、今日の日本市場では円などの他の主要通貨のドル買いの波及もあり、ユーロはドルに対する下げ幅を広げ、今日の午後のユーロは一時0.9915ドル付近になり、8月23日につけた約20年ぶりのユーロ安の0.9901ドルの記録にも迫っていた。
英ポンドは、今日は英国の夏の祝日連休で英国ロンドン市場は休場で現地需要は少ないが、17時の今日の東京外国為替市場の終値は、ドルやユーロなどの主要外貨に対する円安の影響もあり、英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)も利上げ継続予想が出ていることなどから、英ポンドの円相場は161円90〜96銭で、前営業日の同時刻比で約49銭の円安ポンド高であった。
ただし、先週末の英国ロンドン市場では英国ガス電力市場監督局(Ofgem)、10月から英国のエネルギー価格の上限を更に引き上げると公式に発表し、春に続く英国エナジーショック第2弾では、エネルギー価格上昇による英国リセッション(景気後退)懸念から、ポンド売りの安全資産のドル買いが優勢で、対ドルではポンド安が目立っていた。
今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年8月29日の日本時間(JST)19時17分(英国夏時間(GMT+1)11時17分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 19:17の為替レート | 東京外国為替市場前日比 |
ドル/円 | 138.52 〜 138.53 | +1.51(円安) |
ユーロ/円 | 138.07 〜 138.08 | +1.42(円安) |
ユーロ/ドル | 0.9966 〜 0.9968 | -0.0007(ドル高) |
英ポンド/円 | 161.80 〜 161.86 | +0.39(円安) |
スイスフラン/円 | 143.33 〜 143.39 | +0.97(円安) |
豪ドル/円 | 94.98 〜 95.02 | +0.21(円安) |
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