FXニュース:今日は144円台の1998年8月以来の円安ドル高記録を更新
2022年9月07日東西FXニュース – 2022年9月7日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米経済指標のISM非製造業景況感指数が市場予想に反して改善上昇
- 米長期金利が一時3.35%台で日米金利差拡大が円安ドル高要因
- 物価高対策で利上げ方向の米欧英豪と金利抑制の日銀の違い
今日2022年9月7日水曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時の外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値が144円38銭前後から高値142円93銭前後の値動き幅約1円45銭で、今夜17時の東京外国為替市場の終値は143円92〜93銭前後で、前日同時刻の前東京終値の141円57〜58銭前後と比較すると、約2円36銭の大幅な円安ドル高であった。
一時は144円38銭付近に達したことで、今日も1998年8月以来の約24年ぶりの円安ドル高の記録を更新した。
原因はまず、昨日の東西FXニュースでも為替相場の値動きへの影響を予告していた通り、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場では最新の米国重要経済指標の8月の米サプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況感指数が発表され、前回の56.7と市場予想の55.3に対して56.9で市場予想に反して改善上昇したことで、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ継続を後押しするデータとなり、円安要因の日米金利差拡大予想が強まった。
そのため、米長期金利が上昇し3.35%台付近で、日米金利差拡大によるドル買い円売りの円安ドル高が進み、ニューヨーク市場のドルの高値で円の安値の143円台を記録した。
また、米国のみならず欧州や英国などの主要通貨の中央銀行のインフレ対策での利上げ方向の金融政策に世界的な注目や投資が集まる中で、日本銀行(日銀、BoJ)だけが反対の金利抑制方向の大規模緩和金融政策を根強く継続しており、利下げのための国債買い入れの指値オペまで実行していることなどから、日米欧英の金融政策の方向性の違いによる日米金利差拡大予想で、主要通貨に対して円が全面安になるという円安も記録した。
米国株式市場でも、米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げ継続予想で企業への貸し付けローンなどの金利も上昇する予測と警戒から米株価が下落し、株安時のリスク回避で上昇トレンドの米国外国為替市場のドルクロスが買われる機会があったことから、値動きに拍車をかけた。ただし、株安時のリスク回避では、ドルが急速に市場高値になると利益確定売りで安全資産のドルからも買える安値の低リスク通貨の円が買われるという抵抗もやや加わった。
今朝6時頃の米国ニューヨーク外国為替市場の終値は142円75~85銭付近で、前日比で約2円70銭の大幅な円安ドル高であった。 市場の値動き幅は141円台から143円台で、ボラティリティの高い市場となった。
そのトレンドを受けて始まった今日の日本の東京外国為替市場でも、世界トレンドと同様の理由で日米金利差拡大予想の円安ドル高が進行した。
今朝10時前の仲値決済では、円安実需での輸入企業の円からのドル買いはあったものの、記録的な円安のニュースを受けて輸出企業による高値でのドル売り円買いや投資系の売買が先行して入っており、10時頃には上昇トレンドを抑えてほぼ横ばいに近い動きに一時相殺したが、今日の日本市場のドルの安値で円の高値は今朝9時過ぎにつけた142円93銭付近で、11時を過ぎると再び、日米金利差拡大予想による円安ドル高の邁進となった。
今朝は日本政府の鈴木俊一財務相が、今日の円安進行に関して「最近の動きはやや急速で一方的」と円安牽制の発言をしたニュースがあったが、特に行動を伴わない口先介入で、今日も日本銀行(日銀)は金利抑制の公開市場操作の国債買い入れの指値オペを行っており、実質的な円安牽制には繋がらずに発言後も円売りドル買いが続いた。
今日の日銀の指値オペでは、日銀が上限と決めた0.25%付近に長期金利が達した一部の年限の国債買い入れ額を増額して利下げしており、黒田総裁曰く「根強い」日銀の金利抑制姿勢が継続していた。
日銀が金利抑制を根強く続ける傍らで、米連邦準備理事会(FRB)関係者の米リッチモンド連銀のバーキン総裁は、英経済誌フィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューで、今後の更なる政策引き締めの必要についての発言をしており、米政策金利目標のフェデラル・ファンド(FF)金利を来年3.5%に利上げし、2023年にはその水準を維持する見通しについて言及するなど、パウエル議長に続くFRB関係者のタカ派発言も続いていた。
13時台には日米金利差拡大予想の円安ドル高が、今日の日本市場のドルの高値で円の安値の144円38銭付近を記録した。ただし、記録後には、高値のドルの利益確定売りや持ち高調整でやや戻した。
14時には日本の最新経済指標の発表があり、7月の景気一致指数(CI)の速報値は前回の98.6〜99.2と市場予想の100に対し100.6で少し円が買われたが、景気先行指数(CI)の速報値は前回の100.9〜100.3と市場予想の100.2に対し99.6で、大きな円買い要因とはならなかったものの、ドルの大幅な上昇トレンドの中での一時的な下げと横ばいに近い値動きに関与した。
また、米長期金利の指標となる米10年債の利回りが、高止まり後にやや下げて3.33%台付近に一時下げたことも、午後からの欧州英国市場の参入での、持ち高調整での高止まり後に少し下げてから横ばいに近い値動きへのより顕著な影響を及ぼしていた。
そのため、17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は一時144円台をつけた後に少し下げた143円92〜93銭前後で、前日同時刻比で約2円36銭の円安ドル高であった。
尚、今週は欧州などの主要国にも金融政策を決めるイベントがあり、利上げ予想の米欧英に対して、金利抑制継続の日銀との金融政策の違いや金利差が意識されやすくなっている。
通貨オプション市場でも、需給の偏りを示すリスクリバーサルが1週間~5年物までが円安を示唆する円売り超過などが出たことでも警戒感が強まっている。
約24年ぶりと言われる記録的な円安ではあるが、東京インターバンクの記録によると、歴史的には1973年に日本円が変動相場制になった時代のドル円は265円台で、1985年9月のG5プラザ合意以前の円相場は対ドルで150円以上していた時代があり、また1975年には一時300円台の円安ドル高の史上記録も残っていたので、1995年の一時79円台の1ドル100円以下からその300円以上の間の史上変動率で言えば、150円以下はまだ中間点以下であり、今回の日米金利差拡大による円安ドル高にはまだ底値が見えない印象さえも持たせる。
2011年の震災時に日本の港が救援物資優先になり、一般企業が海外輸出に問題を抱えた時から海外支社や海外の現地法人で取引する企業や直接輸出できる海外工場に切り替えた企業が増えたことなどから、外貨獲得後に円を買わずに外貨建てて国外で取引をする国際的な日系大企業などがあると、以前の様に日本から輸出で販売する時に海外での価格競合性を高めてその外貨を円に替えて日本経済に還元するという円安がプラスになるという機会は減っており、むしろ輸入物価高の方が目立っているのが現実である。
ただし、外貨から日本円を買うことによって日本円の価値は高まるので、日本円から外貨を買ってFXの外国為替取引で増やし、買った時よりも大きい額の日本円を買い戻すことによっては円安に抵抗を加えることはできる。外貨預金の利回りも上昇している。物価高で家計を助けるために、節約する方法もあるが収入を増やす方法もあり、これからは一般家庭でもFXで稼ぐ時代が来るのかもしれないと考えられるくらい価格変動性が大きく利益が出しやすい市場トレンドになっている。
今夜この後にも米国の最新の経済指標の発表予定があり、為替相場の値動きに影響を与える可能性があることから、世界のFXトレーダー達に注目されている。日本時間では20時に米国MBA住宅ローン申請指数、21時半に7月米貿易収支、27時(明日未明3時)に米地区連銀経済報告の発表が予定されている。
一方、今日のユーロ円は、明日の夜21時15分に予定の欧州中央銀行(ECB)新政策金利の発表イベント前の大幅利上げ予想が優勢で、日欧金利差拡大予想で対ユーロの円相場が続落し、17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円の終値は142円80~81銭付近で、前日同時刻比で約1円62銭の大幅な円安ユーロ高だった。また、今夜その後の欧州市場でも円安ユーロ高が進行し、17時過ぎには一時142円94銭付近を記録した。
今日のユーロドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は0.9921~0.9922ドル付近で、前日同時刻の前東京終値比では約0.54セントのドル高ユーロ安であった。原因はまず、前述の米国経済指標による米長期金利の上昇時と高止まりしていた時に、欧米金利差拡大でユーロ売りドル買いが強まった影響が出ていた。
また、今日の午後には欧州ユーロ圏のドイツの経済指標の7月鉱工業生産も発表されたが、欧州エネルギー問題で大幅低下の市場予想ほどの低下幅ではなかったものの、前月比と前年同月比ともに前回よりも低下しており、欧州景気懸念のユーロリスク売りの安全資産のドル買いの影響も見られた。
ただし、今夜18時の欧州市場で発表された欧州ユーロ圏の最新経済指標の4〜6月期四半期域内総生産(GDP)は、前期比が前回と市場予想の0.6%に対して0.8%に増加し、前年同期比も前回と市場予想の3.9%に対して4.1%に増加しており、ユーロが買われる機会もあった。
今日の英ポンドの円相場は、今夜17時の東京外国為替市場の終値が165円68〜74銭付近で、前日同時刻比では約1円24銭の大幅な円安ポンド高になった。原因は、英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)も利上げ継続予想が優勢で、日英金利差拡大予想が優勢である。また、英国の新首相就任による政治不安の緩和と、高インフレ景気対策などにも期待が寄せられていた。
昨夜の英国ロンドン市場でも、英国のリズ・トラス新首相がエネルギーショックに対応した大規模な経済対策を打ち出す期待でドルに対してもポンドが買われていた時間があった。
今日の東京外国為替市場の終値では、クロス円は全面的な円安となり、ポンド円や豪ドル円やスイスフラン円も円安の高値圏で推移していた。
そのため、今日のオーストラリアの豪ドルの円相場の17時の終値も96円84〜88銭付近で、前日同時刻比で約68銭の円安豪ドル高であった。
今日のスイスフランの17時の円相場の終値も146円44〜50銭付近で、前日同時刻比で約1円39銭の大幅な円安フラン高であった。
今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年9月7日の日本時間(JST)19時23分(英国夏時間(GMT+1)11時23分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 19:23の為替レート | 東京外国為替市場前日比 |
ドル/円 | 144.39 〜 144.40 | +2.86(円安) |
ユーロ/円 | 142.91 〜 142.93 | +1.73(円安) |
ユーロ/ドル | 0.9897 〜 0.9898 | -0.0078(ドル高) |
英ポンド/円 | 165.84 〜 165.90 | +1.40(円安) |
スイスフラン/円 | 146.66 〜 146.72 | +1.61(円安) |
豪ドル/円 | 97.17 〜 97.21 | +1.01(円安) |
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