FXニュース:欧州中央銀行(ECB)が0.75%の大幅利上げ後の市場反応

2022年9月09日
FXニュース:欧州中央銀行(ECB)が0.75%の大幅利上げ後の市場反応

 

東西FXニュース – 2022年9月9日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が利上げ継続姿勢
  • 岸田首相と黒田日銀総裁会談で政府介入警戒が今日の抵抗要因に
  • 女王崩御の英国で政府が家計支援等の物価急騰対策を発表

今日2022年9月9日金曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時の外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値が143円95銭前後から高値142円14銭前後の値動き幅約1円81銭で、今夜17時の東京外国為替市場の終値は142円40〜41銭前後で、前日同時刻の前東京終値の143円82〜83銭前後と比較すると、約1円41銭の大幅な円高ドル安の円安抵抗となった。

今日の日本市場での円安抵抗の原因は、昨夜に欧州ユーロ圏の新政策金利が0.75%の大幅利上げがされたことで対ドルでのユーロ買いがドル円相場にも影響したことや、今日の昼頃に発表された日本政府の岸田文雄首相と日本銀行(日銀)の黒田東彦総裁の会談で、最近急速に進んだ円安への政府介入警戒の一時的な円買いが、日本市場時間のアジア市場と午後の欧州英国市場などの主に海外市場で起きた影響が大きい。

世界市場の時間の流れに沿った為替相場の値動きトレンドの解説としては、まず、昨日の東西FXニュースでも予告していた通り、昨夜21時15分の欧州英国市場の午後で米国ニューヨーク市場の朝の時間に、欧州中央銀行(ECB)理事会が新政策金利を発表し、予想通りに0.75%の大幅な利上げを決定し、前回の0.5%の利上げ分と合わせると、欧州ユーロ圏の新政策金利は1.25%になった。

欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、「今後の会合でも利上げ継続をする予定で、その回数は恐らく、今回を含めて2回よりも多く、5回よりは少ない」と記者会見で発言したため、欧州の長期金利の指標となる欧州債利回りも上昇し、ユーロ買いのドル売りが優勢になり、対ユーロでのドル下落がドル円相場にも影響した。ただし、ユーロ円では既に日欧金利差拡大は市場予想の範囲内で起きていた後だったので、それまでは安全資産のドルに対して等価割れで下落していたユーロが、等価付近に上昇した動きの方が影響した。

ただし、欧州ユーロの0.75%の大幅な利上げ幅に関しては市場予想の範囲内で、利上げの継続はあっても、必ずしも米国よりも大幅な利上げ継続とは限らないという予測と、21時半に発表された米国の最新経済指標の新規失業保険申請件数が前回の23.2万件(改定値 22.8万件)と市場予想の23.4万件に対し22.2万件に改善されていたことでは、上昇後のユーロが利益確定で売られてドルが買い戻され、上昇後のユーロはやや横ばいに近い動きにもなった。

22時10分頃には米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が、米国のインフレ対策の利上げ継続について、「我々は行動を強化する必要があり、やり遂げるまでは続けなくてはならない」と発言したことなどを受けて、米長期金利が一時3.33%を目前に上昇し、3.32%台付近の高水準になったことから、日米金利差拡大予想でのドル買い円売りが起きた。

しかし、昨夜のパウエル議長の発言には、これまでと似た内容も多かったために、144円台中盤近くにドルが円に対して上昇した後には、高値圏のドルの利益確定売りと持ち高調整の円買いなどで、ドルは今週これまでに急速に高騰した後の市場抵抗で一時下落も始めた。

今朝までの米国ニューヨーク市場でのドル円相場の値動きは、ドルの高値で円の安値の144円43銭からドルの安値で円の高値の143円41銭で、今朝6時のニューヨーク市場のドル円相場の終値は144円5~15銭付近で、前日同時刻比では約35銭の円安ドル高であった。

今朝8時50分に発表された日本の最新経済指標の8月のマネーストックM2は、前回と市場予想と同じ3.4%の横ばいで、その後に9時から始まった今日の日本の東京外国為替市場では、今週は日米金利差拡大予想でかなり急速な円安ドル高が進んだ後なので、今朝のユーロの利上げ後の動向や米国市場後半の市場抵抗のトレンドから、週末を前にした持ち高調整が活発になり、早朝に144円付近であった高値圏のドルの利益確定売りと安値の円買いの抵抗が活発になり、今朝9時の市場開始時頃が今日の日本市場のドルの高値で円の安値の143円95銭付近の記録となった。

今朝10時前の仲値決済では、今日は明日の10日が土曜日であるために、実質的には5と10のつく日本企業の決済日の集中しやすい五十日にあたり、輸入実需の円売りドル買いと輸出企業のドル売り円買いが交錯し、やや横ばいに近い動きになった。

しかし、昼頃に前述の日本政府の岸田文雄首相と日本銀行(日銀)の黒田東彦総裁の会談が発表され、今週は一時145円目前を記録するなど急速に進んだ円安への政府介入警戒の一時的な円買いが日本市場時間のアジア市場と午後の欧州英国市場などの主に海外市場で起きた影響が今日の午後の円安抵抗要因になり、円相場が急上昇して今週の下げ幅を縮め、前日比では大幅な円高ドル安になった。

そのため、午後の対ドルでの円相場の上昇を受けて、今夜17時の今日の東京外国為替市場でのドル円相場の終値は142円40〜41銭付近で、前日同時刻の前東京終値比較では約1円41銭の大幅な円高ドル安の円安抵抗になった。

尚、今夜この後の21時からの米国ニューヨーク市場では、23時に最新米国経済指標の7月の米卸売売上高の発表などが予定されている。

今日のユーロの円相場は、先述の欧州中央銀行(ECB)の0.75%の大幅利上げ後の影響と日欧金利差拡大で、今朝から昼頃までは円に対してユーロが大きく上昇した。昼頃からは日本政府の岸田文雄首相と日本銀行(日銀)の黒田東彦総裁の会談で、欧州英国市場などで政府介入の警戒感から高値になったユーロの利益確定売りと持ち高調整で安値の円買いの抵抗は入ったが、17時の今日の東京外国為替市場でのユーロ円相場の終値は143円78~81銭付近で、前日同時刻比で約24銭の円安ユーロ高であった。

ユーロ対ドルの17時の今日の東京外国為替市場での終値も、欧州利上げ後のユーロ上昇のパリティ(等価)超えで、1.0097~1.0098ドル付近の前日同時刻比で約1.16セントのユーロ高ドル安になっていた。

英ポンドは、英政府が高インフレ時の家計支援などの物価急騰対策を発表し、昨夜の英国ロンドン市場では、英ポンド買いでドルや円に対して一時上昇した。

また、英国ロンドンのウェストミンスター寺院でのエリザベス女王国葬に向けて、世界の著名人や首脳達が英国に一時集まる可能性から、英ポンドが買われて今朝は昼頃までは上昇していたが、昼の日本政府と日銀の会談の政府介入の警戒感などから、午後にはドルやユーロ同様に英ポンドに対しても円相場が大きく上昇した。

そのため、今夜17の東京外国為替市場での英ポンドの円相場の終値は165円53~59銭付近で、前日同時刻比で約17銭の円高ポンド安であった。

在位70年7ヶ月の世界記録を持ち国民に愛されるエリザベス女王は、今年の春の新型コロナ感染後には歩行障害などに悩まされながらも、数日前にも杖をついて新英首相を迎えるなどの公務をしていたが、昨日の午後に夏の静養先のスコットランドのバルモラル城で享年96歳で崩御となり、棺がロンドンに運ばれて国葬の約4日前からウェストミンスターホールに安置される予定で一般の面会も可能であるために、すでにバッキンガム宮殿やウェストミンスター周辺には参列者や観光客達が訪れており、今日も国砲や新国王となる長男のチャールズ皇太子(新国王名はチャールズ3世)のスピーチなどが予定されており、夏のジュビリーに続き、観光産業などの経済などに一時影響を及ぼす可能性もある。

英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)にも、インフレ対策での利上げ継続予想が出ており、日英金利差拡大予想では今日の午後の円相場の上昇後にはポンド買いの抵抗も入っていたが、英国女王の不在で英国の先行き不安感もあり、今夜その後の英国ロンドン市場では、19時台には英ポンドは低リスク通貨の円に対しての下げ幅を一段と広げていた。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年9月9日の日本時間(JST)19時31分(英国夏時間(GMT+1)11時31分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 19:31の為替レート 東京外国為替市場前日比
ドル/円 141.70 〜 141.71 -2.11(円高)
ユーロ/円 142.98 〜 142.99 -0.56(円高)
ユーロ/ドル 1.0089 〜 1.0091 +0.0108(ドル安)
英ポンド/円 164.43 〜 164.49 -1.27(円高)
スイスフラン/円 148.03 〜 148.09 -0.45(円高)
豪ドル/円 97.18 〜 97.22 -0.07(円高)


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