FXニュース:日銀為替介入懸念減退で日米金利差拡大予想の円安が再開
2022年9月15日東西FXニュース – 2022年9月15日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 日米協調介入ではない日本単独為替介入では相場への効果薄も指摘
- 大幅利上げ加速予想の米FRBと金利抑制の日銀の金融政策の違い
- 最新の日本の貿易収支赤字額が過去最大規模の2兆8173億円に
今日2022年9月15日木曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時の外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値が143円80銭前後から高値142円92銭前後の値動き幅約88銭で、今夜17時の東京外国為替市場の終値は143円57〜59銭前後で、前日同時刻の前東京終値と比較すると、約27銭の円安ドル高であった。
昨日の朝には前夜の米国消費者物価指数(CPI)の市場予想以上のインフレ率を受けて一時145円目前の急速な円安ドル高が進行したため、日本政府と財務省が為替介入の可能性を排除しないという円安牽制を行い、午後に日本銀行(日銀)の為替介入準備のレートチェックが行われたことで円安抵抗が入り、昨夜の欧州英国市場では為替介入への警戒で円安ドル高の抵抗の持ち高調整でドル円は一時142円56銭付近まで反発した。
欧州市場の後半から始まった昨夜から今朝の米国ニューヨーク外国為替市場でも、為替介入警戒感からの持ち高調整での円安抵抗が入り、また米長期金利上昇が一段落してきたことと、前日に急落した米国ニューヨーク株式市場が回復傾向に転じたことで、安全資産のドルが売られたことなども影響した。
そのため、今朝6時の米国ニューヨーク外国為替市場のドル円相場の終値は143円10~20銭付近で、前日同時刻比では約1円45銭の円高ドル安の円安抵抗の影響が見られた。
しかし、その後に始まった今日の日本の東京外国為替市場では、日米金利差拡大予想による元の円安ドル高トレンドに戻す動きも始まった。原因は、市場分析では米国にとってドル高は輸入物価のインフレ抑制などの米国景気向上の期待が持てるため、もし為替介入の可能性があるとしても、最も効果の高い日米協調介入の可能性は殆どなく、日本単独で円安抵抗の為替介入をしても市場での長期的な効力は少ないという予測から、為替介入が実施される可能性があるとしても、日銀が金利抑制の大規模金融緩和政策を継続する限りは日米金利差拡大の円安ドル高が進行しやすい可能性が指摘され、145円付近が日銀為替介入のボーダーラインと考えられて、そこから離れた安全圏のドル買い円売りが再開した。
今朝の日本の東京外国為替市場では、今朝は今日の日本市場の安値の142円後半の安全圏であったために、前述の日米金利差拡大予想の円売りドル買いが再開し、143円台に戻した。
また、今朝9時前に財務省が発表した日本の最新経済指標の8月の貿易統計の通関ベースの速報値は、貿易収支が2兆8173億円の過去最大規模の赤字額となり、低リスク通貨の円が日本の貿易赤字コスト増加によるリスク増加で、日本が輸入をしている米ドルの他にも資源国のオーストラリアの豪ドルや欧州ユーロに対しても今日は円が売られやすくなった。
今朝10時頃の仲値決済でも、今日は5と10のつく五十日で日本の貿易企業の決済日が集中しやすい日であるために、日本企業の輸入実需の円売りドル買いも入った。その後には輸出系のドル売り円買いの一時抵抗が入り一時的に142円台後半に戻したものの、投資系のまとまった日米金利差拡大予想の円売りドル買いで再び143円台に戻したドルが上昇した。
来週の20〜21日に米国連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、先日の米消費者物価指数(CPI)データを受けて、米国で市場予想を超えて継続しているインフレを抑制するために米連邦準備理事会(FRB)が大幅利上げを継続のみならず加速するという0.75%〜1.0%の利上げ幅の市場予想も出てきており、一方で金利抑制の大規模緩和金融政策と国債買い入れオペを続ける日本銀行(日銀、BoJ)との日米の金融政策の方向性の違いから、日米金利差拡大予想の円売りドル買いが市場で安全圏と考えられている範囲で今朝から進行していた。
今日はお昼のニュースでも、日銀が為替介入の準備のために相場水準を照会するレートチェックを今日は行なっていないという観測から、日銀の為替介入懸念が減退し、午後には再び143円台後半へと日米金利差拡大予想による円安ドル高トレンドが強まった。
また今日の日本市場の午後の取引では、時間外の債権市場でも米10年国債の利回りが再び上昇回復を始め、米長期金利が3.43%台になったために、午後から参入の欧州英国市場でも日米金利差拡大によるドル買い円売りが増え、一時143円80銭付近を記録した。
そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は143円57〜59銭付近で、前日同時刻比で約27銭の円安ドル高であった。
今夜この後にも最新の米国経済指標の発表が多数予定されており、FX取引の為替相場への値動きに影響がある可能性から、世界のFX投資家達が注目している。
今夜のスケジュールは日本時間で21時半に、9月の米ニューヨーク連銀製造業景気指数と米フィラデルフィア連銀製造業景気指数、8月の米小売売上高、米輸入物価指数、米輸出物価指数と、週刊の米国雇用統計の前週分新規失業保険申請件数と前週分失業保険継続受給者数が発表され、続いて22時15分に8月の米鉱工業生産と米設備稼働率と、23時には7月の米企業在庫も発表される。
来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えて、米連邦準備理事会(FRB)の要人が発言を自粛するブラックアウト期間に入るため、経済指標データに注目が集まっている。
一方、今日のユーロ円は、今夜17時の東京外国為替市場の終値は143円27~29銭付近で、前日同時刻比で約16銭の円安ユーロ高であった。
原因は、日銀為替介入警戒の後退で、利上げ後の欧州ユーロとの日欧金利差拡大に加えて、前述の日本の貿易赤字でユーロに対して低リスク通貨の円が売られた影響も見られた。
今日のユーロドルは、17時の今日の東京外国為替市場の終値は0.9978~0.9979ドル付近で、前日同時刻比で約0.08セントのユーロ安ドル高だった。原因は、米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げ予想の米欧金利差拡大予想で、ユーロに対してもドル買いが優勢であった影響が大きく、ユーロは再びドルとパリティ(等価)割れであった。
また、今日の午後15時に発表された欧州ユーロ圏の最新経済指標のドイツの8月の卸売物価指数の前月比が前回の-0.4%から0.1%に上昇しており、15時45分に発表されたフランスの8月の消費者物価指数(CPI)の確報値も前月の0.4%から0.5%に増加しており、欧州エネルギー問題などでインフレ悪化による欧州景気懸念のユーロ売りと安全資産のドル買いの一因にもなった。
また、今夜18時の欧州市場で発表された欧州ユーロ圏の7月の貿易収支も、季節調整前が前回の-246億ユーロと市場予想の-315億ユーロに対して-340億ユーロの赤字額増加で、季節調整後も前回の-308億ユーロ(改訂-322億ユーロ)に対して-403億ユーロの貿易赤字悪化であったことから、欧州景気懸念によるユーロ売りと安全資産のドル買いがあった。
ただし、今夜その後の欧州市場では現地実需もあり、またユーロ安は更なる貿易赤字悪化要因となるので、等価割れで安値になったユーロが買われて、前日比でユーロ高ドル安に転じる時間もあった。
今日の英国ポンドの円相場は、17時の今日の東京外国為替市場の終値は165円57〜63銭付近で、前日同時刻比で約35銭の円安ポンド高であった。
原因は、昨日の午後に発表された最新英国経済指標の8月の英消費者物価指数(CPI)の上昇率は市場予想以下ではあったものの、依然として西欧最悪の高いインフレ率が継続していたことから、昨夜の英国ロンドン市場では英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)も来週に大幅利上げ継続をする予想が優勢で、ポンド買いが入っており、今日の日本市場でも日英金利差拡大予想で円売りの英ポンド買いのトレンドに影響を与えていた。
ただし、今夜その後の英国ロンドン市場では、高インフレの英国景気減退懸念などでポンドが売られて、安値になった低リスク通貨の円などが買われたことで、円高ポンド安に転じる時間もあった。
今日の豪ドル円は、今朝の日本の貿易赤字額で資源国のオーストラリアの豪ドルに対しても円が売られたことなどから、17時の今日の東京外国為替市場の終値は97円6〜10銭付近で、前日同時刻比で約48銭の円安豪ドル高であった。
今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年9月15日の日本時間(JST)19時19分(英国夏時間(GMT+1)11時19分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 19:19の為替レート | 東京外国為替市場前日比 |
ドル/円 | 143.38 〜 143.39 | +0.08(円安) |
ユーロ/円 | 143.23 〜 143.25 | +0.12(円安) |
ユーロ/ドル | 0.9988 〜 0.9990 | +0.0002(ドル安) |
英ポンド/円 | 164.95 〜 165.01 | -0.27(円高) |
スイスフラン/円 | 149.61 〜 149.67 | +0.88(円安) |
豪ドル/円 | 96.66 〜 96.70 | +0.08(円安) |
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