FXニュース:英中銀が価格安定のための臨時措置で国債購入し影響が波及
東西FXニュース – 2022年9月29日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 英米長期金利の一時低下と欧州リスク回避市場が一時緩和
- 昨日4%台だった米長期金利が今日の一時3.7〜3.8%台から回復も
- 安全資産のドル円売りでリスクオンのユーロやポンドの買い戻しも
今日2022年9月29日木曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時の外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値が144円81銭前後から高値144円21銭前後の値動き幅約60銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は144円73〜75銭前後で、前日同時刻の前東京終値比で約18銭の円安ドル高であった。
昨夜の英国ロンドン外国為替市場と米国ニューヨーク外国為替市場では、英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)が先日の史上最大の対ドルの英ポンド下落後に英債券価格が急落し、英国債利回りが急上昇したことを受け、価格安定性のために国債を無制限に買い入れる緊急の臨時措置を発表したことで英長期金利が急落し、その影響で米長期金利も急落した。
昨夕までに米長期金利の指標となる米10年債利回りは一時4.015%付近の2008年10月以来の高利回りに上昇し、日米金利差拡大での円売りドル買い要因で対ドル円相場は144円台後半で推移していたが、英国版の国債買い入れオペの英長期金利下落につられる形で米長期金利も一時3.69%台付近に急落したことで、日米金利差縮小時のドル売り円買いでドル円も一時143円91付近に下落した。
ただし、大幅利上げ継続が長期化の予想の米連邦準備制度理事会(FRB)と金利抑制の日本銀行(日銀、BoJ)との日米の金融政策の方向性の違いから、より大きな市場トレンドの流れとしての日米金利差拡大予想でドルの買い戻しや持ち高調整なども入り、再び144円台前半に戻していた。
昨夜発表された最新米国経済指標では、米MBA住宅ローン申請指数が前回の3.8%に対して-3.7%に低下し、米卸売在庫の速報値が前回の0.6%と市場予想の0.5%に対して1.3%で、米中古住宅販売成約指数の前月比も前回の-1.0〜-0.6%と市場予想の-1.6%に対して-2.0%に低下し、米利上げの影響で買い控えが懸念されたことで、大幅なドル買い戻しではなく比較的小幅な買い戻しになったが、週間の石油在庫は大幅に減少しており、インフレ対策での米利上げ長期化予想は継続していた。
昨夜は米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がコミュニティー・バンキング・リサーチ・カンファレンス(Community Banking Research Conference)で挨拶をしたが、今回は特に今後の金融政策などには触れなかったことから、以前と同じ市場予想が継続した。
そのため、今朝までの米国ニューヨーク市場の対ドルの円相場は円の高値143円91銭前後から円の安値144円75銭前後の値動きで、今朝6時のニューヨーク外国為替市場のドル円相場の終値は144円5~15銭付近であった。
そのトレンドを受けて始まった今日の日本の東京外国為替市場では、市場前に日本の最新経済指標が発表され、対外・対内証券投資の前々週分は増加したものの、前週分が大幅に減少していたことで、やや横ばいに近い動きが混じってから始まった。
今朝の日本市場でも前述の英中銀の国債買い入れの影響で、昨日の午後の日本市場では4%台前半だった米長期金利が3%台後半に低下していたことで、日米金利差縮小時の投資系の持ち高調整のドル売り円買いがあり、また今朝10時前の仲値決済に向けて日本の輸出企業のまとまったドル売り円買い注文もあり、10時過ぎに今日の日本市場での円の高値でドルの安値の144円21銭付近を一時記録した。
しかし、大きなトレンドの流れと長期的視点での日米金利差拡大予想は優勢で、145円台の日本政府と日本銀行(日銀)の為替介入警戒域から一時離れたことでは、安値での円売りドル買いも入った。
また、午後になり、欧州英国市場が参入すると、原油価格が再上昇と欧英株安時のリスク回避で安全資産のドルが買われたことの影響や、一時は大幅に下げていた米長期金利が再び回復上昇をして3.85%付近に下げ幅を縮めてきたために、かねてからの円安要因である日米金利差拡大による円売りドル買いが再び優勢になり、16時台に今日の日本市場の円の安値でドルの高値の144円81銭付近を記録した。
ただし、145円台に近付くと日本の為替介入警戒売りの抵抗なども入り、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は144円73〜75銭付近で、前日同時刻の前東京終値比で約18銭の円安ドル高でつけた。
今夜この後にも最新の米国経済指標の発表予定があり、21時半に4〜6月期四半期の米国実質国内総生産(GDP)と米GDP個人消費とコアPCEなどが世界のFX投資家達に注目されている。同時刻に、米雇用関連の前週分の米新規失業保険申請件数と米失業保険継続受給者数も発表される予定で、米連邦準備制度理事会(FRB)関係者達もデータを注視している。
今日のユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の円相場の終値は139円66~69銭付近で、前日同時刻の前東京終値で約1円21銭の大幅な円安ユーロ高であった。また、ユーロドルも17時には0.9649~0.9650ドル付近で、前東京終値で約0.72セントのユーロ高ドル安であった。
昨夜の欧州英国市場の前半ではロシアと欧州の間のバルト海の海底ガスパイプのノルドストリームの損傷で欧州エネルギー問題の再燃のリスク回避市場でユーロ安であったが、前述の英国の国債買い入れ後の米長期金利低下時のドル売り時に、ドイツやフランスの主要株価指数が上昇に転じたことで安値のユーロが買い戻される値動きがあり、今朝までの米国ニューヨーク市場ではユーロドルがユーロ高ドル安に転じた影響で、ユーロ円も前日同時刻比で大幅な円安ユーロ高に転じていたことなどが原因に挙げられる。
元欧州連合(EU)で欧州との経済の繋がりのある英国で英国中央銀行イングランド銀行の(BoE)英国債買い入れで、英国債相場の価格安定への動きがユーロリスクを軽減し、欧州株上昇時にリスクオンのドル売りユーロ買いがあった。
今夜17時の東京終値後の18時の欧州市場では、先ほど欧州ユーロ圏の最新の経済指標が発表され、9月の消費者信頼感は前回の-28.8と同じ横ばいで、経済信頼感は前回の97.6に対して95.0であった。また、今夜この後の21時には、欧州ユーロ圏主要国のドイツの9月の消費者物価指数も発表予定で、投資家達に注目されている。
英ポンドは、先日のリズ・トラス新政権の大幅減税等への英財政懸念のポンド安と、前述の英国債買い入れでの英長期金利の下落での日英金利差縮小時のポンド売り円買いの影響が残っていた今夜17時の今日の東京外国為替市場の円相場の終値は155円98銭〜156円4銭付近で、前日同時刻の前東京終値比では約93銭の円高ポンド安であった。しかし、その後の今夜の英国ロンドン市場では、英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)の価格安定策への支持の英ポンド買いがドルやユーロなどの主要通貨に対して入ったことから、18時台には円相場でもポンドが急上昇し、19時頃には前東京終値比で円安ポンド高に市場反転している。
ただし、英国の緊急の国債の無制限購入は、10月14日までの期限付きの臨時措置であり、英国ポンドには先行き不透明感もある。
今日は先ほど、リズ・トラス英首相が英国国営のBBCのインタビューで、英国新政府が打ち出した経済計画に関して、「大部分は個人や企業に対するエネルギー価格高騰への支援で、それは絶対に正しいことだと思っている」と発言し、「議論に繋がる難しい決断を下すことを意味する」が、計画は撤回する意思はないことを述べた。西欧最悪の英国のインフレ景気や財政懸念などがあることで、19時前の高値からはポンド上昇には抵抗も入っている。
今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年9月29日の日本時間(JST)19時26分(英国夏時間(GMT+1)11時26分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 19:26の為替レート | 東京外国為替市場前日比 |
ドル/円 | 144.70 〜 144.71 | +0.15(円安) |
ユーロ/円 | 140.16 〜 140.19 | +1.71(円安) |
ユーロ/ドル | 0.9685 〜 0.9687 | +0.0108(ドル安) |
英ポンド/円 | 156.98 〜 157.04 | +0.07(円安) |
スイスフラン/円 | 147.42 〜 147.48 | -0.22(円高) |
豪ドル/円 | 93.52 〜 93.56 | -0.47(円高) |
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