FXニュース:一時145円86銭付近の9月22日の為替介入以来の円安に
2022年10月11日東西FXニュース – 2022年10月11日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米長期金利が一時4%台に上昇し日米金利差拡大の円売りドル買い
- 日本政府と日本銀行の再度の円買い為替介入実施への警戒も高まる
- ロシア報復のウクライナ情勢悪化でユーロとポンドのリスク回避売り
- 英中銀(BoE)の英国債臨時買い入れ終了予定で市場安定性の懸念も
今日2022年10月11日火曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時の外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値が145円86銭前後から高値145円54銭前後の値動き幅約32銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の円相場の終値は145円61〜62銭前後で、連休前の前営業日17時の前東京終値の144円90銭前後と比較すると、約71銭の円安ドル高であった。
原因はまず、昨夕の欧州英国市場ではウクライナ南部クリミアとロシア間のクリミア大橋爆破のニュースを受けて、ウクライナがロシアの戦略拠点を攻撃したとの見解のある一方で、ロシアのプーチン大統領はウクライナのテロであると非難し、報復としてウクライナ首都キーウや複数の都市にミサイル攻撃などを激化させ、ウクライナ情勢悪化と長期化の警戒感から、地政学的リスク回避の欧州ユーロ売りと英国ポンド売りで安全資産のドルが買われた際のドル高の影響が、円相場にも波及していた。
加えて、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク市場はコロンブスの日の祝日で、ドル円への影響が強い米債券市場は休場中であったが、米株式市場と世界FX市場などの一部市場は開いており、米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード副議長は昨夜の全米企業エコノミスト協会(NABE)の講演で、米連邦準備理事会(FRB)による一連の利上げが完全に効果を発揮するまでにはまだ何ヶ月もの時間がかかるという見通しを述べており、米金利の大幅利上げの継続と長期化による日米金利差拡大予想のドル買い円売りが強まった。
また、米連邦準備理事会(FRB)高官の米シカゴ連銀のエバンス総裁も「インフレの減速には時間がかかる」、「来年初め迄には米金利を4.5%以上に引き上げて、暫くはその水準を維持する必要がある」などのタカ派の発言をしており、米大幅利上げ継続により米企業などへの貸付ローン金利などの上昇への警戒感から米株式市場で株価が下落したことなどでも、日米金利差拡大予想のドル買い円売りに加えて株安時のリスク回避の安全資産のドル買いが加わり、対ドル円相場は一時145円80銭付近に下落した。
しかし、前回の日本政府と日本銀行(日銀、BoJ)の為替介入があった145円90銭に迫ったことでは、為替介入警戒による利益確定売りや持ち高調整の抵抗も入った。
それに続く今朝には、祝日連休明けの今日の日本の東京外国為替市場が参入し、連休前の先週金曜に発表されていた最新の米雇用統計で米失業率が市場予想以上に改善し堅調であったデータから、今後も米連邦準備制度理事会(FRB)が米金利の大幅利上げ継続をしやすくなったことなどから、再び日米金利差拡大予想の円売りドル買いが優勢になった。
一方で、先月の9月22日に日本政府と日銀が前回の円買いドル売りの為替介入を実施した時の145円90銭の為替介入警戒ラインに再び迫っていることからは、今朝の日本市場では再介入への警戒感から持ち高調整や買い控えなどの抵抗も入り、145円台後半で小幅な値動きになった。
今朝は日本の最新経済指標の8月の国際収支の経常収支と貿易収支を財務省が発表した。国際収支の経常収支は589億円の黒字であったが、市場予想の1218億円の黒字額の半分以下であった。また、貿易収支はエネルギー価格の上昇などもあり、大幅な赤字で、特に円買い抵抗となる為替相場での要因にはならなかった。
今朝10時前の仲値決済に向けては、日本企業の輸入実需による円売りドル買いオーダーが入り、円相場でドルが再び上昇した。
そして、米連邦準備理事会(FRB)が次回11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも、通常の3倍の0.75%の利上げを継続するという市場予想が優勢で、再びかねてからの円安要因である日米金利差拡大予想による円売りドル買いが強まった。
日本時間の取引で時間外の米債権市場では米長期金利が一時4%付近へと上昇を続け、日米金利差拡大による円売りドル買いで、昼過ぎには一時145円86銭付近を記録した。前回の日本政府と日銀の為替介入レベルに迫ったことでは、再び為替介入警戒売りや持ち高調整の抵抗が入り始めた。
午後14時には日本の最新経済指標の9月の景気ウオッチャー調査の現状判断DIと先行き判断DIが発表され、現状判断DIは前回の45.5と市場予想の47.7に対して48.4に上昇したが、先行きDIは前回の49.9と市場予想の50.8に対して49.2であった。
日本銀行(日銀)の黒田総裁は来年に任期終了予定を控えており、77歳の高齢であることから任期延長はしないであろうという市場予想が優勢で、円安要因である日銀の金利抑制の大規模緩和金融政策の方向転換が困難である予測につながっていたが、今日はそれを裏付ける様に岸田首相が「日本銀行は、賃金が上昇するまで現在の金融政策を継続するべきであり、黒田総裁の任期短縮は考えていない」と発言したことも円売りドル買いの一因となった。
しかし、午後になって時差で朝の欧州英国市場が本格的に参入すると、安全資産の米10年債の利回りが指標となる米長期金利が4%付近から3.95%付近へとやや今日の上昇幅を縮めたことなどから、為替介入警戒域付近からの高値のドルの利益確定売りと持ち高調整などの抵抗の勢いが強まった。
そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は145円61〜62銭前後で、連休前の前東京終値比では約71銭の円安ドル高であった。
今夜この後にも、深夜過ぎの1時に米クリーブランド連銀のメスター総裁の発言予定があり、また明日未明2時には米国3年債の入札などが予定されている。
また、明日には米生産者物価指数や前回の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公表予定もあり、今週は木曜の米消費者物価指数や金曜の米小売売上高の発表予定も控えている。
今日のユーロの円相場は、前述のクリミア大橋のロシアの報復のミサイル攻撃で、ウクライナでは今日も首都キーウなどの各地で民間人の死傷者も出ていることで地政学リスク回避によるユーロ売りが進み、安全資産のドルや低リスク通貨の円が買われた影響などで、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は141円25~28銭付近で、前営業日同時刻の前東京終値比では約73銭の円高ユーロ安だった。
同様にユーロドルも、17時の今日の東京外国為替市場の終値は0.9700~0.9701ドル付近で、前東京終値比で約0.98セントのユーロ安ドル高であった。
今日の英国ポンドの円相場は、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は160円46〜52銭付近で、前営業日同時刻の前東京終値比では約65銭の円高ポンド安であった。
欧州の一部地域と隣接するウクライナ情勢悪化を受けてのユーロリスク回避では、元欧州連合(EU)で欧州経済と関係性がある英ポンドもユーロのつられ安になりやすい傾向があり、安全資産のドルや低リスク通貨の円に対してユーロと共に売られた影響が出ていた。
また、昨夜の英国ロンドン外国為替市場では、英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)が市場安定のための英国債の臨時買い入れの今週いっぱいの終了予定に向けて、最高購入額をこれまでの50億ポンドから100億ポンドに増額し、流動性圧の緩和をサポートするために一時的な拡大担保のレポ・ファシリティ制度を開始予定であることなどを発表したことから、英国債買い入れ期限に延長予定が示されなかったことで市場安定性への懸念が高まった。英国債買い入れ終了による市場の不安定化への警戒や英景気懸念などのリスク回避でも、英ポンド売りが安全資産のドルや低リスク通貨の円に対して起きた。
ただし、今日は最新の英国経済指標の発表もあり、9月の英小売連合(BRC)小売売上高調査の前年同月比は前回の0.5%に対して1.8%に改善され、8月の英失業率のILO方式では前回と市場予想の3.6%から3.5%にやや改善されていたが、他の統計では前回と同じ横ばいの3.9%であった。一方で、9月英失業保険申請件数は記録的なインフレによる生活費の上昇などで、前回の0.63万件から2.55万件に増えていた。
今夜この後には、明日未明3時35分に英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)のベイリー総裁の発言予定があり、今後の英利上げ率や金融政策などについての為替相場の市場予想材料として注目されている。
今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年10月11日の日本時間(JST)19時15分(英国夏時間(GMT+1)11時15分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 19:15の為替レート | 東京外国為替市場前日比 |
ドル/円 | 145.73 〜 144.74 | +0.83(円安) |
ユーロ/円 | 141.28 〜 141.30 | -0.70(円高) |
ユーロ/ドル | 0.9693 〜 0.9695 | -0.0105(ドル高) |
英ポンド/円 | 160.86 〜 160.92 | -0.25(円高) |
スイスフラン/円 | 145.83 〜 145.89 | +0.11(円安) |
豪ドル/円 | 91.24 〜 91.28 | -0.51(円高) |
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