FXニュース:日米金利差拡大で146円台の1998年8月以来の円安更新
2022年10月12日東西FXニュース – 2022年10月12日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米大幅利上げ継続予想で米長期金利一時4%台の円安要因
- 鈴木財務相が為替介入は動きが重要で額ではないと発言
- 英中銀(BoE)総裁の金融介入懸念発言とFTの延長可報道
今日2022年10月12日水曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時の外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値が146円39銭前後から高値145円82銭前後の値動き幅約57銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の円相場の終値は146円17〜18銭前後で、前日同時刻の前東京終値比較では約54銭の円安ドル高であった。
原因はまず、昨夜から今朝の米国ニューヨーク外国為替市場で米失業率の低下などから米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げ継続予想が強まっており、米10年債の利回りが指標となる米長期金利が4%台に上昇し、かねてからの円安ドル高の要因であった日米金利差拡大によるドル買い円売りが優勢だった。
米連邦準備制度理事会(FRB)高官のタカ派発言も継続しており、米クリーブランド連銀のメスター総裁が昨夜の講演で「米国のインフレ率を目標の2%へと安定して下げるためには、更なる利上げによる金融引き締めの金融政策が必要になる」と語った。
世界のFX投資家達が市場予想ツールとして活用している米国金利先物動向から利上げ予測値を推計する米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のフェドウオッチ・ツール(FedWatch Tool)でも、米連邦準備理事会(FRB)が来月11月に開催予定の次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で通常の3倍の0.75%の大幅利上げ継続をする確率が70%超の確定値近くに上昇し、それに続く12月にも0.75%の追加利上げ確率が30%を超えてきていることなども、日米金利差拡大予想によるドル買い円売りの一因になった。
一方で、日本銀行(日銀、BoJ)の黒田総裁の任期短縮予定などもないことから、今後も日銀は金利抑制の大規模緩和を継続するという予測が優勢で、日米の金融政策の方向性の違いによる日米金利差拡大予想でもドルが買われて円が売られた。
更に、米国市場と後半が重なっていた昨夜の英国ロンドン市場では、英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)のベイリー総裁が、英国金融市場の安定のための英国債の臨時買い入れオペを予定通りに今週金曜で終了することに関して、「英国の金融市場の安定には深刻なリスクが伴う。市場への介入は一時的な臨時措置であり、今週末にはイングランド銀行(BoE)は手を引く」などと発言したことで、市場安定性への懸念からリスク回避で英ポンド売りと安全資産のドル買いが起き、ウクライナ情勢の悪化などで欧州通貨もドルに対してリスクオフで売られていたことなどから、他の主要通貨に対するドル高も円相場に波及した。
米長期金利上昇に伴い、米国株式市場でも金利上昇への警戒感から株価が急落し、ドルの買い戻しなどのリスク回避が起きた。
そのため、今朝6時までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場の終値は145円80~90銭付近の前営業日同時刻比で約45銭の円安ドル高で、日本政府と日本銀行(日銀)が前回の円買いドル売りの為替介入を実施した9月22日の円の安値付近を記録した。
今朝8時50分には日本の最新経済指標の発表もあり、8月の機械受注は、前年同月比で前回の12.8%と市場予想の12.6%に対して9.7%に低下し、前月比では前回の5.3%と市場予想の-2.3%に対して-5.8%で、資源高や物価高の影響などもあり、市場予想を超えた低下が目立ったことも、円売り材料になった。
その後に始まった今日の日本の東京外国為替市場では、今朝は為替介入への警戒はあるものの、円安ドル高の要因の方が強く、146円台の円安ドル高に突入した。
今朝10時前の仲値決済に向けては、日本企業の輸入実需による円売りからのドル買い注文も加わり、11時台には一時146円39銭付近の1998年8月以来の約24年ぶりの円安ドル高を記録した。
今日は、午前中に鈴木俊一財務相が現在の円安に関して、「必要があれば、必要な措置を取るという考えは、いささかも変わらない」とコメントしたが、為替介入については、急速な円安は良くないという「動きが重要で、どこの額に来たらとか、そういうことではない」と発言したことで、日本の為替介入への警戒がやや緩和され、比較的安定した動きで146円台前半の日本市場の取引が昼から午後に継続した。
日本市場の午後には時差で朝の欧州英国市場が参入したが、一時4%台だった米10年債の利回りが3.92%台にやや下げて落ち着いてきたことで、146円台前半の落ち着いた値動きが継続し、17時の今日の東京外国為替市場の円相場の終値は146円17〜18銭付近で、前日同時刻比で約54銭の円安ドル高だった。
今夜この後には、最新の米国重要経済指標などの発表予定もあり、日本時間の20時に米MBA住宅ローン申請指数、21時半に9月の米卸売物価指数(PPI)、23時には米連邦準備理事会(FRB)高官の米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁の発言予定、明日未明2時45分には米連邦準備理事会(FRB)のバー副議長の発言予定と、3時頃に前回の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の発表も予定されており、世界のFX投資家達が今後の値動きの市場予想のために注目している。
今日のユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の円相場の終値は141円88~91銭付近で、前日同時刻比で約66銭の円安ユーロ高であった。ユーロドルは、17時の今日の東京外国為替市場の終値は0.9707~0.9708ドル付近で、前日同時刻比では約0.10セントのユーロ高ドル安だった。
昨夜の欧州英国市場では、クリミア大橋爆破のロシアの報復のミサイル攻撃で多数の民間の死傷者が出たウクライナ戦争激化の地政学リスク回避で、安全資産のドルや低リスク通貨の円に対してのユーロ安が進んでいたが、欧州中央銀行(ECB)の大幅利上げ継続予想による安値のユーロ買いがユーロ安の抵抗要因となった。
しかし、米国ニューヨーク市場では、米長期金利の上昇や欧州に近い英国の金融市場への懸念から再びユーロ売りのドル買いも入った。日本市場では、ユーロは対ドルでもみ合い、10時頃にはユーロ高ドル安になり、また、円相場でも昼頃には前日比では円安ユーロ高になった。
しかし午後15時頃に、通称FTで知られる英国経済紙のフィナンシャル・タイムズ(Financial Times)が、昨夜の英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)のベイリー総裁の発言後に、実は英国債の買い入れは延長も可能と言うような報道をしたことが原因になり、英国ポンドとユーロが安全資産のドルや低リスク通貨の円に対して買われたことで、ユーロ高になった。
今夜18時には欧州ユーロ圏の最新経済指標が発表され、8月の欧鉱工業生産は前月比でも前年同月比でも前回と市場予想以上に改善されていたこともユーロ買いの一因となった。
今夜この後には、22時半に欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁の発言が予定されており、市場が注目している。今日の日本市場でも、日欧金利差拡大予想による円売りユーロ買いが円安ユーロ高の要因になっていた。
今日の英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の円相場の終値は160円37〜43銭付近で、前日同時刻比では約36銭の円安ポンド高であった。
昨夜の英国ロンドン外国為替市場では英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)が市場安定のための期限付きの緊急臨時措置の英国債買い入れオペの対象を、物価連動国債に追加拡大すると発表したことで、英債券市場安定への期待からのポンド買いが入ったものの、その後に英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)のベイリー総裁が、前述の通り、金融市場介入に関する深刻なリスクに対する懸念を示し、期限通りに今週金曜に終了すると発言したことで、英国市場の後半から始まった米国ニューヨーク市場ではポンド売りに転じた。
しかし、その後の今日の日本市場の午後になると、先述の英国経済新聞のフィナンシャル・タイムズ(FT)が、英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)が今週金曜の10月14日に終了期限の緊急臨時措置の英国債購入策を延長する可能性について金融機関に示唆していることを報じたことから、市場安定への期待から再び安値圏の英国ポンドが安全資産のドルや低リスク通貨の円に対して買われて上昇した。
ただし、英国新政権のリズ・トラス首相の大規模減税策が原因で急落後の英国債市場の実際の安定性については不透明で、英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)のベイリー総裁の発言内容と、報道内容が一致していないことから、確定情報かどうかを見極めたい市場の様子見も加わったため、現時点では大幅な円安ポンド高にはなっていない。
今日の日本市場の午後15時頃には最新の英国経済指標の発表もあり、8月の月次英国内総生産(GDP)の前月比は、前回の0.2%(前回改訂0.1%)と市場予想の0.0%に対してマイナスの-0.3%に低下した。8月の英製造業生産指数の前月比も0.1%(改定-1.1%)と市場予想の0.0%に対してマイナスの-1.6%で、8月の英鉱工業生産の前年同月比も前回の1.1%(改定-3.2%)と市場予想の0.6%に対しマイナスの-5.2%に低下しており、前月比でも前回の-0.3%(改定-1.1%)と市場予想の-0.2%に対して-1.8%とマイナスであったことなどからは、第一安全資産のドルに対しては英国景気懸念も継続している。
ただし、同時発表のあった英国の8月の英貿易収支は、前回の-77.93億ポンド(前回改定-54.45億ポンド)と市場予想の-90.00億ポンドに対し-70.80億ポンドで、市場予想ほどの低下ではなく、8月の英商品貿易収支も前回の-193.62億ポンド(改定-175.94億ポンド)と市場予想の-204.00億ポンドに対して-192.57億ポンドと、市場予想ほどは悪化していないことからは、ポンド安により英国の輸出企業には価格競合性が増した推測も出た。
英国が高金利で投資向きの環境を持つことを考えると、今日の英国株価も上昇トレンドであり、今夜19時頃の英国ロンドン外国為替市場では、前東京終値比で2円を超えるより大幅な円安ポンド高になっている。19時現在の円相場は、主要通貨に対して全面安が目立つ。
今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年10月12日の日本時間(JST)19時14分(英国夏時間(GMT+1)11時14分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 19:14の為替レート | 東京外国為替市場前日比 |
ドル/円 | 146.38 〜 146.40 | +0.75(円安) |
ユーロ/円 | 142.13 〜 142.15 | +0.91(円安) |
ユーロ/ドル | 0.9708 〜 0.9710 | +0.0011(ドル安) |
英ポンド/円 | 162.11 〜 162.17 | +2.10(円安) |
スイスフラン/円 | 147.02 〜 147.08 | +0.75(円安) |
豪ドル/円 | 91.77 〜 91.81 | +0.28(円安) |
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