FXニュース:米利上げ見送りと長期化示唆
2023年6月15日東西FXニュース – 2023年06月15日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米政策金利見通しが上方修正
- 年内2回の米追加利上げ予想
- 日米金利差拡大予想の円売り
- 欧米と日銀の金融政策の違い
- 円相場が今年の最安値を記録
- 2008年以来の円安ユーロ高
- 欧ECB新政策金利発表を控え
今日2023年6月15日木曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時頃までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値141円50銭前後から高値139円94銭前後の値幅約1円56銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は141円27~28銭付近と、前日同時刻の前東京終値比で約1円29銭の大幅な円安ドル高であった。今日はドルやユーロやポンドに対しても、円相場は年内最安値を記録した。
今日の為替相場の値動き要因と世界FX市場のトレンド動向はまず、日本時間で昨夜から今朝までの米国ニューヨーク (NY) 外国為替市場で昨夜21時半に発表された最新米国経済指標の5月の米国生産者物価指数とも呼ばれる米国卸売物価指数 (PPI) は、前年同月比が前回の2.3%と市場予想の1.5%に対し1.1%で、前月比も前回の0.2%と市場予想の-0.1%に対し-0.3%と米国インフレの鈍化を示したが、食品とエネルギーを除くコア指数の前月比は、前回と市場予想一致の0.2%の上昇率であった。
米国卸売物価指数 (PPI) が市場予想以上の米国インフレ鈍化を示したことでは、米国長期金利が一時低下し、その後に予定されていた今朝未明の午前3時からの米国連邦公開市場委員会 (FOMC) 終了後の米国新政策金利と声明の発表や、続いて午前3時半からの米国連邦準備制度理事会 (FRB) のジェローム・パウエル議長の定例記者会見の米ドルのビッグイベントを控えた持ち高調整のドル売りも出て、深夜0時半過ぎに対ドル円相場は一時139円29銭付近の米国市場および昨日の日通しでの円の高値でドルの安値を記録していた。
しかし、今朝午前3時の米国連邦準備制度理事会 (FRB) の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) 終了後の米国新政策金利発表では、市場予想通りに今月の米国利上げは見送りとなり、米国政策金利のフェデラルファンド (FF) レートの誘導目標は前回と同じ5.00〜5.25%に据置されたが、同時発表の米国政策金利見通しのドット・チャートは、今年末の予想中央値が3月の5.1%から引き上げられた5.6%に上方修正され、年内に0.25%の追加利上げがまだ2回実施される可能性が示唆されたことから、市場では今月の米国利上げ見送り (スキップ) 後に、来月7月にもう1回の追加利上げは予想されていたことからサプライズとなり、米国利上げが市場予想以上に長期化する可能性からドルが買われ上昇し、円相場でも一時140円18銭付近の米国市場での円の安値でドルの高値を記録した。
ただし、その半時間後からのジェローム・パウエル議長の定例記者会見では、7月の米国利上げについては、7月の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) で「ライブ」で決めるまでは未定であることを強調し、「米国のインフレ率を2%に戻すプロセスには、まだ長い道のりが残されている」としながらも、「米国のインフレ低下のために必要な条件は、ほぼ揃いつつあると言えるだろう」などのハト派寄りの意見も述べたため、7月の利上げスキップ予想がやや減退し、ハト派発言中には円相場でドルが利益確定売りで急落する値動きも見られた。
記者団の質問に答える際にも、「今回の利上げスキップは、いや、スキップとは呼ぶべきではないな」と、1回の利上げ見送りの「スキップ」とまだ呼ぶべきではないことを、パウエル議長は自身の発言でも正していた。
しかし、その一方で、米国利上げ停止後の利下げ時期にはまだ遠く、米国のインフレが顕著に鈍化して政策目標の2%に近いてからのことになるため、「インフレリスクは依然としてあり、利下げへの転換時期については、2年ほど先の話」になる可能性が高いと指摘したことでは、早期の米国利上げ停止や利下げ転換予測は減退し、米国金利が高止まりをする期間が長くなる可能性では、ドルの買い戻しも起きていた。
また、米国政策金利見通しの上方修正では、「ほぼ全てのメンバーが、年内のさらなる利上げは適切だと判断した」というタカ派発言もあり、対する日本銀行 (日銀 / BoJ) は、今日からの日銀金融政策決定会合でも金利抑制の大規模緩和金融政策を当面維持する市場予想が優勢であることから、日米の金融政策の方向性の違いを意識した日米金利差拡大予想の円売りドル買いもあった。
しかし、米国ニューヨーク外国為替市場では、今回の米国新政策金利の据え置きは市場予想通りの結果であったことや、前日比の基準となる前米国市場では米国長期金利上昇時の140円22銭付近の前ニューヨーク終値の円安ドル高が進行した後で、米国卸売物価指数 (PPI) を受けたイベント前の持ち高調整のドル売りも起きた後であったために、米国市場での前ニューヨーク終値比では、やや小幅な円高ドル安の範囲になっていた。
そのため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値139円29銭前後から安値140円18銭前後の値動きで、今朝6時頃のニューヨーク終値を140円9銭付近でつけていた。これは、昨日の朝6時の前ニューヨーク終値比では約13銭の円高ドル安であるが、昨夜17時の前東京終値は139円96~97銭付近だったため、前東京終値比では約13銭の円安ドル高であった。
その後に今朝9時頃から始まった日本の東京外国為替市場では、今日から2日間の日本銀行 (日銀 / BoJ) の日銀金融政策決定会合が開催されることから、日銀は金利抑制の大規模緩和の金融政策を現状維持する市場予想が優勢で、今朝未明に発表された米国の利上げ長期化の可能性から日米の金融政策の方向性の違いによる日米金利差拡大予想の円売りドル買いが強まり、ドルは円相場で上昇を続けたため、今朝9時2分頃の一時139円94銭付近が今日の日本市場での円の高値でドルの安値になった。
今朝9時55分の日本市場での仲値決済でも、今日は15日で、日本の貿易企業の決済日が集中しやすい5と10が付く日の五十日 (ゴトービ) であることから、日本企業のまとまった輸入実需の円売りドル買いや、今後の米国利上げ長期化の見通しを受けた値上がり前の輸入用のドル準備資金買いの注文などが入り、ドルは円相場で上昇を続け、10時台には今朝までのニューヨーク高値を超えた140円台になり、さらに11時台には141円台へと上昇を続けた。
午後からの欧州英国市場の参入でも、今夜この後には欧州中央銀行 (ECB) 理事会の新政策金利と声明の発表予定もあるため、今日は日欧金利差拡大予想で記録的な2008年以来の円安ユーロ高が進んだ影響も、他の主要通貨である対ドルの円相場にも円安が波及していた。
イベントリスクまで時間があり、日英金利差拡大予想が優勢の英国ポンドに対しても今日の円相場は下落していたため、複数の主要通貨に対する円安もドル円相場に影響を与えた。
今日から明日の日銀の金利抑制の市場予想が意識され、オーストラリアの豪ドルなどに対しても、高金利通貨対低金利通貨で円が売られており、今日の円相場は主要通貨に対する全面安での下落を見せた。
今日の日本市場時間の取引で、時間外の米国債券市場で米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が上昇したことも、日米金利差拡大による円売りドル買い要因になった。
午後16時33分頃には、一時141円50銭の大幅な円安ドル高を記録し、今年の円相場でのドルの年内高値で円の年内安値の記録を更新した。
ただし、141円台後半付近では、日本政府と日本銀行 (日銀 / BoJ) の為替介入警戒ゾーンに近づくこともあり、高値のドルの利益確定売りと安値の円買いの持ち高調整の抵抗が入り始めた。
そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は141円27~28銭付近で、昨夜17時の前東京終値比で約1円29銭の大幅な円安ドル高になった。
今夜この後にも、最新米国経済指標の発表予定があり、日本時間の今夜のスケジュールは、21時半に6月の米国フィラデルフィア連銀製造業景気指数、5月の米国小売売上高、前週分の米国新規失業保険申請件数と失業保険継続受給者数、5月の米国輸入物価指数と輸出物価指数、6月の米国ニューヨーク連銀製造業景気指数、22時15分に5月の米国設備稼働率と米国鉱工業生産、23時に4月の米国企業在庫、29時に4月の対米証券投資などが発表される予定である。
一方、欧州ユーロは、今夜この後の21時15分頃に欧州中央銀行 (ECB) 理事会による欧州ユーロ圏の新政策金利と声明の発表予定のビックイベントがあり、続いて、半時間後の21時45分頃から、欧州中央銀行 (ECB) のクリスティーヌ・ラガルド総裁の定例記者会見が予定されている。今月の米国の利上げ見送りに対し、欧州は利上げ継続予想が優勢で、今日の市場の値動きにユーロ高の影響を与えているが、今後の見通しなども注目されている。
欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は152円94~96銭付近で、昨夜17時の前東京終値比で約1円92銭の大幅な円安ユーロ高であった。
主な原因は、日欧金利差拡大予想の円売りユーロ買いが優勢であったことに加え、前述の通り、他の主要通貨に対する円安の影響も波及したため、今日は2008年9月以来の記録的な円安ユーロ高を記録した。
ユーロドルも、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0824~1.0826ドル付近で、昨夜17時の前東京終値比で約0.36セントのユーロ高ドル安だった。
原因は、前述の通り、今月に米国が市場予想通りに利上げを見送りの金利据え置きをした一方で、今夜の欧州利上げ継続の市場予想が優勢で、欧米金利差予想が影響を与えていた。
今日の午後15時45分に発表された欧州ユーロ圏のフランスの最新経済指標の5月の仏消費者物価指数 (CPI) の改定値は、前年同月比の5.1%と前月比の-0.1%ともに前回と市場予想に一致した横ばいであったが、18時に発表された欧州ユーロ圏総合の4月の欧州貿易収支は、季調前と季調後ともに赤字額が減ったことも、ユーロ高の一因になっていた。
英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は178円78~84銭付近で、昨夜17時の176円57~63銭付近の前東京終値比で約2円21銭の大幅な円安ポンド高であった。
主な要因は、今日からの日本銀行 (日銀 / BoJ) 金融政策決定会合では金利抑制の大規模緩和継続予想が優勢であることに対し、記録的な英国インフレの継続により、来週に予定されている英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE) の金融政策委員会 (MPC) では利上げ継続予想が優勢で、日英金利差拡大予想の円売りポンド買いが、今週の日米欧の金融政策イベントから来週に離れていることで、イベントリスクが少なく買いやすかったことも影響を及ぼし、昨夜の英国ロンドン外国為替市場で177円台にシフトしたポンド円は、今日の日本市場では178円台に続伸した。
また、昨夜の英国ロンドン外国為替市場では、英ポンドがドルに対してもおよそ1年ぶりと言われる高値を記録しており、他の主要通貨に対する円安やポンド高がポンド円相場にも影響を与えていた。
オーストラリアの豪ドルも、今夜17時の今日の東京外国為替市場の豪ドル円相場の終値は96円32~36銭付近で、昨夜17時の前東京終値比で約1円10銭の大幅な円安豪ドル高であった。
主な原因は、日豪金利差に加えて、今朝10時半に発表された豪雇用指標を受けた円売り豪ドル買いの影響があり、今日は昨年秋以来の約9カ月ぶりの円安豪ドル高を記録した。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2023年6月15日の日本時間(JST)19時21分(チャートの時間帯は英国ロンドン外国為替市場時間の夏時間 (GMT+1 / BST) 11時21分) の、人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 19:21の為替レート | 日本市場前営業日17時の前東京終値時間比 |
ドル/円 | 141.12 ~ 141.13 | +1.14 (円安) |
ユーロ/円 | 152.93 ~ 152.95 | +1.91 (円安) |
ユーロ/ドル | 1.0835 ~ 1.0837 | +0.0047 (ドル安) |
英ポンド/円 | 178.51 ~ 178.57 | +1.94 (円安) |
スイスフラン/円 | 156.59 ~ 156.65 | +1.17 (円安) |
豪ドル/円 | 96.02 ~ 96.06 | +0.80 (円安) |
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