FXニュース:米利上げ長期化予想が再燃
2023年7月21日東西FXニュース – 2023年07月21日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米新規失業保険申請件数減
- 堅調な米雇用指標でドル高
- 米長期金利上昇時の金利差
- 来週日銀金融緩和継続予想
今日2023年7月21日金曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時頃までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の高値でドルの安値139円75銭前後から円の安値でドルの高値141円40銭前後の値幅約1円65銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は141円31~32銭付近と、前日同時刻の前東京終値比で約1円70銭の大幅な円安ドル高であった。
その後の今夜17時58分頃の英国ロンドン外国為替市場でも、一時141円94銭付近の更に大幅な円安ドル高を記録した。
今日の為替相場の値動きの主な要因と世界FX市場のトレンド動向の分析はまず、昨夜の英国ロンドン外国為替市場では来週の日米欧の新政策金利と金融政策の発表のイベントを前にした持ち高調整と様子見の動きが出ていたが、同市場後半から時差で始まった昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場では、昨夜21時半に発表された最新米国経済指標での前週分の米国新規失業保険申請件数が、前回の23.7万件と市場予想の24.2万件に対して22.8万件と5月中旬以来の低水準となり、大幅な改善を見せたことで、堅調な米国雇用市場を背景とした米国連邦準備制度理事会 (FRB) の米国利上げ長期化予想が再燃し、米国長期金利が上昇し、日米金利差拡大予による円売りドル買いに加えて、来週の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) を前にした欧州通貨などの主要通貨に対するドル買いも入り、一時全面ドル高になった。
同時発表の7月の米国フィラデルフィア連銀製造業景気指数は、前回の-13.7と市場予想の-10.0に対し-13.5と市場予想ほどの改善はなかったものの、前回よりはやや改善に向かっていた。
また、昨夜23時に発表された6月の米国景気先行指標総合指数の前月比は、前回の-0.7%と前回修正と市場予想の-0.6%に対して-0.7%とやや弱かったが横ばいに近い推移であった。
市場では、米国の労働市場の需給の引き締まりにより、賃金インフレやサービスインフレなどで、鈍化傾向を示した後も米国のインフレが2%の目標に達せずに長期化をすれば、米国利上げ長期化や米国政策金利の高止まりが長引く可能性から、早期の米国利下げ転換予想が減退しており、米国利上げ長期化の市場予想が強まり、米国長期金利の指標となる米国10年債の利回りが一時3.87%付近に上昇し、日米金利差拡大による円売りドル買いが進み、今朝未明の午前1時40分頃から45分頃にかけて数回140円49〜50銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値を記録した。
来週の日米欧の金融政策発表イベントでは、米国連邦準備制度理事会 (FRB) が7月25~26日に開催予定の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) が最初で最も近いため、今月を最後に米国の利上げが停止するとの市場予想の後退により、米国利上げ長期化予想の影響で米国長期金利が上昇し、米国債券市場の終値は3.85%と、前日比で0.10%高になり、日米金利差拡大時の円売りドル買いが優勢だった。
一方で、続いて来週の7月27〜28日に開催予定の日本銀行 (日銀 / BoJ) の日銀金融政策決定会合では、先日の植田総裁の発言を受けた金利抑制の大規模緩和金融政策の継続予想が優勢になっており、日米の金融政策の方向性の違いにより、日米金利差拡大予想の円安ドル高が進行した。
ただし、同時進行の米国株式市場では、テスラ (TSLA) やネットフリックス (NFLX) の弱い決算発表があり、テスラは4月以来の9.74%の大幅下落を見せ、ネットフリックスも8.41%の昨年末以来の今年最大の下落を見せた影響などで、一部の投資家達のリスク回避の安全資産の米国債買いや、低リスク通貨の円買いが抵抗要因になり、テクニカル分析の50日移動平均線が位置していた140円51銭の付近がレジスタンスラインとして意識され、その手前からは市場高値後のドルの利益確定売りと、市場安値後の低リスク通貨の円買いの抵抗が入ったことでは、円相場はやや反発した。
しかし、米国ニューヨーク株式市場では、米国ナスダック (NASDAQ) 総合と米国S&P総合500種 (SPX) は下落の終値をつけたものの、米国ダウ工業株30種 (DJI) は2017年9月以来の9営業日連続で続伸しており、一部の米国株安の影響によるリスク回避の動きによる為替市場への影響は限られた。米国ダウ上昇には、ジョンソン・エンド・ジョンソン (JNJ) が好調な見通しを背景に買われて6.07%の上昇を見せたことなどが影響しており、米国主要株価三指数は強弱混合の結果になっていた。
また、世界FX市場でも、エキゾチック通貨の南アフリカランドがドルに対して大幅に急落した影響も、ドル上昇圧として他の通貨に影響を及ぼしたことが話題になった。原因は、南アフリカ準備銀行 (SARB) が政策金利の据え置きを決めたことによる南アフリカランド売りドル買いであった。
そのため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値でドルの安値の139円58銭前後から円の安値でドルの高値の140円50銭前後の値動きをし、今朝6時頃のニューヨーク終値を140円7銭付近と、前日同時刻の前ニューヨーク終値比で約42銭の円安ドル高でつけていた。
今朝8時半には、日本の最新重要経済指標の6月の全国消費者物価指数 (CPI) の発表があり、前年同月比は前回と市場予想の3.2%に対し3.3%に上昇し、気候条件などで価格変動が激しい生鮮食料品を除いたコアCPIも前年同月比が前回の3.2%に対し市場予想通りに3.3%上昇した。ただし、生鮮食料品とエネルギー除いたコアコアCPIは前年同月比が前回の4.3%に対し市場予想一致の4.2%だった。一部では物価上昇による日銀の修正圧が意識され、発表時にえんが買われたが、物価の高止まりに対して日本は賃金上昇率が欧米よりも遅れているという指摘もあり、CPIを受けた円買いで今朝9時8分頃には一時139円75銭付近の今日の日本市場での円の高値でドルの安値を記録したが、一時的で長続きはしなかった。
今日の日本の東京外国為替市場でも、昨夜の堅調な米国雇用指標の影響による米国利上げ長期化予想の日米金利差拡大予想の円売りドル買いが再び優勢になり、ドルが円相場で上昇し始めたが、今朝は日経平均株価が一時400円以上も大幅下落した時間があり、日本株安時の国内第一安全資産の低リスク通貨の円買いの抵抗も入った。
しかし、日経平均株価が大幅な下げ幅を縮め始めると、再び日米金利差拡大による円売りドル買いが強まり、再び140円台にドルが上昇を続けた。
午後15時15分には、今日の日経平均株価は3万2304円25銭の前日比186円27銭安で大引けした。
夕方に16時台の欧州英国市場の本格参入では、英国に本社を持つ国際ニュース通信社のロイター通信 (Reuters) が、日本銀行 (日銀 / BoJ) の関係者からの情報として、「来週の日銀金融政策決定会合では、金融政策の現状維持を決める公算」と報道したことをきっかけに、日米金利差拡大予想の円売りドル買いが勢いを増した。
また、日銀の長短金利操作のイールドカーブコントロール (YCC) に関しても、「枠組みを維持し、10年金利の変動幅が0.5%±で据え置きになる可能性が高い」と伝えられていた。
続いて、米国ブルームバーグ (Bloomberg) ニュースも、「日銀関係者の話によると、日銀は現時点でイールドカーブコントロール (YCC) 政策の副作用に、緊急で対応する必要性は乏しいとみている」と同様の報道を続けたことで、日米金利差拡大予想がさらに強まり、対ドルの円相場が急落し、16時51分頃に一時141円40銭付近の今日の日本市場の円の安値でドルの高値を記録した。
そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は141円31~32銭付近で、昨夜17時の前東京終値比で約1円70銭の大幅な円安ドル高になった。
今夜この後には、特に重要度の高い米国経済指標の発表予定はないが、来週の日米欧の新政策金利と金融政策発表のイベントに備えた市場予想による売買や持ち高調整が進んでいる。
また、米国株式市場でも米国主要企業の決算報告シーズンが続いており、来週にはグローバル大企業の米国ビッグテック (Big tech) のGAFAM (Google/Alphabet, Amazon, Facebook/Meta, Apple, Microsoft) のグーグル (GOOGL) 、アマゾン (AMZN) 、アップル (APPL) 、メタ (META) 、マイクロソフト (MSFT) の決算報告の予定などもあり、世界の投資家達の注目を集めているため、来週はビックイベント週となる予定である。
一方、欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は157円24~27銭付近で、昨夜17時の前東京終値比で約79銭の円安ユーロ高であった。
主な原因は、前述の今日の夕方のニュースを受けて日本銀行 (日銀/BoJ) の大規模緩和金融政策の継続予想が強まり、来週には利上げ予想が優勢の日欧金利差拡大予想の円売りユーロ買いが影響を及ぼした。
ユーロドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.1126~1.1128ドル付近で、昨夜17時の前東京終値比で約0.79セントのユーロ安ドル高だった。
主な要因は、先日の欧州中央銀行 (ECB) 理事会メンバーのハト派発言以来、今月の欧州利上げ後には秋には欧州利上げが見送りや停止に向かう可能性が出てきた一方で、先述の米国利上げ長期化予想の高まりにより、ユーロ売りドル買いが起きた影響が出ていた。
英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は181円90~96銭付近で、昨夜17時の181円22〜28銭付近の前東京終値比で約68銭の円安ポンド高であった。
主な要因は、日銀の大規模緩和金融政策の継続予想の影響による日英金利差拡大予想の円売りポンド買いが影響を及ぼした。
また、今日の午後15時に発表された最新英国経済指標の6月の英国小売売上高が、前年同月比が前回の-2.1%と前回修正の-2.3%と市場予想の-1.5%に対し-1.0%で、前月比も前回の0.3%と前回修正の0.1%と市場予想の0.2%に対し0.7%と、前回と市場予想を上回ったことも今日のポンド買いの一因になった。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2023年7月21日の日本時間(JST)19時16分(チャート画像の時間帯は英国ロンドン外国為替市場時間の夏時間 (GMT+1 / BST) 11時16分) の、人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 19:16の為替レート | 日本市場前営業日17時の前東京終値時間比 |
ドル/円 | 141.71 ~ 141.72 | +2.09 (円安) |
ユーロ/円 | 157.67 ~ 157.69 | +1.22 (円安) |
ユーロ/ドル | 1.1126 ~ 1.1127 | -0.0079 (ドル高) |
英ポンド/円 | 182.22 ~ 182.28 | +2.00 (円安) |
スイスフラン/円 | 163.57 ~ 163.63 | +0.95 (円安) |
豪ドル/円 | 95.69 ~ 95.73 | +0.44 (円安) |
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