FXニュース:日銀金利抑制による日米金利差

2023年8月01日
FXニュース:日銀金利抑制による日米金利差

 

東西FXニュース – 2023年8月1日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 実質的金融緩和継続の円安要因
  • 日米株高で低リスク通貨円売り
  • 米経済ソフトランディング期待
  • 豪RBAが新政策金利を据え置き

今日2023年8月1日火曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時頃までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の高値でドルの安値の142円25銭前後から円の安値でドルの高値の142円84銭前の値幅約59銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は142円72~73銭付近と、前日同時刻の142円15~17銭付近の前東京終値比で約56銭の円安ドル高であった。

今日の為替相場の値動きの主な要因と世界FX市場のトレンド動向の分析はまず、昨日の日本市場の日本銀行 (日銀 / BoJ) の0.605%付近の市場の想定以下の長短金利操作のイールドカーブコントロール (Yield Curve Control / YCC) 運用の柔軟化の臨時の国債買い入れの「指し値オペ」実施による長期金利抑制を受け、昨夜の英国ロンドン外国為替市場と今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場では日本と欧米の金融政策の違いと政策金利差による円売りが優勢で、市場では実質的な大規模緩和金融政策の継続と受け止められ、昨夜22時20分頃に一時142円68銭付近の欧米市場および日通しの円の安値でドルの高値を記録した。

ただし、昨夜22時45分に発表された最新米国経済指標の7月の米国シカゴ購買部協会景気指数は、前回の41.5と市場予想の43.4に対し42.8と、前回よりは上昇したものの市場予想には届かなかったことでは、深夜24時10分頃に一時142円1銭付近の米国市場での円の高値でドルの安値を記録した。

しかし、同時進行で米国主要企業の決算報告期の月末の米国ニューヨーク株式市場では、最近の好調な米国企業決算の数々や、米国のリセッション (景気減退) 懸念の後退による米国経済のソフトランディング (軟着陸) への期待感と金利上昇への警戒感の後退もあり、7月の米国主要株価三指数は揃って上昇傾向を示し、米国株式市場が続伸を続けたことでも、リスクオン (リスク選好) のブル・マーケット (強気市場) では低リスク通貨の円が売られており、投資実需もあるドルが買い戻され始めて、一時142円31銭付近に反発した。

今夜この後に発表される予定の米国雇用関連の指標と最新米国重要経済指標の7月の米国サプライマネジメント協会 (ISM) 製造業景気指数や、今週3日の7月の米国サプライマネジメント協会 (ISM) 非製造業指数に加えて、今週4日の金曜日に発表予定で市場の注目度の高い7月の米国雇用統計など、次回9月の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) での米国利上げの有無は「今後のデータ次第」の米国連邦準備制度理事会 (FRB) が注視する「データ」の発表予定が今週は相次ぐため、持ち高調整の値動きも混ざったことでは、やや横ばいに近い抵抗も入った。

そのため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の安値でドルの高値の142円68銭前後から円の高値でドルの安値の142円1銭前後の値動きで、今朝6時頃のニューヨーク終値を142円29銭付近と、前営業日同時刻の前ニューヨーク終値比で約1円13銭の大幅な円安ドル高をつけていた。

今朝8時半には、日本の最新経済指標の6月の失業率が発表され、前回の2.6%に対し市場予想通りの2.5%に改善されたものの、同時発表の6月の有効求人倍率は、前回の1.31と市場予想の1.32に対し1.30に低下したことでは、やや円が売られた。

今朝9時頃からの今日の日本の東京外国為替市場も世界市場のトレンドを受け継ぎ、日銀の金利抑制による実質的な大規模緩和金融政策の継続感から日銀修正期待が減退し、円売りドル買いにより円相場が下落を続けたため、早朝の利益確定売りの一時抵抗があった今朝9時8分頃の一時142円25銭付近が今日の日本市場の円の高値でドルの安値となった。

今朝9時55分の日本市場の仲値決済に向けては、今日は月初めで日本企業の売買が交錯し、やや横ばいに近い値動きも見せたが、その後には円相場で今日の日本の長期金利が前市場での日銀の国債買い入れオペで低下しており、日米金利差拡大でドルが上昇を続けた。

ただし、今朝の日本政府の閣議後の記者会見で鈴木俊一財務相が、最近の円相場の値動きについて、「ちょっと環境が変わる中での市場動向も、しっかりと見守っていきたい」と発言したことでは、急速な円安ドル高が進行した場合には、日本政府と日銀による為替介入の警戒感も出てくることから、持ち高調整の一時抵抗がやや入っていた。

しかし、日本の金利上昇への警戒感の緩和や日本の主要取引先の米国の主要株価続伸などから、今日の日本の株式市場では日経平均株価が大幅に上昇しており、日米株高時のリスクオン市場では、株安時に買われやすい国内安全資産の低リスク通貨の円が売られやすくなっており、円相場でドルは142円台後半に向かって上昇した。

また、昼下がりの13時半には、日本市場と時間帯の近いオセアニア市場のオーストラリアの豪州準備銀行 (RBA) が新政策金利を発表し、0.25%の追加利上げの市場予想に反して、オーストラリアの新政策金利の利上げを見送り、これまでと同じ4.10%に政策金利を据え置きの決定を発表したことで、豪ドルが対ドルで売られた影響が円相場にもドル上昇圧として波及し、13時42分頃に一時142円84銭付近の今日の日本市場での円の安値でドルの高値を記録した。

午後15時15分には、東京株式市場で日経平均株価が3万3476円58銭の前日比304円36銭高の大幅高で大引けしたことでも、国内第一安全資産の低リスク通貨の円買い需要は少なかったが、午後からの欧州英国市場の参入では、今週の最新米国経済指標データの発表を控えた持ち高調整では今日の日本市場でのドルの高値後の利益確定売りがやや抵抗となった。

そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は142円72~73銭付近で、昨夜17時の142円15~17銭付近の前東京終値比では約56銭の円安ドル高になった。

今夜この後には、最新米国重要経済指標を含む経済指標の発表予定や、発言自粛期間のブラックアウト明けの米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官の発言予定などがあり、日本時間の今日の経済カレンダーのスケジュールは、22時45分に7月の米国製造業購買担当者景気指数、23時に市場注目度と重要度が高い7月の米国サプライマネジメント協会 (Institute for Supply Management / ISM) 製造業景況指数、同時刻に6月の米国雇用動態調査 (JOLTS) 求人件数と6月の米国建設支出、同じく23時頃から米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官で次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国シカゴ連銀のグールズビー総裁の発言予定となっている。

また、米国株式市場でも、今週の木曜に世界的な米国主要企業のアップル (Apple / APPL) とアマゾン (Amazon / AMZN) の決算報告を控えている決算報告期であることから、世界の株式市場からの為替相場への値動きの影響にも注意が必要である。

一方、欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は156円64~66銭付近で、昨夜17時の156円64~66銭付近の前東京終値と同じ横ばいレンジ圏であった。

主な要因は、日銀の金利抑制で日欧金利差による円売りユーロ買いの上昇圧があった一方で、対円でのドル上昇の影響から対ドルでユーロが下げた影響が波及した。

ユーロドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は1.0974~1.0976ドル付近で、昨夜17時の1.1018~1.1020ドル付近の前東京終値比で約0.44セントのユーロ安ドル高だった。

主な要因は、欧米ともに「今後のデータ」の次回の金融政策のスタンスが強調された中で、昨日に発表された欧州経済指標を受けた欧州英国市場のユーロ買いドル売りが先行したが、今週は世界的な注目度の高い米国重要経済指標の発表を控えていることから、今朝までの米国市場では持ち高調整のユーロ売りドル買いが優勢になったほか、円に対するドル高の影響の波及もあり、今日の日本市場にも影響を与えた。

ただし、今日の夕方にも欧州ユーロ圏の最新経済指標の発表が続き、16時50分に発表されたフランスの7月の仏製造業購買担当者景気指数 (PMI) の改定値は前回と市場予想の44.5に対し45.1に上昇し、ドイツとユーロ圏総合の同指標は前回と市場予想一致の横ばいであったものの、ドイツの7月の独失業率が前回と市場予想の5.7%に対し5.6%で、日本市場の後の18時に発表された欧州ユーロ圏総合の6月の欧州失業率も前回と市場予想の6.5%に対し6.4%に改善されたことでは、ユーロ買いの抵抗も入っていた。

英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は182円92~98銭付近で、昨夜17時の182円75~81銭付近の前東京終値比では約17銭の円安ポンド高であった。

主な要因は、今週3日の木曜日に英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE) の英国の新政策金利と金融政策の発表を控える中で、前回のような大幅利上げ期待は後退しているものの、0.25%の利上げ継続の市場予想が優勢で、日英金利差拡大予想が影響を及ぼした。

日本時間の午後15時に発表された最新英国経済指標の7月の英国ネーションワイド住宅価格の前月比は、前回の0.1%に対し市場予想通りの-0.2%に住宅インフレ鈍化を示しており、大幅利上げ継続予想は減退している。

一方で、17時半に発表された7月の英国製造業購買担当者景気指数 (PMI) 改定値は、前回と市場予想の45.0に対し45.3に上昇しており、小幅な利上げ予想は依然優勢である。

豪ドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の豪ドル円相場の終値は94円81~85銭付近で、昨夜17時の95円10~14銭付近の前東京終値比では約29銭の円高豪ドル安だった。

主な要因は、先述のオーストラリアの政策金利据え置きによる対ドルの豪ドル売りが影響を及ぼした。

なお、スイスフランのスイス市場は、今日は建国記念日に相当するナショナル・デーの祝日で休場である。

今日の東西FXニュース執筆終了前の2023年8月1日の日本時間(JST)19時33分(チャート画像の時間帯は英国ロンドン外国為替市場時間の夏時間 (GMT+1 / BST) 11時33分) の、人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 19:33の為替レート 日本市場前営業日17時の前東京終値時間比
ドル/円 142.72 〜 142.74 +0.55 (円安)
ユーロ/円 156.61 〜 156.63 -0.03 (円高)
ユーロ/ドル 1.0972 〜 1.0973 -0.0046 (ドル高)
英ポンド/円 182.77 〜 182.83 +0.02 (円安)
スイスフラン/円 162.94 〜 163.00 -0.39 (円高)
豪ドル/円 94.57 〜 94.61 -0.53 (円高)


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