FXニュース:中東情勢警戒のリスク回避

2023年10月16日
FXニュース:中東情勢警戒のリスク回避

 

東西FXニュース – 2023年10月16日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 欧米株価下落時の安全資産
  • 米長期債買いで利回り低下
  • 米期待インフレ率想定超え
  • 日本株安時の低リスク通貨
  • 本日夕方に中東停戦報道も

今日2023年10月16日月曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時頃までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の高値でドルの安値の149円37銭前後から円の安値でドルの高値の149円62銭前後の値幅約25銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は149円56~57銭付近で、前営業日にあたる先週金曜日17時の149円64~65銭付近の前東京終値比では約8銭の円高ドル安であった。

今日の為替相場の値動きの主な要因と世界FX市場のトレンド動向の分析はまず、先週金曜の夜の英国ロンドン外国為替市場では、パレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスとイスラエル軍の戦争懸念のニュースを受けた中東情勢警戒のリスク回避のリスクオフが高まり、中東に産油国があることでも原油先物価格上昇の影響による欧州インフレ悪化懸念などで欧州株式市場が下落し、欧州ユーロ売りで世界的に流動性が高い安全資産のドルや低リスク通貨の円が買われていたが、同じく世界的な安全資産でもある米国債が買われた影響で米国債券価格上昇に伴う利回り低下により米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が低下したため、日米金利差縮小時の円買いドル売りでドルに対して円相場が上昇していた。

また、米国政府のイスラエル支援発言や欧州各地でパレスチナ支持のデモが起きた影響などもあり、永世中立国であるスイスフランも安全資産として買われていた。

続いて始まった先週金曜の夜から土曜までの米国ニューヨーク外国為替市場では、先週金曜の夜21時半に最新米国経済指標の9月の米国輸入物価指数と米国輸出物価指数の前月比が発表され、米国輸入物価指数は前回と市場予想の0.5%に対し前月が0.6%に上昇修正されたものの0.1%に鈍化したが、米国輸出物価指数は国内インフレの根強さの影響もあり、前回の1.3%と前回修正の1.1%と市場予想の0.5%に対し0.7%と市場予想ほどは鈍化しておらず、中東情勢悪化を受けて米国原油価格も上昇していたため、欧州株式市場に続き米国株式市場でもリスク回避のリスクオフの株売りで欧米株式相場が下落し、ドルからでも買える安全資産の米国債買いと低リスク通貨の円買いが続き、先週金曜の夜22時3分頃には一時149円45銭付近の米国市場および日通しでの円の高値でドルの安値を記録した。

また、米国政府のイエレン財務長官は、先週金曜の国際通貨基金 (IMF) 会合周辺でのインタビューで、9月の米国消費者物価指数 (CPI) の前月比0.4%の上昇分のうち、家賃などの住居費が0.6%上昇した影響が大きかったことを理由に挙げ、米国のインフレ率は住宅市場に回復が見られれば「時間の経過とともに、確実に低下していくと思う」と発言し、米国インフレ鈍化継続に向けた見解を示していた。この米国の住宅インフレに関しては、前回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) 議事要旨で、米国連邦準備制度理事会 (FRB) のメンバー達が、米国の住宅市場の回復が米国インフレ率の2%の目標達成へのリスクになるとの懸念を示していたものであり、先週金曜の夜には22時頃から次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官の米国フィラデルフィア連銀のハーカー総裁の発言もあり、米国の物価上昇圧力が鈍化する場合には、米国利上げを終了する可能性が高いとの考えなども示したことも影響を及ぼしていた。

先週金曜の22時頃からは、欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) 理事会のラガルド総裁の発言が始まっており、国際通貨基金 (IMF / International Monetary Fund) の会合のモロッコのマラケシュでのパネル討論で、ECB理事会は欧州ユーロ圏や世界中の景気見通しに影響を及ぼす「複数の動的要素」を検証しており、必要な場合には欧州の追加利上げの可能性も示したことでは、タカ派発言と受け止められたことも、米国長期金利低下時の他の主要通貨のユーロに対するドル売りの値動きの影響も対ドルの円相場に波及していた。

続いて、先週金曜の夜23時に発表された最新米国経済指標の10月の米国ミシガン大学消費者態度指数の速報値は前回の68.1と市場予想の67.2に対し63.0と弱かったが、同時発表の米国消費者による1年先の予想インフレ率が前月と市場予想の3.2%に対し3.8%に上昇し、5〜10年先の米国消費者インフレ期待も前回と市場予想の2.8%を上回る3.0%に増加し、先週10月12日に発表されていた米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) が米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) で米国の新政策金利や金融政策を決定する上で重視することが知られている米国インフレ指標の「最新データ」の9月の米国消費者物価指数 (CPI / Consumer Price Index) が市場予想を上回ったこともあり、米国インフレの根強さから米国金融引き締め長期化予想が再燃したことでは、日米の金融政策の方向性の違いによる日米金利差拡大予想のドルの買いも入り、発表時の23時頃には一時ドルが円相場で反発し、瞬間的に一時149円75〜78銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値を記録したが、中東リスク回避市場では欧米株価下落時の低リスク通貨の円買いでユーロ円などのクロス円の円相場上昇の影響もあり、すぐに円が買い戻され始めた。

このため、先週金曜の夜から土曜の朝まで米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値でドルの安値の149円45銭前後から円の安値でドルの高値の149円78銭前後の値動きで、先週末の土曜の朝5時55分から6時頃のニューヨーク終値を149円57銭付近と、前営業日同時刻の前ニューヨーク終値で約24銭の円高ドル安をつけていた。

週が明けた月曜日の今朝6時のオセアニア市場では、週末のイスラエルとイスラム組織ハマスとの戦争状態の中東情勢のニュースを受けた地政学リスクの高まりへの警戒感により、リスク回避の低リスク通貨の円買いが起き、対ドルの円相場の窓開け上昇から始まったため、先週末のニューヨーク終値の149円57銭付近に対し、今朝の始値では一時149円30銭付近の円の高値でドルの安値圏に飛んだ「窓 (Gap) 」をFXチャート上に残していた。ただし、窓開き後の窓埋めでは、今朝8時9分頃には先週末の終値を超えた一時149円63銭付近にまでドルが円相場で買い戻されていた。

今朝9時頃に一時149円56〜57銭付近から始まった今日の日本の東京外国為替市場でも、中東情勢の緊迫感を受けた世界経済への影響警戒のリスク回避のリスクオフが強く、今日の東京株式市場でも先週末の欧米株式市場下落トレンドの影響もあり、日経平均株価 (Nikkei 225 / JP225) が大幅な下落を見せたことで、日本株安時の国内第一安全資産の低リスク通貨の円買い需要があり、対ドルの円相場が上昇した。

一方で、中東情勢を受けた最近の原油高の影響もあって米国インフレ懸念や米国利上げ長期化予想が再燃していたことでは、日米の金融政策の方向性の違いによる日米金利差拡大予想もあり、米国長期金利が一時の4.6%台前半から後半に向けて下げ幅を縮め始めたことでは、日米金利差拡大時の円売りドル買いの抵抗も混ざった。また、対ユーロなどでの安全資産としてのドル買いの影響の波及も、円相場でのドルの抵抗の一因になっていた。

今日の昼の13時半頃には日本の最新経済指標の発表があり、8月の設備稼働率の前月比は前回マイナス圏の-2.2%からプラス圏の0.5%に改善されたものの、8月の鉱工業生産の確報値は前月比が前回の0.0%から-0.7%に低下し、前年同月比も前回の-3.8%から-4.4%に悪化しており、中東情勢警戒のリスク回避に加えて、原油高時の景気懸念によるリスクオフの低リスク通貨の円買いの勢いが増し、午後14時半には、一時149円37銭付近の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録し、午後15時15分には今日の日経平均株価は3万1659円3銭の終値で、前営業日比で656円96銭安の大幅安で大引けした。

しかし、午後からの欧州英国市場の参入では、米国長期金利が4.69%台に低下幅を縮めてきた影響によるドルの買いや、午後16時過ぎの夕方のロイター通信 (Reuters) の世界ニュースでは、エジプトとイスラエルと米国がガザ南部の停戦に合意し、ガザ南部ラファにあるエジプトとの境界の検問所も再開するとの報道が流れたことで日本市場でもリスク回避がやや緩和し、米国株価先物も上昇を見せたことで、低リスク通貨の円の利益確定売りや日米金利差拡大によるドルの買い戻しが入ったことでは、午後16時36分頃にドルは円相場で一時149円62銭付近の今日の日本市場での円の安値でドルの高値を記録し、ドルは今朝までの円相場での下げ幅を縮めていた。

このため、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は149円56~57銭付近と、前営業日にあたる先週金曜17時の149円64~65銭付近の前東京終値比で約8銭の小幅な円高ドル安になっていた。

今夜この後にも最新米国経済指標の発表予定や米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官の発言予定などがあり、今夜21時半に 10月の米国ニューヨーク連銀製造業景気指数、27時の 9月の米国月次財政収支、23時半と29時半頃からの2回の予定の次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国フィラデルフィア連銀のハーカー総裁の発言予定などが注目されている。

また、米国株式市場では、先週末から始まった決算報告シーズンも続いている。

一方、欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は157円56〜57銭付近で、先週金曜17時の157円92〜94銭付近の前東京終値と比較すると約36銭の円高ユーロ安であった。

主な要因は、先述の中東情勢警戒のリスク回避で、地政学的リスクの高まりから、リスク市場に弱いユーロが売られて、世界的に流動性が高い安全資産のドルや低リスク通貨の円が買われた影響が顕著であった。

そのため、ユーロドルも、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0534~1.0536ドル付近で、先週金曜17時の1.0552~1.0554ドル付近の前東京終値比で約0.18セントのユーロ安ドル高であった。

ただし、15時に発表された欧州ユーロ圏の最新経済指標のドイツの9月の独卸売物価指数 (WPI) の前月比は前回と同じ0.2%の横ばいで、今夜18時に発表された欧州ユーロ圏総合の8月の欧州貿易収支は、前回よりも上昇していたことでは、ユーロ買い戻しの抵抗もやや混じっていた。

英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は182円7〜13銭付近と、先週金曜17時の182円72〜78銭付近の前東京終値比で約65銭の円高ポンド安であった。

主な要因は、欧州通貨と連動しやすい英国ポンドも、前述のリスク回避のリスクオフで低リスク通貨の円に対して売られていた。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2023年10月16日の日本時間(JST)19時31分(チャート画像の時間帯は、日本から時差で8時間遅れの英国ロンドン外国為替市場の夏時間 (GMT+1 / BST / JST-8) 11時31分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 19:31の為替レート 日本市場前営業日17時の前東京終値時間比
ドル/円 149.57 〜 149.58 -0.07 (円高)
ユーロ/円 157.51 〜 157.53 -0.41 (円高)
ユーロ/ドル 1.0530 〜 1.0532 -0.0022 (ドル高)
英ポンド/円 181.74 〜 181.80 -0.98 (円高)
スイスフラン/円 165.57 〜 165.63 +0.46 (円安)
豪ドル/円 94.57 〜 94.61 -0.11 (円高)


注意:

本ウェブサイトに記載されている全ての情報またリンク先を含めた情報は、情報提供を目的のみとしており、取引投資決定、及びその他の利用目的のために作成されたものではありません。取引投資種、外国為替取引業者の選択、売買価格投資等の全ての最終決定については、利用者ご自身のご判断において行われるようお願い致します。

当社は、当サイトに掲載した情報によって万一閲覧者が被った直接・間接的に生じた損失に関して一切責任を負わないものとします。また、当社および当社に情報を提供している第三者は一切責任を負うものではございませんので ご了承ください。万が一、当サイトの提供情報の内容に誤りがあった場合でも、当社は一切責任を負いません。当社はこのウェブサイトの掲載内容を予告なしに変更または廃止することがございますので、あらかじめご了承おきください。