FXニュース:日銀YCC再修正予想と結果
2023年10月31日東西FXニュース – 2023年10月31日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 1%上限メドの僅かな柔軟化
- 日本のマイナス金利政策維持
- 日銀大規模緩和金融政策継続
- 植田総裁の粘り強い継続発言
- 今月日本の為替介入実績なし
- 米FOMCを控えた持ち高調整
- 2008年以来の円安ユーロ高
今日2023年10月31日火曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時頃までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の高値でドルの安値の149円9銭前後から円の安値でドルの高値の150円34銭前後の値幅約1円25銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は150円31~32銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の149円50~51銭付近の前東京終値比では約81銭の円安ドル高であった。
主な原因は、今日の日本銀行 (日銀 / BoJ) の金融政策決定会合で、日銀の長短金利操作のイールドカーブ・コントロール再修正が「1%の上限を目処とした柔軟化」と僅かな再修正に留まり、市場予想で期待されていたほどの大幅な修正ではなかったことや、日銀の植田総裁の記者会見の発言で「粘り強い」大規模緩和金融政策の継続が意識され、日本の政策金利も現状のマイナス金利政策の維持と、円安要因の日米欧英金利差が残る形となったことで主要通貨に対しての円売りが起き、今夜の英国ロンドン外国為替市場では、今夜19時に今月の日本の為替介入実績がなかったことが発表された後に円売りの勢いが増し、今夜19時5分頃に一時150円75〜76銭付近に円安ドル高が進行している。
今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界FX市場のトレンド動向の分析では、昨夜の欧州英国市場の後半から始まった米国ニューヨーク外国為替市場では、米国主要企業の決算報告期の米国ニューヨーク株式市場で米国主要株価三指数が上昇して始まったことを受けて、リスク選好のリスクオンで安全資産の米国債が売られ、米国債券価格低下に伴う利回りの上昇により米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が一時4.91%台に上昇したため、日米金利差拡大による円売りドル買いが先行し、ドルは円相場で昨夜21時40分頃に一時149円85〜86銭付近の米国市場および日通しの円の安値でドルの高値を記録していた。
しかし、昨夜23時頃に日本経済新聞 (Nikkei) 電子版が、日本銀行 (日銀 / BoJ) の金融政策決定会合の発表を前にしたスクープとして、「日銀、金利操作を再修正へ 長期金利1%超え柔軟に」という記事を発表したものが翻訳されて世界市場でも出回り始めて話題になり、「10月31日に発表予定の日銀金融政策決定会合で、長短金利操作のイールドカーブ・コントロール (YCC) の再修正を議論し、±1%が上限だった日本の長期金利の上限を柔軟化し、一定程度1%を超える金利の上昇を容認する案が有力」という日銀のYCC再修正予想の影響により、日米金利差縮小予想の円買いドル売りが起き始めて円相場が一時急伸し、ドル円が深夜0時27分頃に一時148円80〜81銭付近の米国市場および日通しの円の高値でドルの安値を記録したほか、欧州ユーロや英国ポンドなどの他の主要通貨に対しても円相場が一時急伸した。
市場安値後のドルには買い戻しが入り始めたが、米国ダウ工業株30種平均 (DJI / Dow Jones Industrial Average) が一時580ドル以上も高騰するなど米国主要株価上昇時のリスクオンの安全資産のドル売りで、リスク選好市場に強く先週に欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) 理事会後の欧州ユーロが対ドルで買われた影響の波及がドル円の抵抗要因となったほか、報道を受けてナイトセッションの日経平均株価先物が一時およそ310円の大幅下落を見せたことで低リスク通貨の円買い需要もあり、今週の日米英の金融政策決定会合を控えた世界市場ではイベント前の持ち高調整だけでなく、イベントリスクの様子見や買い控えも入っていたために、米国市場でのドルの買い戻し幅は限られており、午前1時半前頃の149円17銭付近に留まった。
また、米国市場では、今週は米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) が米国の新政策金利と金融政策を決める米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の発表イベントやパウエル議長の発言予定に加えて、米国雇用統計などの最新米国重要経済指標の発表予定などもあり、イベント前の持ち高調整だけでなく、結果が分かるまでのイベントリスクの様子見や買い控えなども入り始めていた。
このため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の安値でドルの高値の149円86銭前後から円の高値でドルの安値の148円80銭前後の値動きで、今朝早朝6時前頃のニューヨーク終値を149円10銭付近と、前営業日同時刻の前ニューヨーク終値比で約56銭の円高ドル安をつけていた。
今朝8時半には日本の最新経済指標の発表があり、9月失業率は前回の2.7%に対し市場予想通りの2.6%に改善され、9月有効求人倍率は前回の1.29と市場予想の1.30に対し前回と同じ1.29の横ばいであった。
9月の日本の小売業販売額は前回の7.0%と前回修正の7.1%と市場予想の5.9%に対し5.8%に低下し、9月の日本の鉱工業生産の速報値も前月比と前年同月比ともに市場予想以下であったことでは、やや横ばいに近い値動きが混ざった。
今朝9時頃に一時149円9〜10銭付近から始まった今日の日本の東京外国為替市場でも、今朝の日本経済新聞の朝刊が「YCC再修正を議論する」と報道しており、今日の昼頃に発表が予定されていた日銀金融政策決定会合を前にした長短金利操作のイールドカーブ・コントロール (YCC) の再修正の市場予想により、日米金利差縮小予想の前日比の円高圏から始まったため、この時間が今日の日本市場の円相場の円の高値でドルの安値となった。
今朝9時55分頃の日本市場の仲値決済では、月末決算の影響もあり、日本企業の輸入実需の円売りドル買いが優勢で、ドルは149円台中盤へと円相場で上昇を始めた。
正午過ぎには、注目の日本銀行 (日銀 / BoJ) の金融政策決定会合の結果発表があり、長短金利操作のイールドカーブ・コントロール (YCC) を再び柔軟化することを賛成多数で決定し、10年物の日本の国債利回りの長期金利について、「1%を上限の目途とした上で、指し値オペによる厳格な金利コントロールから大規模な国債買い入れと機動的なオペ運営で金利操作を行う方式に転換し、1%を超える金利上昇を事実上容認」するとしたものの、長短金利目標は全員一致で据え置きが決定され、日本の短期金利は引き続きマイナス0.1%のマイナス金利政策を維持し、日本の長期金利は10年物国債金利が0%程度で推移するように、上限は設けずに必要な金額の長期債の買い入れを実施するという内容で、以前の長期金利の変動幅の目途を上下0.5%程度という部分は削除されたが、マイナス金利政策の維持と大規模緩和金融政策継続の中での僅かなYCC再修正に留まったことで、市場では日米金利差予想に影響を与えるほどの大幅な修正に至らなかったとの受け止め方から、主要通貨に対する円売りが入り始めて円相場が下落し、正午半頃にドルは円相場で150円台に上昇した。
金利上昇警戒感の緩和から日経平均株価 (Nikkei 225 / JP225) は上昇し、午後15時15分に3万858円85銭の終値と、前営業日比で161円89銭高の大幅高に転じたことでも、日本株高時のリスクオンの低リスク通貨の円売りが入り、ドル円は150円前半で推移した。
午後15時半頃からは、日銀の植田和男総裁の記者会見があり、「物価目標の達成を十分な確度を持って見通せる状況には、尚至っていない」ことから、「粘り強く金融緩和を続ける方針」であると発言し、円売りの勢いが増し、ドルだけでなく欧州ユーロや英国ポンドなどの主要通貨に対する円安が進行し、一時150円34銭付近の今日の日本市場時間の円の安値でドルの高値を記録した。
このため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は150円31~32銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の149円50~51銭付近の前東京終値比で約81銭の円安ドル高になり、その後の英国ロンドン外国為替市場でもさらに円安ドル高が進行していた。
今夜19時に日本政府と日銀の9月28日〜10月27日分の外国為替平衡操作の実施状況が発表され、今月に為替介入警戒感を一気に高めた先日の荒い値動きの時の為替介入の実績が特になかったことから、為替介入警戒感の一時後退も今夜19時台に一時150円75〜76銭付近の円安ドル高を記録した一因になった。
今夜この後には、米国現地時間の11月1日 (時差で日本時間の11月2日未明) に結果発表予定の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の1日目が始まるほか、最新米国経済指標の発表予定などもあり、日本時間の今夜21時半に7〜9月の第3四半期の米国雇用コスト指数、22時に8月のS&Pとケース・シラーなどの米国住宅価格指数、22時45分に 10月の米国シカゴ購買部協会景気指数、23時に10月の米国消費者信頼感指数などが発表されるほか、米国株式市場では決算報告シーズンが続くことなどが注目されている。
一方、欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は159円64〜66銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の157円74〜75銭付近の前東京終値比で約1円90銭の大幅な円安ユーロ高であった。
また、今夜の英国ロンドン外国為替市場では、一時160円台の2008年以来の円安ユーロ高も記録している。
主な要因は、今日の日銀金融政策決定会合の結果を受けた円売りユーロ買いが影響を及ぼしたほか、日米株価上昇によるリスクオンで、今週の米英のイベントと比較してイベントリスクのないユーロが多く買われていた。
ユーロドルも、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0620~1.0622ドル付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の1.0550~1.0551ドル付近の前東京終値比で約0.70セントのユーロ高ドル安だった。
今日の午後15時半に発表された欧州ユーロ圏のフランスの7〜9月の第3四半期の仏国内総生産 (GDP) の速報値は、前期比が前回の0.5%と前回修正の0.6%に対し市場予想通りの0.1%であった。16時のドイツの9月小売売上高の前月比は市場予想以下であったが前回ほどのマイナス圏ではなかった。
ただし、今夜19時に発表された7〜9月の第3四半期の欧州ユーロ圏総合の域内総生産 (GDP)の速報値は、前期比が前回の0.1%と前回修正の0.2%と市場予想の0.0%に対し市場予想以下の-0.1%で、前年同期比も前回の0.5%と市場予想の0.2%を下回る0.1%であったほか、10月の欧州消費者物価指数 (HICP) の速報値も市場予想以下またはコアの市場予想一致の鈍化を見せたことでは、対ドルではユーロ売りの抵抗もやや混ざったが、今週イベントリスクのないユーロはイベント前の対ドルで持ち高調整で買われやすくなっていた。
英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は182円66〜72銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の180円86〜88銭付近の前東京終値比で約1円80銭の大幅な円安ポンド高であった。
主な要因は、今週に英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE / Bank of England) の新政策金利と金融政策の発表予定を控えているなか、日銀の発表を受けた円売りが入り、日本株高時のリスクオンの円売りでも日英金利差予想による英ポンド買いなどが影響した。
今日の東西FXニュース執筆終了時の2023年10月31日の日本時間(JST)20時36分(チャート画像の時間帯は、日本から時差で9時間遅れの英国ロンドン外国為替市場の冬時間 (GMT / JST-9) 11時36分頃。なお、サマータイム制のある欧州英国市場は先週末の10月最後の日曜日から冬時間になり日本との時差が9時間になったが、米国市場は今週末の11月最初の日曜日にサマータイム終了予定で1週間のずれがあることに留意したい) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 20:36の為替レート | 日本市場前営業日17時の前東京終値時間比 |
ドル/円 | 150.68 〜 150.69 | +1.18 (円安) |
ユーロ/円 | 160.59 〜 160.60 | +2.85 (円安) |
ユーロ/ドル | 1.0656 〜 1.0658 | +0.0105 (ドル安) |
英ポンド/円 | 183.61 〜 183.67 | +2.75 (円安) |
スイスフラン/円 | 166.97 〜 167.03 | +1.54 (円安) |
豪ドル/円 | 95.92 〜 95.96 | +0.91 (円安) |
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