FXニュース:日米金利差縮小時の円買い

2023年11月20日
FXニュース:日米金利差縮小時の円買い

 

東西FXニュース – 2023年11月20日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 米利上げ終了予想ドル売り
  • 米長期金利が一時4.3%台
  • 米住宅着工建設許可数上昇
  • 米FRB高官慎重発言の影響
  • 感謝祭を控え持ち高調整も
  • 欧ECB早期利下げ予想後退
  • 英小売売上高減の景気懸念

今日2023年11月20日月曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時頃までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値でドルの高値の149円99銭前後から円の高値でドルの安値の148円69銭前後の値幅約1円30銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は148円95~96銭付近と、前営業日同時刻にあたる先週金曜日17時の150円43~45銭付近の前東京終値比で約1円48銭の大幅な円高ドル安であった。

また、その後の今夜20時台の英国ロンドン外国為替市場では、148円台前半と更に円高ドル安が進行している。

今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界FX市場のトレンド動向の分析はまず、先週金曜日の夜の英国ロンドン外国為替市場では、米国経済指標を受けた米国利上げサイクルの終了予想の高まりの影響などで米国長期金利が一時4.385%付近に低下し、日米金利差縮小時の円買いドル売りの勢いが増したことなどに加えて、欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) 理事会メンバーのドイツ連邦銀行のナーゲル総裁が講演で、欧州インフレ圧の根強さに言及した上で、「十分な期間、高水準を維持する必要があり、その期間を正確に予測することは不可能だが、すぐに終わることはまず、あり得ない」と発言し、「早過ぎるタイミングで欧州利下げを始めるのは、賢明ではない」と指摘したニュースが話題になり、欧州早期利下げ予想を牽制けん制する内容と市場で受け止められたことで、ユーロ買いドル売りの影響も円相場に波及し、ドルは円相場で149円台の大幅な下落を見せ、先週金曜の夜22時頃から土曜の朝7時頃までの先週末の米国ニューヨーク外国為替市場では、先週金曜の夜22時14分頃に一時149円19銭付近の米国市場および日通しの円の高値でドルの安値を記録していた。

ただし、先週金曜の夜22時半に米国市場で発表された最新米国経済指標の10月の米国住宅着工件数は、年率換算件数が前回の135.8万件と前回修正の134.6万件と市場予想の135.0万件に対し137.2万件と前回と市場予想を上回り、前月比も前回の7.0%と前回修正の3.1%と市場予想の-0.6%に対し1.9%と前回ほどではないものの市場予想よりも堅調で、同時発表だった10月の米国建設許可件数も、年率換算件数は前回の147.3万件と前回修正の147.1万件と市場予想の145.0万件に対し148.7万件に上昇し、前月比では前回マイナス圏だった-4.4%と前回修正の-4.5%と市場予想の-1.4%に対しプラス圏の1.1%に上昇と、いずれも市場予想を超えた堅調さを示したことでは、米国長期金利は4.4%台に反発し、ドルの買い戻しの抵抗が入り始めた。

また、先週金曜の夜22時45分頃からの米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) の米国ボストン連銀のコリンズ総裁の発言も、先週11月14日に発表された最新の10月の米国消費者物価指数 (CPI / Consumer Price Index) の鈍化については「最新のインフレ統計には、明るいニュースがあった」としていたが、米国のコアインフレは、依然として米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の目標値よりも高い水準にあり、「まだやるべきことがある」としており、「最近の米国のインフレ状況の進展は歓迎するべき事柄ではあるが、妥当な期間内に米国インフレ率を目標の2%に抑制するためには、忍耐強く、毅然とした態度で臨む必要があり、追加の金融引き締めは除外するべきではない。重要なのは、最後までやり遂げる必要があるということだ」と発言しており、「データは今、とてもノイズも多く、これまでの進展状況には、かなりばらつきがある。我々は忍耐強くあるべきだと思う」と話していたことも、米国市場でのドルの買い戻しに繋がっていた。

米国長期金利は4.46%台付近に向けて再上昇し、ドルは円相場で先週土曜の午前1時43分頃に一時149円87銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値を記録した。

しかし、米国ニューヨーク州で開催されたイベントの公開討議に参加した次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) の銀行監督担当のバー副議長は、「米国のインフレ率を持続的に2%に低下させる上で十分に景気抑制的な金融政策スタンスという点においては、現在はおそらくピークか、それに近いポイントに来ている。最近の経済指標は、それが恐らく正しいという自論を後押ししている」と発言し、金融引き締めが行き過ぎるリスクと、物価上昇圧の抑制が不十分なリスクとのリスクバランスは、一段と均衡してきたと続けたことが報道され始めたことでは、再び米国追加利上げ予想が後退し、米国利上げ終了予想の高まりに加えて、利下げ開始時期に関する市場予想も浮上してきたことによってドルが再び売られ始めた。

また、この日の他の米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官達の発言でも、米国サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁が、米国の経済や見通しを巡る不確実性を踏まえた上で、「待つことへの大胆さ」が必要で、「米国金融政策は緩やかな調整にとどめるべき」という金利据え置き支持とも取れるハト派寄りの発言をしていた。

米国シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は、2%の目標達成に向けて「米国のインフレが軌道に乗るかどうかは、米国住宅価格の動向が極めて重要になる」と発言し、米国の住宅インフレの上昇圧が予想通りに緩和すれば、リセッション (景気後退) を引き起こさずに、インフレ目標の2%達成に向かう道筋とソフトランディング (軟着陸) が可能であると言及し、インフレを巡る状況は最近のデータは改善してきているものの、「依然として高すぎる」ことでは、現在主に注目すべきことは物価であり、現時点では雇用情勢と経済成長を主な焦点にすべきでないなどの見解も示していた。

市場予測値で有名なフェッド・ウオッチ (CME FedWatch Tool) では、来月12月に開催予定の次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) での金利据え置き予想が、以前からも確定値超えの優勢ではあったが、僅かに残っていた次回の米国追加利上げ予想が0%付近に低下したことなどでも米国長期金利が再び下落し、ドルが再び売られ始めた。

また、米国市場では今週11月23日に感謝祭 (Thanksgiving) の祝日ホリデーを控えており、欧米市場もその翌日の24日にブラックフライデー (Black Friday) のクリスマスに向けた買い物シーズンを控えているため、通常の週末に加えたホリデーやショッピング前の利益確定や持ち高調整も影響を及ぼしていた。

このため、先週金曜の夜から土曜の朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値でドルの安値の149円19銭前後から円の安値でドルの高値の149円87銭前後の値動きで、先週土曜日の朝7時頃の先週末のニューヨーク終値を149円63銭付近と、前営業日同時刻の前ニューヨーク終値比で約1円10銭の大幅な円高ドル安をつけていた。

週が明けた今週早朝のオセアニア市場では、時間外の米国債券市場で米国長期金利が一時4.468%付近に下げ幅を縮めていたことなどがあり、ややドルの買い戻しが入ったため、今朝9時頃からの日本の東京外国為替市場では、今朝9時1分頃に一時149円99銭付近の今日の日本市場の円の安値でドルの高値を記録した。

また、今日は20日で日本の貿易企業の決済日が集中しやすい「五十日 (ゴトーび) / ごとおび 」であったことも影響し、今朝9時55分頃の仲値決済の頃までは日本市場で日本企業の輸入実需の円売りドル買い需要があったが、その後には、再び次回の米国金利据え置き予想と米国利上げ終了予想を受けて米国長期金利が低下し、日米金利差縮小時の円買いドル売りが優勢になった。

今日のフェッド・ウオッチ (CME FedWatch Tool) では、来月の次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) での次回の米国追加利上げ予想が0%付近に低下した後に、僅かながらも早期の米国利下げに関する市場予想値が浮上してきたことなどでも、米国長期金利が再び下落し、ドルが再び売られた。

また、今週の欧米市場で米国の感謝祭のホリデーや欧米のブラックフライデーを前にしたドル買いポジションの調整予想に加えて、日本市場でも今週は米国の感謝祭と同日に勤労感謝の日の祝日休場の予定があり、これまでに積もったドル買いポジションの持ち高調整の円の買い戻しが進んだことでも、円相場が上昇した。

今日は日本市場と時間帯の近いアジア市場で、中国人民銀行が実質的な政策金利のローンプライムレート (LPR / 最優遇貸出金利) の1年物を3カ月連続で据え置きしたことを受けた中国人民元に対するドル売りも影響も波及し、13時23分頃にドルは円相場で一時148円69銭付近の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。

今日は東京株式市場で今日の日経平均株価 (Nikkei 225 / JP225) が、今年の7月3日の終値で記録したバブル経済崩壊後の高値の3万3753円を一時上回っていた時にはリスクオン (リスク選好) で低リスク通貨の円が売られる抵抗も入ったのだが、午後には利益確定売りなどで日経平均が大幅な下落に転じたため、低リスク通貨の円が買い戻されたた。

午後からの欧州市場の参入では、先述の欧州中央銀行 (ECB) 理事会メンバーのタカ派寄りの発言の影響を受けたユーロ買いドル売りが先行したが、次第にドル売りで上昇トレンドの円買いが入ったことでも円相場の上昇圧となった。

このため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は148円95~96銭付近で、前営業日同時刻にあたる先週金曜の夜17時の150円43~45銭付近の前東京終値比で約1円48銭の大幅な円高ドル安になった。

今夜この後にも最新米国経済指標の発表予定や米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官の発言予定と米国債入札予定などがあり、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜深夜24時に 10月の米国景気先行指標総合指数、26時頃から米国リッチモンド連銀のバーキン総裁の発言予定、27時の米国20年債入札などが予定されている。

一方、欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は162円61〜63銭付近と、前営業日同時刻にあたる先週金曜日17時の162円95〜96銭付近の前東京終値比で約34銭の円高ユーロ安であった。

主な要因は、前述の主要通貨のドルに対する今日の大幅な円高圧の影響などが、欧州ユーロにも波及していた。

また、今日の午後16時に発表された欧州ユーロ圏主要国ドイツの最新重要経済指標の10月の独生産者 (卸売) 物価指数 (PPI / Producer Price Index) の前月比は、前回の-0.2%と市場予想の0.0%に対し-0.1%と、前回ほどではないが市場予想よりも鈍化を示していた。

ユーロドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0914〜1.0918ドル付近で、先週金曜の夜17時の1.0831〜1.0833ドル付近の前東京終値で約0.83セントのユーロ高ドル安だった。

主な要因は、欧州中央銀行 (ECB) 理事会メンバーの発言を受けて欧州の早期の利下げ予想が後退する中で、米国連邦準備制度理事会 (FRB) には利上げ終了後の利下げ転換時期に関する市場予想が浮上したことなどが影響を及ぼした。

英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンドの円相場の終値は185円79〜85銭付近で、先週金曜日17時の186円27〜33銭付近の前東京終値比で約48銭の円高ポンド安であった。

主な要因は、米国ドルや欧州ユーロなどの主要通貨に対する今日の円高の影響が英国ポンドにも波及したほか、最近の英国インフレ指標の鈍化や景気懸念の英ポンド売りも影響を及ぼしていた。

ただし、今夜この後の27時45分頃からは、英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE / Bank of England) のベイリー総裁の発言予定を控えていることにはやや注意が必要である。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2023年11月20日の日本時間(JST)20時45分(チャート画像の時間帯は、日本から時差で9時間遅れの英国ロンドン外国為替市場の冬時間 (GMT / JST-9) の午前11時45分頃。なお、サマータイム制のある米国市場も現在冬時間で、日本との時差が14時間遅れのJST-14 / GMT-5になっている) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 20:45の為替レート 日本市場前営業日17時の前東京終値時間比
ドル/円 148.24 〜 148.25 -2.19 (円高)
ユーロ/円 161.92 〜 161.93 -1.03 (円高)
ユーロ/ドル 1.0921 〜 1.0923 +0.0090 (ドル安)
英ポンド/円 184.77 〜 184.83 -1.50 (円高)
スイスフラン/円 167.67 〜 167.73 -1.53 (円高)
豪ドル/円 97.09 〜 97.13 -0.21 (円高)


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