FXニュース:米欧英利下げ時期予想の違い
2023年12月15日東西FXニュース – 2023年12月15日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 欧英も政策金利据え置き決定
- 英中銀声明は利上げ余地示唆
- 欧ECBは利下げ議論全くなし
- 欧英よりもハト派の米FOMC
- 来週の日銀金融政策会合控え
今日2023年12月15日金曜日の日本の東京外国為替市場の9時頃から17時頃までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値でドルの高値の142円47銭前後から円の高値でドルの安値の141円56銭前後の値幅約91銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は141円96~97銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の142円3~5銭付近の前東京終値比で約7銭の円高ドル安であった。
今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界FX市場のトレンド動向の分析はまず、昨夜21時の英国ロンドン外国為替市場で英国中央銀行イングランド銀行 (BoE / Bank of England) の金融政策委員会 (MPC / Monetary Policy Committee) が英国政策金利を市場予想通りに前回と同じ5.25%で据え置きを決定し、同時発表の声明と議事要旨では英国利上げの余地が示唆された一方で利下げについては言及しなかったことで、前日に状況次第では米国利上げの選択肢を残しつつも来年3回の利下げが示唆されていた米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Reserve Board) の金利据え置きの方が比較的ハト派寄りであったとして、英国ポンドが買われドルが売られた影響が、対ドル円相場にもドル安圧として波及していた。
続いて、昨夜22時15分には欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) 理事会も欧州政策金利を市場予想通りに前回と同じ4.50%で維持することを発表し、声明でも特に欧州利下げに関する言及がないことから対ドルで欧州英国通貨が上昇しており、その半時間後の昨夜22時45分頃から始まる欧州中央銀行 (ECB) のクリスティーヌ・ラガルド総裁の記者会見の発言に注目を集めながら、欧州英国市場と米国市場が同時進行していた。
一方、昨夜22時30分には米国ニューヨーク外国為替市場で最新米国重要経済指標の11月の米国小売売上高が発表され、前月比は前回マイナス圏だった-0.1%と前回下方修正の-0.2%と市場予想の-0.1%に対し前回と市場予想以上のプラス圏の0.3%に上昇し、自動車を除くコアも前回の0.1%と前回下方修正の0.0%と市場予想の-0.1%に反し0.2%に上昇したほか、同時発表だった最新米国経済指標の前週分の米国新規失業保険申請件数も前回の22.0万件と前回修正の22.1万件と市場予想の22.0万件に対し20.2万件に前回と市場予想よりも改善され、前週分の米国失業保険継続受給者数は前回の186.1万人と前回修正の185.6万人と市場予想の188.7万人に対し187.6万人と前回ほどではないものの市場予想よりも堅調であったことでは、発表後に主要通貨に対してドルが買い戻される抵抗が入り、昨夜22時32分頃にドルは円相場で一時142円28銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値を記録した。
同じく発表されていた最新米国経済指標の11月の米国輸入物価指数の前月比も前回の-0.8%と前回修正の-0.6%と市場予想の-0.8%に対し-0.4%で、11月の米国輸出物価指数の前月比も前回の-1.1%と前回修正の-0.9%と市場予想の-1.0%に対し-0.9%と、市場予想ほどの輸出入物価指数のインフレ鈍化の継続を示さなかったことも、米国連邦準備制度理事会 (FRB) の2%のインフレ目標に近づいた時が米国利下げ開始時期という前日のパウエル議長の発言内容からややドルが買い戻された一因となっていた。
しかし、昨夜22時45分頃からは前述の欧州中央銀行 (ECB) のラガルド総裁の定例記者会見の発言が始まり、前日に米国連邦準備制度理事会 (FRB) のジェローム・パウエル議長が記者団の質問に対し「米国利下げ時期についての議論が始まった」と発言したこととは対照的に、ラガルド総裁は、「欧州利下げについては、まったく議論していない」と発言し、米国よりも欧州政策金利の方が長期間据え置きされるのではないかという市場予想が高まり、対ドルで欧州ユーロが買われた値動きが、対ドル円相場にも波及した。
また、深夜24時に発表された米国商務省の最新米国経済指標の10月の米国企業在庫の前月比が前回の0.4%と前回修正の0.2%と市場予想の0.0%に対し-0.1%に低下し、米国国内総生産 (GDP / Gross Domestic Product) の構成要素の在庫投資減少が今四半期の米国経済成長の足かせとなる可能性を示唆したことなどを受けて、欧州や英国の金利据え置き長期化予想に対する来年の米国利下げ予想でも低下していた米国長期金利が更に低下した。
米国ニューヨーク債券市場では、世界的な安全資産でもある米国債買いの影響もあり、債券価格上昇に伴う利回り上昇が起き、米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が一時3.8835%付近と7月27日以来の低利回りを記録したため、日米金利差縮小時の円買いドル売りに加えて、欧州英国通貨に対するドル下落の影響などもあり、午前1時52分頃にドルは円相場で一時141円40銭付近の米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。
ただし、同時進行していた米国ニューヨーク株式市場では、米国の高金利警戒感の緩和により、米国主要株価三指数が揃って続伸し、特にダウ工業株30種 (DJI / Dow Jones Industrial Average) は大幅に上昇し、米国株高時のブル・マーケット (強気市場 / Bull Market) のリスクオン (リスク選好 / Risk-on) では、市場高値を記録後の低リスク通貨の円の利益確定売りが入りやすくなったため、ドルが円相場で反発する抵抗も混ざり始めたが、前述の欧州ユーロや英国ポンドに対するドル下落圧の影響も残していた。
このため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の安値でドルの高値の142円28銭前後から円の高値でドルの安値の141円40銭前後の値動きで、今朝7時頃のニューヨーク終値は141円89銭付近と前営業日同時刻の前ニューヨーク終値比で約1円0銭の円高ドル安をつけていた。
今朝9時頃から始まった今日の日本の東京外国為替市場では、早朝8時台のオセアニア市場でも安値後のドルの買い戻しが入っていたことや、今朝の日本市場の時間外の米国債券市場で債券価格上昇後の米国債の利益確定売りなどが入ったことで米国長期金利が3.9%台に反発したほか、今日は15日で、日本の貿易企業の決算日が集中しやすい毎月5と10が付く日の「五十日 (ごとおび) 」であったことから、今朝9時55分の日本市場の仲値決済に向けて日本企業の輸入実需の円売りドル買い需要があり、今朝9時39分頃にドルは円相場で上昇し、一時142円47銭付近の今日の日本市場の円の安値でドルの高値を記録した。
しかし、国内輸出企業の円買いドル売りも入り始めたほか、欧州や英国の早期の利下げ転換予想の後退に対し来年複数回の米国利下げ予想により、一時3.96%台に上昇後の米国長期金利が再び3.90%台に向けて低下を始めたことや、国内長期金利が上昇したことで、日米金利差縮小時の円買いドル売りが入ったほか、来週の日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) 金融政策決定会合を控え、今後の日銀の長短金利操作のイールドカーブ・コントロール (YCC / Yield Curve Control) 修正圧なども意識され、イベントを控えた持ち高調整や円の買い戻しなども入り始めて対ドルの円相場が上昇し、午後14時24分頃には対ドル円相場は一時141円56銭付近の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。
また、日本市場と時間帯の近いアジア市場で中国人民銀行 (PBC / People’s Bank of China) が今日の対ドル人民元の売買基準値を前日比で元高ドル安に設定した影響もドル下落圧として対ドル円相場に波及していた。
ただし、今日の東京株式市場で日経平均株価 (Nikkei 225 / JP225) が大幅に上昇したことでは、市場高値を記録後の低リスク通貨の円が売られる抵抗も入り、ドルが反発した。
午後からの欧州市場の参入では、午後16時45分に欧州ユーロ圏のフランスの最新経済指標の発表があり、11月の仏消費者物価指数 (CPI) の改定値は、前月比が前回と市場予想通りの-0.2%の横ばいであったが、前年同月比は前回と市場予想の3.4%に対し3.5%に上昇し、欧州が利上げをまだ議論できない原因の根強い欧州インフレ警戒感が意識されたことでは、米国長期金利の低下もあり、対ドル円相場でのドルの上値は重かった。
このため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は141円96~97銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の142円3~5銭付近の前東京終値比では約7銭の小幅な円高ドル安になった。
前述の欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は156円10〜11銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の154円55〜57銭付近の前東京終値比では約1円55銭の大幅な円安ユーロ高であった。
主な要因は、欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) 理事会が利下げについて議論していないことで、欧州の高金利が長期化する市場予想により、主要通貨に対して欧州ユーロが買われた影響が顕著であった。
このため、ユーロドルも、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0994〜1.0996ドル付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の1.0880〜1.0881ドル付近の前東京終値では約1.14セントの大幅なユーロ高ドル安であった。
なお、今夜の英国ロンドン外国為替市場では、先ほども欧州ユーロ圏の最新経済指標の発表が続き、今夜17時15分に発表されたフランスの12月の仏製造業購買担当者景気指数(PMI / Purchasing Managers’ Index) 速報値が前回の42.9と市場予想の43.3に対し42.0と前回と市場予想よりも低下し、12月の仏サービス部門購買担当者景気指数(PMI) の速報値も前回の45.4と市場予想の46.0に対し44.3と弱く、続いて17時30分に発表されたドイツの12月の独製造業購買担当者景気指数 (PMI) 速報値は前回の42.6と市場予想の43.2に対し43.1と前回よりは改善したものの市場予想以下で、12月の独サービス部門購買担当者景気指数 (PMI) 速報値は前回の49.6と市場予想の49.8に対し48.4に低下、そして18時に発表された欧州ユーロ圏総合の12月の欧州製造業購買担当者景気指数 (PMI) 速報値は市場予想の44.6を下回る前回横ばいの44.2で、12月の欧州サービス部門購買担当者景気指数 (PMI) 速報値は前回の48.7と市場予想の49.0以下の48.1のいずれも不景気寄りの50以下の経済データであったことでは、欧州高金利継続時の欧州景気懸念も浮上していたが、今夜19時に発表された欧州ユーロ圏総合の10月の欧州貿易収支は、季調前が前回の100億ユーロに対し111億ユーロに上昇し、季調済も前回の92億ユーロと前回修正の87億ユーロと市場予想の100億ユーロを上回る109億ユーロに上昇していた。
英国ポンドも、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対英ポンド円相場の終値は181円25〜31銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の179円25〜31銭付近の前東京終値比で約2円0銭の大幅な円安ポンド高であった。
主な要因は、前述の通り、欧州同様に英国政策金利にも利下げに関する言及が特になかったため、米国よりも高金利のまま長期間維持される市場予想により、現在まだマイナス金利解除時期の目処が立っていない日本円に対しても英国ポンドが買われていた。
その後の今夜18時半に発表された最新英国経済指標の12月の英国製造業購買担当者景気指数 (PMI) 速報値は、前回の47.2と市場予想の47.5に対し46.4と弱かったが、同時発表の12月の英国サービス部門購買担当者景気指数 (PMI) 速報値は前回の50.9と市場予想の51.0を上回る好景気側の52.7と強く、欧州PMIに対する英国PMIには強弱入り混じっており、今夜この後の米国PMIの発表予定が注目されている。
今夜この後には、最新米国経済指標の発表予定があり、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜22時半に 12月の米国ニューヨーク連銀製造業景気指数、23時15分に 11月の米国鉱工業生産と米国設備稼働率、23時45分に12月の米国製造業購買担当者景気指数 (PMI) と米国サービス部門購買担当者景気指数 (PMI) と米国総合購買担当者景気指数などが発表される予定である。
今日の東西FXニュース執筆終了時の2023年12月15日の日本時間(JST)20時48分(チャート画像の時間帯は、日本から時差で9時間遅れの英国ロンドン外国為替市場の冬時間 (GMT / JST-9) の11時48分頃。なお、サマータイム制のある米国市場も現在冬時間で、日本との時差が14時間遅れのJST-14 / GMT-5になっている) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 20:48の為替レート | 日本市場前営業日17時の前東京終値時間比 |
ドル/円 | 141.71 〜 141.73 | −0.32 (円高) |
ユーロ/円 | 155.44 〜 155.46 | +0.89 (円安) |
ユーロ/ドル | 1.0966 〜 1.0968 | +0.0086 (ドル安) |
英ポンド/円 | 180.95 〜 181.01 | +1.70 (円安) |
スイスフラン/円 | 163.58 〜 163.64 | +0.67 (円安) |
豪ドル/円 | 95.20 - 95.24 | −0.08 (円高) |
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