FXニュース:日銀総裁のタカ派発言の影響
2024年1月23日東西FXニュース – 2024年1月23日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 日銀想定通り大規模緩和継続
- 国内物価見通し今年下方修正
- 来年の物価見通しは上方修正
- 春以降マイナス金利解除予想
- 「マイナス金利解除後も緩和的」
- 日経平均株価の高騰後の反落
- 米国長期金利反発の買い戻し
今日2024年1月23日火曜日の日本の東京外国為替市場の9時頃から17時頃までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値でドルの高値の148円55銭付近から円の高値でドルの安値の146円97銭付近の値幅約1円58銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円の終値は147円59~61銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の148円6~7銭付近の前東京終値比で約47銭の円高ドル安であった。
今日の為替相場の値動きの主な要因は、今日の日本市場で昼頃に日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) が市場予想通りの大規模緩和金融政策の現状据え置きでの継続決定の発表をした時には主要通貨に対して円が売られて日本市場の安値を記録したが、今日の午後15時半頃からの日銀の植田和男総裁の記者会見の発言では、「物価安定の目標の実現への確度が、少しずつ高まってきている」ことや、賃金上昇を伴う2%のインフレ目標の実現が見通せる状況になれば、「マイナス金利を含めた現在実施している様々な大規模緩和策の継続の是非を検討することになる」とタカ派の発言があったことでは大規模な円買いが起き、円相場は市場高値を記録した。ただし、植田総裁の「マイナス金利を解除しても、極めて緩和的な環境が続く」というハト派寄りの発言もあったことでは、円買いの勢いは弱まった。
世界市場の時間に沿ったFX市場のトレンド動向の分析ではまず、今週の日欧金融政策イベントを控えていた昨夜の英国ロンドン外国為替市場では、欧州市場で今週1月25日に予定されている欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) 理事会の欧州新金利と金融政策発表イベント前の持ち高調整で、安全資産の国債買いでのイベントリスク回避のリスクオフ (Risk-off) により、欧州ユーロ圏主要国のドイツ連邦10年債の利回りが低下した影響の波及があり、米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利も昨夜22時45分頃には一時4.080%付近にまで低下したため、昨夜22時頃から今朝7時前までの米国ニューヨーク外国為替市場では日米金利差縮小時の円買いドル売りが先行し、昨夜22時56分頃に対ドル円相場は一時147円61銭付近の米国市場での円の高値でドルの安値を記録していた。
ただし、米国主要企業の決算報告が続いていた米国ニューヨーク株式市場では、米国主要株価三指数が軒並み上昇し、リスク選好のリスクオン (Risk-on) で債券価格上昇後の米国債が利益確定売りされた影響では米国長期金利が4.11%台方向に向けた反発を始めたため、日米金利差拡大時の低リスク通貨の円の利益確定売りと投資資金を含めたドルの買い戻しでは、ドルは円相場で反発した。
深夜24時に発表された最新米国経済指標の先月12月の米国景気先行指標総合指数の前月比が、前回の-0.5%と市場予想の-0.3%に対し-0.1%に前回よりも市場予想以上に改善されたことでもドルの買い戻しが続き、今朝未明の午前3時30分頃にドルは一時148円14銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値を記録したほか、午前3時55分頃に米国長期金利は一時4.113%付近にまで上昇した。
しかし、来週1月30〜31日に予定されている今月の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) を控えた米国市場では、早期の米国利下げ予想は後退していたが、米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) の総裁や高官達が発言自粛期間のブラックアウト (Blackout) 期間に入っているため、イベントリスクによる早期の持ち高調整が始まり、また、日本市場で今日の正午頃に発表が予定されていた日銀金融政策決定会合の発表イベントを控えた警戒感もあり、安全資産の米国債が再び買われて米国長期金利が4.10%台付近にやや低下したため、ドルの利益確定売りと持ち高調整の低リスク通貨の円買いなどでは円相場も反発した。
今朝までの米国ニューヨーク債券市場では、米国長期金利の指標となる米国10年債の利回りの終値は4.104%と、前営業日比で−0.025%の小幅低下をして終えた。
そのため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値でドルの安値の147円61銭付近から、円の安値でドルの高値の148円14銭付近の値動きで、今朝7時前頃のニューヨーク終値は148円10銭付近と、前営業日同時刻の前ニューヨーク終値の148円12銭付近と比べて約2銭の小幅な円高ドル安をつけていた。
今朝早朝のアジア・オセアニア市場に続いて、今朝9時頃からの今日の日本の東京外国為替市場の対ドル円相場は一時148円14銭付近から始まったが、今朝までの日本の主要貿易先の米国の米国主要株価三指数上昇の影響もあり、今朝の東京株式市場でも日経平均株価が一時はバブル崩壊後の高値圏で推移するという大幅な上昇を見せていたために、ブル・マーケット (Bull Market / 強気市場) 特有のリスク選好のリスクオンで、国内第一安全資産の低リスク通貨の円が売られて円相場がやや下落した。
また、米国ブルームバーグ通信 (Bloomberg) が今朝のニュースで、アジア市場の中国の金融当局関係筋の話として、「中国、2兆元の中国株式市場の安定化策を検討」という、中国当局による低迷中の中国株式市場の救済策で、中国の国有企業が本土以外に持つオフショア口座などから約2兆元 (およそ2785億3千万ドル相当) を原資にした安定化基金を検討していると報道された影響で香港や上海等の中国株価が上昇したため、日経平均株価も一時連れ高になったほか、中国人民元に対する円安圧の影響も他の主要通貨に波及していた。
今日の正午12時過ぎ頃に注目の日銀金融政策決定会合の発表があり、市場予想通りに大規模緩和金融政策継続とマイナス金利の維持を決定したため、サプライズ警戒感の緩和から主要通貨に対して円が売られてドルなどの主要通貨が買われたほか、今年の日本の国内物価見通しが下方修正されたことでも円売りが強まり、今日の昼の12時10分頃にドルは円相場で一時148円55銭付近の今日の日本市場の円の安値でドルの高値を記録した。
ただし、来年の日本の国内物価見通しはやや上方修正されていたことでは、今年の春闘の結果次第では、3月以降に日銀がマイナス金利解除に動くのではないかという市場予想が浮上していたことでは、午後15時半頃から予定されていた日銀の植田和男総裁の記者会見への注目度が増すと共に、いずれは日銀がマイナス金利解除に向かうという市場予想による円の買い戻しなどの持ち高調整が入り始めて、円相場が反発を始めた。
また、今朝は一時大幅に上昇していた日経平均株価が、高値圏からの利益確定売りの影響などもあって午後には大幅に下落して前日比でマイナス圏に転じ、午後15時15分に3万6517円57銭の終値と前日比29円38銭安の小幅安で大引けしたことでも、日本株価のベア・マーケット (Bear Market / 弱気市場) 特有のリスク回避のリスクオフ (Risk-off) による国内第一安全資産の低リスク通貨の円の買い戻しが、ドルなどの主要通貨に対して起きていた。
午後15時30分頃から始まった日銀の植田総裁の定例記者会見の発言では、先述の通り、今後のマイナス金利解除時期などが注目点となり、今年の春闘などの結果を踏まえて、日本の賃金上昇を伴う2%のインフレ目標の実現が見通せる状況になれば、「マイナス金利を含めた現在実施している様々な大規模緩和策の継続の是非を検討することになる」とタカ派発言があったことでは、主要通貨に対する大規模な円買いが起き、午後15時57分頃に対ドル円相場は一時146円97銭付近の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。
ただし、前述の通り、日銀の植田総裁には、その後に、「マイナス金利を解除しても、極めて緩和的な環境が続く」という、大規模緩和金融政策の出口戦略に関しては当面の金融緩和継続を意識させるハト派寄りの発言もあったことでは、円買いの勢いは弱まった。
また、午後からの欧州英国市場の参入後に、時間外の米国債券市場で米国長期金利が再び上昇しており、今夜の英国ロンドン外国為替市場での一時4.13%台付近に向けた上昇を始めたため、植田総裁のタカ派発言後の一時大幅な円高ドル安進行後には日本の国債利回りも上昇したものの、日銀総裁のハト派寄りの発言に加えた実質的な日米金利差によるドルの買い戻しが入り始めて、ドルは円相場で今日の日本市場での一時の下げ幅を縮め始めていた頃に今日17時の東京終値を迎えた。
そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は147円59~61銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の148円6~7銭付近の前東京終値比では約47銭の円高ドル安になった。
今夜この後の米国市場では、最新米国経済指標の発表予定や米国債入札予定があり、日本時間での経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜24時に1月の米国リッチモンド連銀製造業指数の発表と、27時に米国2年債の入札予定があるほか、今夜の米国株式市場の株引け後の時間の予定になるが、米国ネットフリックス (Netflix) の決算報告なども控えている。
一方、今日の欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は161円0〜1銭付近と、昨夜17時の161円34〜35銭付近の前東京終値比で約34銭の円高ユーロ安であった。
主な要因は、今日の日銀総裁会見中のタカ派発言を受けて、日銀の今年3月以降のマイナス金利解除時期に関する市場予想が浮上したことや、イベントリスク終了後の低リスク通貨の円買いが、今週25日の明後日に欧州中央銀行 (ECB) 理事会を控えたイベントリスク目前の欧州ユーロに対する円買いに繋がったほか、今日の日経平均株価の上昇後のマイナス圏への反落を受けたリスクオフでは、低リスク通貨の円に対してリスク市場に弱い欧州ユーロが売られる値動きも観測された。
ユーロドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0907〜1.0909ドル付近で、昨夜17時の1.0896〜1.0898ドル付近の前東京終値比で約0.11セントのユーロ高ドル安であった。
主な要因は、今日の日銀総裁発言を受けた円買いドル売りによるドル下落時の影響が、他の主要通貨であるユーロドルにも波及していた。
ただし、今夜この後の欧州市場では、深夜24時に欧州ユーロ圏の1月の欧州消費者信頼感の発表予定を控えているほか、今週の欧州中央銀行 (ECB) 理事会のイベントリスクに対し、米国連邦公開市場委員会 (FOMC) は来週とイベントリスクへの距離感が違うこともあり、早期の利下げ予想は欧米共に後退しているものの、欧州景気懸念が燻っていることでは、今夜20時台の英国ロンドン外国為替市場では、米国長期金利の反発後の上昇の影響によりドルの買い戻しが入り、小幅なユーロ安ドル高にも転じている。
英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のポンド円相場の終値は188円3〜9銭付近で、昨夜17時の188円7〜13銭付近の前東京終値比で約4銭の小幅な円高ポンド安であった。
主な要因は、今日の日銀総裁のタカ派発言時の主要通貨への一時円高の影響が波及していたほか、日本の国債利回りが上昇した時に債券利回りの日英金利差縮小でも円が買われた影響が見られたが、大規模緩和金融政策の継続のハト派発言を受けては、小幅域に留まった。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2024年1月23日の日本時間(JST)20時36分(チャート画像の時間帯は、日本から時差で9時間遅れの英国ロンドン外国為替市場の冬時間 (GMT / JST-9) の11時36分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 20:36の為替レート | 前営業日JST 17:00の前東京終値比 |
ドル/円 | 147.97 〜 147.98 | -0.09 (円高) |
ユーロ/円 | 160.76 〜 160.78 | -0.58 (円高) |
ユーロ/ドル | 1.0863 〜 1.0865 | -0.0033 (ドル高) |
英ポンド/円 | 187.96 〜 188.02 | -0.11 (円高) |
スイスフラン/円 | 170.15 〜 170.21 | -0.25 (円高) |
豪ドル/円 | 97.34 〜 97.38 | -0.22 (円高) |
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