FXニュース:日銀植田総裁まだ至らず発言

2024年3月01日
FXニュース:日銀植田総裁まだ至らず発言

 

東西FXニュース – 2024年3月1日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 米PCEコア物価指数は想定内
  • 米経済指標ドル売りと買戻し
  • ロンドンフィキシングの反発
  • 米ナズダック史上最高値更新
  • 日銀早期金融正常化予想後退
  • 日経平均株価再び史上最高値
  • 米ISM製造業景況発表を控え

今日2024年3月1日金曜日の日本の東京外国為替市場の9時頃から17時頃までの対ドル円相場の為替レートは、円の高値でドルの安値の150円6銭付近から、円の安値でドルの高値の150円51銭付近の値幅約45銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円の終値は150円49~51銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の149円65~67銭付近の前東京終値比で約84銭の円安ドル高であった。

今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界FX市場のトレンド動向の分析はまず、昨夜22時頃から始まった米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場の始値は一時150円7銭付近であったが、米国ニューヨーク債券市場では米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が、昨夜22時25分頃の一時4.339%付近のピークに向けて上昇中だった日米金利差拡大の影響があり、ドルは円相場で昨夜22時9分頃に一時150円15銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値を記録した。

昨夜22時30分に発表された最新米国経済指標の1月の米国個人所得の前月比は、前回の0.3%と市場予想の0.4%を上回る1.0%上昇したが、同月の米国個人消費支出 (PCE / Personal Consumption Expenditures) の前月比は、前回の0.7%から市場予想通りの0.2%に鈍化した。

より重要度が高い米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) が米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) において米国の新政策金利や金融政策を決める上で注視していることが知られている米国個人消費支出 (PCE) 物価指数デフレーターの前年同月比は、前回の2.6%から市場予想通りの2.4%に鈍化し、食品とエネルギー除いて物価基調を見る米国PCEコア・デフレーターの前年同月比も、前回の2.9%に対し市場予想通りの2.8%に鈍化したことでは、想定範囲内での年内の米国利下げ開始予想が高まったが、米国PCEコア・デフレーターは、前月比では前回の0.2%と前回修正の0.1%に対して米国のインフレの根強さへの警戒感があった市場予想通りの0.4%に上昇し、想定範囲内の結果となった。

また、昨夜22時30分のイベント時間に同時発表された米国雇用市場関連の最新米国経済指標の前週分の米国新規失業保険申請件数は、前回の20.1万件と前回修正の20.2万件と市場予想の21.0万件に対し21.5万件とやや弱く、前週分の米国失業保険継続受給者数も前回の186.2万人と前回修正の186.0万人と市場予想の187.4万人に対し190.5万人に悪化したことを受けては、安全資産の米国債買いが起きて、利回り上昇後の米国長期金利が急落を始めたため、日米金利差縮小時の低リスク通貨の円買いドル売りで、ドルは円相場で下落したほか、主要通貨に対してもドルが売られた。

続いて、昨夜23時45分頃に発表された最新米国経済指標の2月の米国シカゴ購買部協会景気指数も、前回の46.0と市場予想の48.0を下回る44.0と弱く、米国長期金利が更に低下を続けて、主要通貨に対するドル売りが続いたほか、深夜24時に発表された最新米国経済指標の1月の米国住宅販売保留指数は、前月比が前回の8.3%と前回修正の5.7%と市場予想の1.0%を下回るマイナス圏の-4.9%に低下したことに加えて、前年同月比も前回の-1.0%と市場予想の-4.4%を下回る-6.8%と弱く、米国景気懸念による安全資産の米国債買いが続いた影響では、米国長期金利は深夜過ぎには一時4.23%台付近にまで大幅に低下したため、ドルが主要通貨に対して一時全面安になったほか、ドル円も日米金利差縮小時の円買いドル売りの勢いが増し、深夜24時35分頃には一時149円21銭付近の米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。

しかし、後半が同時進行していた英国ロンドン外国為替市場では、この日が現地冬時間で2月末日であったため、日本時間で午前1時頃のロンドン・フィキシング (London Fixing) の値決め時間に向けた基軸通貨のドル買いの月末要因のフロー (Flow) が発生し、ドルが主要通貨に対して大量に買い戻されて円相場でも149円台後半に反発した。

また、深夜24時50分頃から次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国アトランタ連銀のボスティック総裁の発言があり、前述の1月の米国個人消費支出 (PCE) 価格指数のPCEコア・デフレーターの前月比の上昇率が、ここ1年近くで最大となったことを受けて、米国アトランタ連銀主催会議で、「ここ数回発表された米国インフレ指標のデータは、今日公表されたものを含めて、すぐに目標の2%に到達するような進展ではなく、むしろいくらか起伏のある道のりになることを示している」と発言した上で、「その道筋の傾斜は、まだ下向き」であることでは、「このまま行けば、今夏に利下げを開始するのが適切になるだろうというのが、私の見解だ」と述べていた。

一方、米国ニューヨーク株式市場では、最近の世界的なAI関連株ブームの影響もあり、米国主要株価三指数の中でもハイテク株の比率が高い米国ナズダック平均 (NASDAQ Composite) が上昇し、2年3カ月ぶりに史上最高値を更新するなど好調で、米国ダウ (Dow Jones Industrial Average) やS&P500 (Standard and Poor’s 500 Index) を含めた米国主要株価三指数が揃って上昇して終値に向かったことでは、米国株高時のリスク選好のリスクオン (Risk-on) で安全資産の米国債が売られて、一時低下後の米国長期金利が反発したほか、低リスク通貨の円も市場高値後の利益確定売りも相まって売られたため、午前2時29分頃にはドルは円相場で再び一時150円4銭付近と150円台を一時回復していた。

ただし、午前3時15分頃から次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国クリーブランド連銀のメスター総裁の発言があり、先述の1月の米国個人消費支出 (PCE) 価格指数のPCEコア・デフレーターが想定範囲内ではあったものの、前月比では0.4%も上昇し、昨年2023年早期以来で最大の上昇率となったことについて、「米国のインフレ率が、長期的に目標の2%まで鈍化するという私の考えを変えるほどのものではなかったが、我々、米国連邦準備制度理事会 (FRB) にやるべき仕事がもう少しあることを示している」と発言し、以前にメスター総裁が今年2024年におよそ3回の米国利下げの見通しを予想していた時の見解を大きく覆すほどではなかったことを示唆していたことでは、一時150円台に上昇後のドルには利益確定売りの抵抗もあり、再び一時149円台後半に戻すという為替相場の値動きに影響を与えたほか、早期ではないものの年内の米国利下げの可能性が意識されたことでは、米国長期金利の反発も一時4.26%台付近に留まっていた。

このため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の安値でドルの高値の150円15銭付近から、円の高値でドルの安値の149円21銭付近の値幅約94銭で、今朝7時前頃のニューヨーク終値は149円98銭付近と、前営業日同時刻の前ニューヨーク終値の150円69銭付近と比べると約71銭の円高ドル安をつけていた。

今朝8時30分には日本の雇用市場関連の最新経済指標が発表され、1月の日本失業率は前回と市場予想通りの2.4%の横ばいで、1月の日本有効求人倍率も前回と市場予想通りの1.27の横ばいであった。

今朝早朝のアジア・オセアニア市場に続き、今朝9時頃からの今日の日本の東京外国為替市場の対ドル円相場は一時150円7銭付近から始まり、始値直後の9時0分の値動き中に瞬時に一時150円6銭付近の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。

この原因は、今朝早朝に日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) の植田和男総裁が、南米ブラジルのサンパウロで開催された20カ国・地域 (G20) の財務相・中央銀行総裁会議に出席後の記者会見で、昨日に日銀の高田創審議委員が2%の物価安定目標の実現が「ようやく見通せる状況になってきた」と発言していたことに対して、「賃金と物価の好循環が、上手く回り出しているか、確認していく作業を続ける」と慎重な異論を述べたほか、2%の物価安定目標の実現について、「私の考えでは(見通せる状況には)、まだ至っていない」と否定的であったことを受けて、市場では日銀の早期のマイナス金利解除や金融正常化予想が後退し、ドルや主要通貨に対する円売りが起き始めた。

また、今日は3月の月初めであったため、日本企業の輸入実需などの円売りドル買い需要なども影響を及ぼしていた。

さらに、今朝までの米国主要株価三指数上昇の影響を受けて、米国を主要取引先に持つ日本企業の株価も上昇し、今日の東京株式市場では日経平均株価 (Nikkei Stock Average) が反発上昇後に大幅高で推移し、先日2月27日に記録を更新したバブル以来の史上最高値を上回ったため、日米株価上昇を受けたブル・マーケット (Bull Market / 強気市場) では、リスク選好のリスクオンにより、国内第一安全資産の低リスク通貨の円が売られやすくなったことでも、ドルが円相場で150円台での上昇を続けた。

午後14時には日本の最新経済指標の2月の日本消費者態度指数の一般世帯が発表され、前回の38.0と市場予想の38.3を上回る39.1と堅調ではあったものの、今日の日経平均株価の大幅な上昇による低リスク通貨の円売りの他にも、世界的な安全資産でもある米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が一時低下後に反発し、今日の午後の欧州英国市場の参入を受けて、再び一時4.27〜4.28%台方向に向けた上昇を見せ始めていたため、日米金利差拡大による円売りドル買いも加わったことで、夕方17時の東京終値の頃にドルは円相場で一時150円51銭付近の今日の日本市場の円の安値でドルの高値を記録し、前東京終値比で円安ドル高になっていた。

今日の午後15時台に、日経平均株価は史上最高値の記録を更新後にも高値圏で推移し、3万9910円82銭の終値をつけて前日比で744円63銭高の大幅高で大引けしていた。

そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は150円49~51銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の149円65~67銭付近の前東京終値比では約84銭の円安ドル高になった。

今夜この後にも、最新米国重要経済指標の発表予定と、米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官達の発言予定などがあり、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜22時30分頃から次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国リッチモンド連銀のバーキン総裁の発言予定があり、今夜23時45分に2月の米国製造業購買担当者景気指数 (PMI) 改定値、深夜24時に最新米国重要経済指標の 2月の米国ISM (Institute for Supply Management / 全米供給管理協会) 製造業景況指数と、2月の米国ミシガン大学消費者態度指数の確報値と1月の米国建設支出、深夜24時15分頃から同じくFOMC投票権を有するFRBのウォラー理事の発言予定と、同時刻頃から米国ダラス連銀のローガン総裁の発言予定、26時15分頃から次回FOMC投票権を持つ米国アトランタ連銀のボスティック総裁の発言、27時30分頃から同様の米国サンフランシスコ連銀のデイリー総裁の発言予定、27時30分頃から米国カンザスシティ連銀のシュミッド総裁の発言予定、29時30分頃から次回のFOMC投票権があるFRBのクーグラー理事の発言予定などがあり、世界FX市場では今夜の値動き予想材料として注視されている。

一方、今日の欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は162円71~72銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の162円9~11銭付近の前東京終値比で約62銭の円安ユーロ高であった。

主な要因は、先述の今日の日銀植田総裁の発言により、昨日の円買い要因となった日銀の早期の金融正常化予想が後退し、ドルだけでなく欧州ユーロなどの主要通貨に対しても円が利益確定などで売られた影響が、今日の日本市場のユーロ円の為替相場にも影響を及ぼした。

また、今日の日経平均株価が史上最高値を更新後にも、前日比で大幅高の終値で大引けしたリスク選好ムードでも低リスク通貨の円が、欧州ユーロなどに対して売られやすかった。

なお、今日の日本市場終了後の英国ロンドン外国為替市場では、今夜17時50分頃に欧州ユーロ圏のフランスの最新経済紙指標の2月の仏製造業購買担当者景気指数 (PMI / Purchasing Managers’ Index) 改定値が発表され、前回と市場予想の46.8を上回る47.1に上方修正されたほか、続いて今夜17時55分のドイツの2月の独製造業購買担当者景気指数 (PMI) 改定値も前回と市場予想の42.3に対し42.5とやや上回り、今夜18時に発表された欧州ユーロ圏総合の2月の欧州製造業購買担当者景気指数 (PMI) 改定値も前回と市場予想の46.1に対し46.5にやや改善されていた。ただし、先日の米国の同指標は好景気と不景気のボーダーライン (境界線) の50を上回っていた好景気側であったことに対しては、欧州ユーロ圏ではいずれも50を下回る不景気側での小幅な改善となっていた。

一方で、先ほど今夜19時に発表された欧州ユーロ圏総合の最新欧州重要経済指標の2月の欧州消費者物価指数 (HICP / 英語:Harmonised Index of Consumer Prices / 米語:Harmonized Index of Consumer Prices) 速報値は、前年同月比が前回の2.8%から2.6%に鈍化したものの市場予想の2.5%を上回り、欧州HICPコア指数の速報値の前年同月比も、前回の3.3%と市場予想の2.9%に対し3.1%と、前回よりは欧州はインフレ鈍化したものの、市場予想での想定以上の根強さを見せていた。

ただし、同時発表だった欧州ユーロ圏総合の1月の欧州失業率は、前回の6.4%と前回修正6.5%に対し、史上予想通りの6.4%であった。

ユーロドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0811〜1.0813ドル付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の1.0830〜1.0831ドル付近の前東京終値比では約0.19セントのユーロ安ドル高であった。

主な要因は、先述の通り、不景気寄りの欧州景気指標がこれまでに発表されていた好景気寄りの米国景気指標と比較されたことや、今日の夕方には米国長期金利が上昇しており、対円や主要通貨に対するドルの買い戻しがあったことも、ユーロドルの為替相場に影響を及ぼしていた。

英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は190円7〜13銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の189円36〜42銭付近の前東京終値比で約71銭の円安ポンド高であった。

主な要因は、欧州ユーロと同様に、今朝の日銀植田総裁の発言を受けた早期のマイナス金利解除予想の後退や日経平均株価の史上最高値更新により、主要通貨に対して低リスク通貨の円が売られた影響がポンド円にも波及した。

また、今日の午後16時に発表された最新英国経済指標の2月の英国ネーションワイド住宅価格の前月比は、前回の0.7%と市場予想の0.3%に対し0.7%の高止まりを見せていた。

ただし、今夜18時30分に発表された最新英国経済指標の2月の英国製造業購買担当者景気指数 (PMI) 改定値も、欧州同様に前回と市場予想の47.1を上回る47.5に上方修正されたものの、米国比では好景気と不景気の境界の50は下回っていた。

今日の東西FXニュース執筆終了前の2024年3月1日の日本時間(JST)20時35分(チャート画像の時間帯は、日本から時差で9時間遅れの英国ロンドン外国為替市場の冬時間 (GMT / JST-9) の11時35分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 20:35の為替レート 前営業日JST 17:00の前東京終値比
ドル/円 150.40 〜 150.42 +0.75 (円安)
ユーロ/円 162.71 〜 162.72 +0.62 (円安)
ユーロ/ドル 1.0816 〜 1.0818 -0.0014 (ドル高)
英ポンド/円 190.07 〜 190.13 +0.71 (円安)
スイスフラン/円 169.89 〜 169.95 -0.36 (円高)
豪ドル/円 97.83 〜 97.87 +0.38 (円安)


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