FXニュース:米FRB議長インフレ警戒発言
2024年4月17日東西FXニュース – 2024年4月17日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米FRB高官達が長期化に言及
- ドル155円手前の上値抵抗線
- IMF米成長率見通し引き上げ
- 米景気情勢要因のインフレ圧
- 米長期金利上昇一時4.7%付近
- ドル円一時154円79銭を記録
- 1990年以来の円安ドル高続伸
今日2024年4月17日水曜日の日本の東京外国為替市場の9時頃から17時頃までの対ドル円相場の為替レートは、円の安値でドルの高値の154円73銭付近から、円の高値でドルの安値の154円45銭付近の値幅約28銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円の終値は154円60〜62銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時154円39〜40銭付近の前東京終値比で約21銭の円安ドル高であった。
今朝未明の米国ニューヨーク外国為替市場でも、一時154円79銭付近の1990年6月以来のおよそ34年ぶりの今年最大の円安ドル高の記録を再び続伸した。
今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界FX市場のトレンド動向の分析はまず、昨日の日本市場終了後の英国ロンドン外国為替市場でも一時154円70銭付近の円安ドル高が進行していたが、欧州英国市場の後半から始まった昨夜21時頃の米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場の始値は一時154円62銭付近で、昨夜21時30分に発表された最新米国経済指標の3月の米国住宅着工件数は、年率換算件数が前回の152.1万件が前回154.9万件に上方修正されたものの、米国の住宅ローン金利上昇後の影響で市場予想の148.4万件を下回る132.1万件で、前月比も前回の10.7%が前回12.7%に上方修正されたが、米国高金利長期化懸念の市場予想の-2.4%よりも警戒感が強い-14.7%に低下し、3月の米国建設許可件数も、年率換算件数が前回の151.8万件から前回152.3万件に上方修正されたものの、市場予想の151.0万件より減少した145.8万件で、前月比も前回の1.9%が前回2.3%に上方修正されたが市場予想の-0.9%以下の-4.3%に低下したことを受けては、昨夜21時40分頃にはドルは円相場で154円56銭付近に一時低下した。
しかし、昨夜22時頃から次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) のフィリップ・ジェファーソン副議長の発言があり、「今後のデータが持続的なインフレを示唆すれば、現在のインフレ抑制のための米国金融政策スタンスの金利を長期間維持することが適切になる」と発言したため、米国政策金利の高金利の長期化予想による金利先高感で米国ニューヨーク債券市場では米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が今年最高レベルの一時4.695%付近に向けて急上昇し、日米金利拡大による円売りドル買いや、欧州ユーロなどの他に主要通貨に対するドル買いが起き、昨夜22時17分頃にドルは円相場で一時154円77銭付近のこの時点での1990年6月以来の約34年ぶりの今年最大の円安ドル高を再び更新した。
また、昨夜22時頃のニュースでは、国際通貨基金 (IMF / International Monetary Fund) が四半期に1度の世界経済見通しを公表し、2024年の米国の経済成長率の見通しを前回の2.1%から2.7%に引き上げたことから、米国経済の景気要因の米国のインフレ圧も意識されたことも影響を及ぼしていた。
ただし、155円手前付近の高値圏には、日本政府と日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) の為替介入警戒による上値抵抗線のレジスタンスラインが意識されていたことに加えて、バリア・オプションの一種で特定の価格になると自動決済されるノックアウト・オプション (Knock-out Option) も大量に観測されていたため、昨夜22時37〜38分頃にも再び高値圏の一時154円76銭付近で高止まりし始めると、大規模な利益確定売りと自動決済などが同時に起き、為替介入警戒感による利益確定と持ち高調整便やストップロス (SL / Stop Loss) なども巻き込み、ドルは円相場で瞬時急落し、昨夜22時39分頃には対ドル円相場は一時大幅に反発した一時153円89銭付近の米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。
しかし、日米金利差拡大によるドル上昇トレンドの中では、すぐにショートカバー (Short Cover) や押し目買いのドルの買い戻しも入りやすく、ドルも円相場で154円台にすぐに反発して戻し、昨夜23時38分頃にドルが円相場で再び一時154円71銭付近の高値圏になると、昨夜22時52分頃にも再び早期の利益確定売りなどで一時154円41銭付近に下げる抵抗を交えたが、再びすぐにドルは円相場で買い戻されて再反発し、以前と同じ154円台後半に向かうという為替介入警戒時の短期トレードの値動きを見せていたが、値幅的には、実際には154円台後半になっても為替介入が起きなかった様子からは、再びドルは上昇トレンドに戻し始めた。
午前2時15分頃からは、次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官達の中でも市場への影響力が最も大きいことから注目されていた米国連邦準備制度理事会 (FRB) のジェローム・パウエル議長の要人発言があり、「最近のデータは、明らかに我々FRBに (米国利下げ転換のための) 確信を与えるものではなく、むしろ、その確信を得るには予想していたよりも長い時間がかかる可能性が高いことを示している」と発言し、目標の2%への米国インフレ抑制のための「一段の進展の欠如」や、米国雇用統計の上振れを受けた米国労働市場の強さや米国経済や中東情勢などによる米国インフレ圧なども考慮し、「現在の制約的な米国金融政策が、更に時間をかけて効果を発揮することを容認し、データや変化する見通しに対応することが適切」であるとし、現在の経済や物価情勢について、「今までのところ、我々の米国インフレ目標の2%に回帰するための一段の進展を欠いている」ことから、先ほどのジェファーソン副議長と同じ、「米国インフレの高止まりが長期化すれば、現在の高金利政策を長期間維持する可能性がある」ことにも言及したため、発言後に米国政策金利の高金利長期化予想が再燃し、ドルは円相場で再び高騰し、今朝未明の午前2時32分頃に1990年6月以来の今年最大の円安ドル高の記録を更に続伸した一時154円79銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値を記録した。
ただし、米国ニューヨーク株式市場では、主要企業の決算報告シーズンが始まっていたため、米国の高金利長期化の可能性から警戒感もあったことでは、米国主要株価三指数のうち二指数が前日比で小幅安の終値に向かい、安全資産の米国債や低リスク通貨の円が株価下落時にはやや買われる抵抗も混じっていたことでは、米国ニューヨーク債券市場でも、米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利は、一時の安値から買い戻されて米国債価格の小反発に伴う利回り小反落の影響で終値時点では4.669%付近に留まったため、市場高値を記録後のドルにも利益確定売りの小抵抗がやや混ざった。
このため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値でドルの安値の153円89銭付近から、円の安値でドルの高値の154円79銭付近の値幅約90銭の値動きで、今朝6時前頃のニューヨーク終値は154円72銭付近で、前営業日同時刻の前ニューヨーク終値の154円28銭と比べて約44銭の円安ドル高をつけていた。
今朝8時50分には日本の最新経済指標の3月の日本貿易統計が発表され、通関ベースの季調前は前回の-3794億円と前回上方修正の-3778億円赤字に対し市場予想の2999億円を上回る3665億円の黒字で、円安を背景に米国市場で輸出黒字を拡大したが、一方で、3月の日本貿易統計の通関ベースの季調済では、円安による輸入コスト増加の影響などがあり、前回の-4516億円と前回下方修正の-5662億円の赤字に対し、市場予想の-3025億円よりも拡大した-7015億円の赤字であった。
今朝財務省が同時発表した昨年2023年度の貿易統計速報では、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5兆8918億円と3年連続の赤字だったが、輸出額は前年比で3.7%増の102兆8982億円で過去最高を記録しており、半導体不足解消で供給制約が減ったことや、自動車の輸出額が17兆8771億円と30.2%伸び、地域別では米国との貿易収支は円安ドル高による商品競合力の増加や増収により、9兆1356億円の黒字だった。
今朝早朝のアジア・オセアニア市場に続き、今朝9時頃から始まった今日の日本の東京外国為替市場の対ドル円相場の始値は一時154円70銭付近であったが、今朝9時55分の日本市場の仲値決済では、今朝未明にも今年最大の円安ドル高を続伸したこともあり、日本企業の輸入実需の円売りドル買い需要が強く、今朝9時54〜56分に対ドル円相場は一時154円73銭付近で高止まりし、今日の日本市場の円の安値でドルの高値を記録した。
しかし、その後には国内輸出企業の円買いドル売りが入ったことや、今日の東京株式市場で日経平均株価が下落したことを受けた株価下落時のリスク回避のリスクオフ (Risk-off) でも国内第一安全資産の低リスク通貨の円が買い戻されたため、155円手前の高値圏後の早期の利益確定売りや為替介入警戒の持ち高調整の抵抗も混ざり、日本市場主導の時間には日本政府と日本銀行 (日銀 / BoJ) の為替介入のトリガー (引き金) となる「急激な価格変動性のボラティリティ (Volatility) 」に注意した小動きの値動きも見せた。
今日の日経平均株価は、午後15時台には3万7,961円80銭の終値をつけ、前営業日比509円40銭安の大幅安で大引けしたため、リスク回避の低リスク通貨の円の買い戻しが強まった午後15時台の15時12分頃と52分頃と54分頃には、円相場が反発し、一時154円45銭付近の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。
また、この時間には午後からの欧州市場や英国ロンドン外国為替市場の参入もあり、日本市場の時間外の米国債券取引で今朝は一時4.68%台に再上昇していた米国長期金利が、地政学的な中東情勢警戒の燻りの影響もあり安全資産の米国債買いで一時4.65%台付近に上げ幅を縮めていたため、欧州ユーロ買いや英国ポンドに対するドルの利益確定売りの抵抗があったことや、午後15時に発表された最新英国経済指標の3月の英国消費者物価指数 (CPI / Consumer Price Index) も米国同様に市場予想を上振れしたため、世界的に流動性が高いドルから一時英国ポンドが買われた影響も円相場に波及していた。
しかし、日米欧英の金利差トレードでは、再び主要通貨に対して円相場が下げ始め、ドルが円相場で反発して、再び154円台後半に戻した。
また、今日の日本のニュースでは、日韓の財務相が通貨安について、「懸念が深刻」であるという見解を示した報道もあった。
このため、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は154円60〜62銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時154円39〜40銭付近の前東京終値比で約21銭の円安ドル高になった。
なお、今夜20時に発表された米国MBA住宅ローン申請指数は、高金利長期化にも関わらず、前回の0.1%から3.3%に大幅に上昇した。
今夜この後の米国市場では、米国ニューヨーク株式市場で主要企業の決算報告シーズンが続くほか、最新米国経済指標の発表予定や米国債入札予定などもあり、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜23時30分に米国週間原油在庫、27時に米国地区連銀経済報告のベージュブック公表、26時に米国20年債の入札予定、29時に2月の対米証券投資などが発表される予定である。
一方、欧州ユーロは、今夜17時の東京外国為替市場の今日のユーロ円相場の終値は164円27~28銭付近と、日本市場の前営業日同時刻にあたる昨日17時の163円93~95銭付近の前東京終値比で約34銭の円安ユーロ高であった。
主な要因は、昨日に発表された欧州ユーロ圏のドイツなどの最新経済指標に市場予想を上回る指標があったことから、欧州ユーロの買い戻しが起きたことや、日米欧英の金利差の影響を受けて、対ドルでの円安進行の影響が欧州ユーロにも波及した。
ユーロドルも、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0624〜1.0626ドル付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の1.0616〜1.0618ドル付近の前東京終値比で約0.08セントの小幅なユーロ高ドル安にユーロが小反発していた。
ただし、昨夜の米国CNBCテレビのインタビューでは、欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、欧州のディスインフレの過程がECBの見通し通りに進み、大きなショック (劇的変化) がなければ、「制約的な欧州金融政策を緩める時期が近いうちに来るでしょう」と、欧州利下げが近いことを示唆したが、最近は米国よりも早期の欧州利下げ予想は市場で織り込み済みになってきており、最近は年内最大のユーロ安ドル高の進行後であったことからは、市場での反応は限られていた。
その一方で、高値後のドルの利益確定売りや持ち高調整もあり、今日の欧州市場ではドルに対して今夜のインフレ関連の最新欧州重要経済指標発表のイベント前に欧州ユーロを買い戻す抵抗も見られた。
なお、今夜18時に発表されたその欧州ユーロ圏の最新欧州重要経済指標の3月の欧州消費者物価指数 (HICP / 英語:Harmonised Index of Consumer Prices / 米語:Harmonized Index of Consumer Prices) の改定値は、前年同月比が前回と市場予想通りの2.4%で、同欧州HICPコア指数の改定値の前年同月比も前回と市場予想通りの2.9%の横ばいであった。
また、今夜この後の午前3時頃からも、欧州中央銀行 (ECB) のラガルド総裁の要人発言予定がある。
英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は192円54〜60銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の192円3〜9銭付近の前東京終値比では約51銭の円安ポンド高であった。
主な要因は、今日の午後15時に発表された最新英国重要経済指標の3月の英国消費者物価指数 (CPI / Consumer Price Index) は、前月比が前回の0.6%と市場予想の0.4%に対し0.6%と市場予想以上で、前年同月比も前回の3.4%よりは鈍化したものの市場予想の3.1%を上回る3.2%で、同英国CPIコア指数の前年同月比も前回の4.5%と市場予想の4.1%に対し4.2%と、前回の横ばいまたは前回よりはやや鈍化をしても、英国インフレは市場予想を上振れしていたことで、英国のインフレ圧も意識された。
また、同時発表の3月の英国小売物価指数 (RPI / Retail Prices Index) の前月比も、前回の0.8%と市場予想の0.4%に対し0.5%で、前年同月比も前回の4.5%と市場予想の4.2%に対し4.3%と、前回よりもより鈍化を見込んでいた英国の市場予想を上振れしていた。
昨夜の国際通貨基金 (IMF) 主催のイベントでの英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE / Bank of England) のベイリー総裁の発言は、英国インフレ率が低下していることを示す力強い証拠があるとした上で、英国利下げを始める前に、「どの程度の証拠が必要なのかが依然問題である」と発言しており、「英国では、いわゆる完全雇用の状態でディスインフレが進んでいる。そのプロセスが順調に進んでいることを示すために力強い証拠が今、確認されている」と言及し、「金利に関する我々の判断は、プロセスに自信を持つために、今どの程度の確認が必要か』ということ」としていたが、今年の米国と欧州のインフレ動向が異なるため、米国と欧州の中間に位置し、米国独立前の文化共通点がある一方で、地域的には欧州にも近く、時には欧州ユーロの影響を受けやすい英国の今後の金利動向も市場では意識されていた。
その昨夜の発言後に出てきた今日の午後の英国インフレ指標の上振れを受けて、今夜この後の25時頃から英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE) のベイリー総裁の要人発言予定が再びあることにも注意が必要である。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2024年4月17日の日本時間(JST)20時2分(チャート画像の時間帯は、3月最終日曜日から英国夏時間 (BST / British Summer Time) に1時間時差変更され、日本から時差8時間遅れになった英国ロンドン外国為替市場の英国夏時間 (BST / GMT+1 / JST-8) の12時2分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。(なお、米国市場でも3月第二日曜日から米国夏時間 (EDT / Eastern Daylight Time / GMT-4 / JST-13) になっている。)
通貨ペア | JST 20:02の為替レート | 前営業日JST 17:00の前東京終値比 |
ドル/円 | 154.61 〜 154.63 | +0.22 (円安) |
ユーロ/円 | 164.54 〜 164.56 | +0.61 (円安) |
ユーロ/ドル | 1.0641 〜 1.0642 | +0.0025 (ドル安) |
英ポンド/円 | 192.58 〜 192.64 | +0.55 (円安) |
スイスフラン/円 | 169.65 〜 169.71 | +0.38 (円安) |
豪ドル/円 | 99.29 〜 99.33 | +0.22 (円安) |
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