FXニュース:米FRB高官達のタカ派発言

2024年5月21日
FXニュース:米FRB高官達のタカ派発言

 

東西FXニュース – 2024年5月21日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 米高金利長期化予想再意識
  • 米長期金利上昇で日金利差
  • 米ダウ工業株が大幅に反落
  • 日経平均反落でリスク回避
  • 欧6月利下げ予想再び優勢
  • 英BoE副総裁夏利下げ可能

今日2024年5月21日火曜日の日本の東京外国為替市場の9時頃から17時頃までの対ドル円相場の為替レートは、円の安値でドルの高値の156円55銭付近から、円の高値でドルの安値の156円3銭付近の値幅約52銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円の終値は156円20〜21銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の155円71〜72銭付近の前東京終値比で約49銭の円安ドル高であった。

今日の為替相場の値動きの主な要因と、時間に沿った世界FX市場のトレンド動向の分析はまず、昨日の日本市場終了後の英国ロンドン外国為替市場の後半の昨夜21時頃から始まった米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場の始値は一時155円74〜75銭付近であったが、これが昨夜の米国市場での円の高値でドルの安値となり、昨夜20時30分頃から2回に渡っての次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB/ Federal Reserve Board) 高官の米国アトランタ連邦準備銀行のラファエル・ボスティック総裁のタカ派発言があったことが報道されると、米国政策金利の先高観から米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が一時4.454%付近に上昇し、債券利回りの日米金利差拡大を受けて低金利通貨の円を売って高金利通貨のドルを買う金利差トレードの影響で、ドルが円相場で上昇した。

ボスティック総裁は、「現時点での焦点は、米国のインフレ率が目標の2%に向けた明確な軌道に乗っているかどうかをいつ確信できるかということであるが、確実に分かるまでには、しばらく時間がかかる」と発言したほか、「今年これまでのところの米国のインフレ情勢は極めて不安定であるため、もしも米国利下げを開始したとしても、米国政策金利は過去10年間に一般的に慣れ親しまれてきた基準よりも高金利で維持される可能性が高い」とも指摘したため、米国高金利長期化予想が再燃した。

続いて、昨夜22時頃から同じく次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) のマイケル・バー副議長のタカ派発言もあり、「今年第1四半期の米国インフレ指標は、期待外れだった。米国の金融緩和政策の支持に向けて期待したほどの確信を与えてはくれなかった。金融引き締め政策が効果を発揮するには、もう少し時間が必要だ」と言及し、現在の米国政策金利の「現状維持し、状況の推移を見守る」ことを示唆したことでも、米国高金利長期化予想が強まった。

昨夜23時30分頃から始まった次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を有する米国連邦準備制度理事会 (FRB) のフィリップ・ジェファーソン副議長の発言もタカ派寄りで、先日の米国消費者物価指数 (CPI / Consumer Price Index) などのインフレ指標が鈍化を示したことは喜ばしいが、米国のインフレ率が目標の2%に向けて持続可能な軌道に抑制されていくかを判断するには「時期尚早」と発言し、根強い米国の住宅インフレについて、「パンデミック(Pandemic / 世界的大流行)中の大幅な上昇率が、依然として既存の家賃に転嫁されているため、住宅サービスインフレがもうしばらく高止まりする可能性があることを示唆している」データを懸念材料として挙げ、米国の根強いインフレへの警戒感を示しており、他の同僚達と同様に今後の最新データと見通しとリスクバランスとを注意深く評価していくと述べ、年内の米国利下げ時期の見通しなどへの明言を避けていた。

午前1時台には米国サンフランシスコ地区連銀のメアリー・デイリー総裁のタカ派発言もあり、「米国のインフレ率が目標の2%に向けて抑制されていることを、まだ確信できない」とした上で、根強い米国の住宅インフレについて、「家賃のインフレは、遅いベースで改善すると予想されるが、すぐにではないであろう」と同じく長期化を示唆した。

午前3時頃からは、次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国クリーブランド連銀のメスター総裁の発言もあり、「4月の米国消費者物価指数 (CPI) の下振れは良いニュースであったが、米国インフレがどのような方向に向かうかを判断するには時期尚早」と単月だけのデータでは判断できないことを指摘し、「米国インフレ率が、持続的に目標の2%に向かうかどうかを判断するには、インフレに関するより多くのデータを集める必要がある」と長期視野の構えを見せ、米国雇用市場の単月下振れについても、「低失業率を考慮すると、インフレに焦点を当てる余地がある」と、金融政策に影響を与えるほどの低下ではなかったことを示したため、タカ派発言の連続となった。

先日からも次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官達からタカ派発言が相次いでいたことから、米国ニューヨーク債券市場では米国高金利長期化予想により米国長期金利が4.45%台付近で高止まりを続けたため、日米金利差拡大による円売りドル買いの影響が続き、午前4時56分頃にドルは円相場で一時156円30銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値を記録したことに加えて、午前5時17分と5時35分と5時40〜41分と5時43〜45分頃にも同じ高値圏で高止まりを見せた。

ドルが円相場で高止まりを見せながらも高値を上抜けしなかった一因は、前日には米国主要企業の決算報告シーズンの影響を受けて終値ベースで史上初の4万ドル台の高値を更新した米国主要株価三指数の米国ダウ工業株30種株価指数 (Dow Jones Industrial Average index) が、相次ぐ米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官達のタカ派発言を受けた米国高金利長期化予想により、企業への貸付ローン金利コスト負担などが市場予想以上に高止まりをすることで、今後の決算や株価に影響を与えることが警戒されたため、利益確定や持ち高調整の株売りで反落し、3万9,806ドル77セントの終値と前営業日比で196ドル82セント安の大幅安になったことで、株価下落時の低リスク通貨の円買いが抵抗になっていた。

ただし、米国主要株価三指数の中でも国際的なハイテク企業比率の高い米国ナズダック総合株価指数 (NASDAQ Composite index) は大幅な上昇を続けたほか、米国S&P500種 (Standard and Poor’s 500 index) 株価指数も小幅高であったことでは、リスク回避姿勢が一部の株価下落に限定されたことでは、ドルは下げ止まって高止まりを見せていた。

米国ニューヨーク債券市場でも、安全資産でもある米国10年債の利回りは終値時点でも4.445%であった。

このため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値でドルの安値の155円74銭付近から、円の安値でドルの高値の156円30銭付近の値幅約56銭の値動きで、今朝6時頃のニューヨーク終値は156円26銭付近と、前営業日同時刻の前ニューヨーク終値の155円65銭と比べて約61銭の円安ドル高をつけていた。

早朝のアジア・オセアニア市場に続き、今朝9時頃から始まった今日の日本の東京外国為替市場の対ドル円相場の始値は一時156円40銭付近であったが、今朝早朝までの米国市場のトレンドを受け継いだ米国高金利長期化予想による米国長期金利上昇で再び一時4.454%付近に向けた日米金利差拡大が起きたため、低金利通貨の円を売り高金利通貨のドルを買う金利差トレードの円売りドル買いの影響が続いたことに加えて、今朝の日本市場の仲値決済でも日本企業の輸入実需の円売りドル買いが優勢であったため、昼の13時15分頃にはドルは円相場で一時156円55銭付近の今日の日本市場の円の安値でドルの高値を記録した。

しかし、昨日の午後に続き、今日も日本の新発10年物の国債利回りが指標となる国内長期金利が上昇し、昨年2023年11月の日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) の日銀金融政策決定会合で長短金利操作のイールドカーブ・コントロール (YCC / Yield Curve Control)が再修正された時の水準を上回った0.975%付近の前終値を超え、0.980%付近の終値をつけたことでは、日銀 (BoJ) の追加利上げの可能性が意識されていたため、東京株式市場では金利上昇による企業決算への影響の警戒感が高まり、今朝は前営業日比で一時は大幅に上昇していた日経平均株価が午後に反落し、午後15時台に日経平均株価が3万8,946円93銭の終値と、前営業日比で122円75銭安と大幅安で大引けしたため、日本株価下落時のリスク回避のリスクオフ (Risk-off) で国内第一安全資産の低リスク通貨の円が買い戻されて円相場が反発し、世界的な安全資産でもある米国債も買われたため、債券価格上昇に伴う利回り低下の影響で米国長期金利が午後16時20分頃に一時4.435%付近に低下すると、債券利回りを受けた日米金利差縮小時の円の買い戻しが午後から参入の欧州英国市場でも入り、午後16時20分頃に対ドルの円相場は一時156円3銭付近にまで反発して下げ幅を縮めた。

しかし、今夜17時頃には米国長期金利は一時4.439%付近に一時反発し、その後には再び一時4.427%付近に向けた低下を債券利回りでは見せ始めたが、米国高金利長期化予想による米国政策金利の先高観は続いていたことでは、ドルも円相場で反発した。

このため、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は156円20〜21銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日の夜17時の155円71〜72銭付近の前東京終値比で約49銭の円安ドル高になった。

今夜この後の米国市場でも、特に注目度が高い最新米国経済指標の発表予定はないものの、次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官達の発言予定が続き、日本時間の経済カレンダーのスケジュールは、今夜22時頃から次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) のウォラー理事と米国リッチモンド連銀のバーキン総裁の発言予定、22時5分頃から米国ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁の発言予定、22時10分頃から米国アトランタ連銀のボスティック総裁の発言予定、深夜24時45分頃からバー副議長の発言予定があり、以上の高官達は全員が次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持っているメンバーであることから市場予想に影響を与える可能性がある。また、米国株式市場や債券市場などからの為替相場への影響にも、引き続き注意が必要である。

一方、欧州ユーロは、今夜17時の東京外国為替市場の今日のユーロ円相場の終値は169円70〜72銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の169円31〜32銭付近と比べると約39銭の円安ユーロ高であった。

主な要因は、前述の今朝までの米国長期金利の上昇圧を受けて、欧州国債市場でも指標銘柄のドイツ連邦10年債の利回りが上昇し、日欧金利差トレードの円売りユーロ買いが影響を及ぼしていた。

ユーロドルは、今夜17時の東京外国為替市場の終値は1.0863〜1.0865ドル付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の1.0872〜1.0874付近と比べると約0.09セントのユーロ安ドル高であった。

主な要因は、昨夜の英国ロンドン外国為替市場では、欧州中央銀行 (欧中銀 / ECB / European Central Bank) 高官達のハト派発言を受けた6月の欧州利下げ開始予想が燻っており、その一方で米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官達からはタカ派発言が相次いだため、米国長期金利上昇による欧米金利差を受けたドル買いユーロ売りの影響あったほか、今日の日本市場の午後15時に発表された欧州ユーロ圏主要国ドイツの最新経済指標の4月の独卸売 (生産者) 物価指数 (PPI / Producer Price Index) の前月比は市場予想の0.3%を下回る前回と同じ0.2%であったことなどでも、欧州の利下げ開始時期の方が米国よりも早くなることが市場予想で意識されていた。

ただし、東京終値と同時刻の今夜17時頃からは欧州中央銀行 (ECB) のクリスティーヌ・ラガルド総裁の発言予定があったため、東京終値時点では発言内容は伝わっていないものの、先述の夕方の安全資産の米国債買いの影響で米国長期金利が一時低下したため、イベント前の持ち高調整で欧州ユーロの買い戻しがあったことなどでは小幅域になっていた。

なお、今夜17時に発表された欧州ユーロ圏総合の最新欧州経済指標の3月の欧州経常収支の季調済は、前回の295億ユーロと前回修正の289億ユーロから358億ユーロに上昇したが、今夜18時の3月の欧州貿易収支の季調済は前回の179億ユーロが前回167億ユーロに下方修正され、市場予想の200億ユーロ以下の173億ユーロに低下した。

同時発表だった3月の欧州建設支出は、前月比では前回の1.8%と前回下方修正の0.4%に対し0.1%に低下したが、前年同月比は前回の-0.4%と前回下方修正の-1.8%を上回る0.1%と強弱混合であった。

英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は198円56〜62銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の197円67〜73銭付近と比べると約89銭の円安ポンド高であった。

主な要因は、欧州ユーロ同様に、英国債の利回りも欧米長期金利上昇の連れ高になった影響で、日英金利差拡大時の円売りポンド買いの影響があったほか、ドルや欧州ユーロなどの他の主要通貨に対して低金利通貨の円が売られた影響もポンド円に波及した。

ただし、昨夜の英国ロンドン外国為替市場では、英国中央銀行のイングランド銀行 (英中銀 / BoE / Bank of England) のベン・ブロードベント副総裁が、今後数カ月中に英国利下げが実施される可能性を示唆しており、「英国金融政策がある時点でこれまでより制約的ではなくなるという予想通りに今後も状況が進展すれば、今夏の間に政策金利が引き下げられる可能性がある」とハト派発言をしていたことは英国ポンドの上値を抑えたが、ブロードベント副総裁は来月6月末で退任する予定であった。

今日の東西FXニュース執筆終了前の2024年5月21日の日本時間(JST)19時20分(チャート画像の時間帯は、3月最終日曜日から英国夏時間 (BST / British Summer Time) に1時間時差変更され、日本から時差8時間遅れになった英国ロンドン外国為替市場の英国夏時間 (BST / GMT+1 / JST-8) の11時20分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。(なお、米国市場でも3月第二日曜日から米国夏時間 (EDT / Eastern Daylight Time / GMT-4 / JST-13) になっている。)

通貨ペア JST 19:20の為替レート 日本市場前営業日JST 17:00の前東京終値比
ドル/円 156.10 〜 156.11 +0.39 (円安)
ユーロ/円 169.69 〜 169.71 +0.38 (円安)
ユーロ/ドル 1.0869 〜 1.0871 -0.0003 (ドル高)
英ポンド/円 198.55 〜 198.61 +0.88 (円安)
スイスフラン/円 171.69 〜 171.75 +0.54 (円安)
豪ドル/円 104.15 〜 104.19 -0.08 (円高)


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