FXニュース:地政学リスク回避後調整
2024年11月20日東西FXニュース – 2024年11月20日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 露外相「核戦争起きない」
- 国際原子力機関伊蘭合意
- 米長期金利反落後の反発
- 低リスク通貨円利益確定
- 日本の貿易赤字額が増加
- 五十日決済の輸入円売り
- 欧英通貨の買い戻し影響
今日2024年11月20日水曜日の日本の東京外国為替市場の今朝9時頃から今夜17時頃までの対ドル円相場の為替レートの値動きは、円の高値でドルの安値の154円58銭付近から、円の安値でドルの高値の155円70銭付近の値幅約1円12銭で、今夜17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は155円65〜67銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の154円50〜51銭付近の前東京終値比では約1円15銭の大幅な円安ドル高であった。
また、日本市場終了後の今夜18時31分頃の英国ロンドン外国為替市場では、米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が一時4.431%付近に上昇し、債券利回りを受けた日米金利差拡大時の金利差トレードの低金利の円売りと高金利のドル買いの影響で、ドルは円相場で一時155円85銭付近に上昇幅を広げている。
今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界外国為替証拠金取引 (FX / Foreign Exchange) のマーケット・トレンドの動向と分析はまず、昨夕の日本市場終了後の英国ロンドン外国為替市場では、日本市場終了後の海外市場をターゲットとした為替介入警戒感が燻っていた中で、米国供給の長距離地対地ミサイルのATACMS (Army Tactical Missile System / エイタクムス) の使用許可を得たウクライナが初めてロシア領内への攻撃を実施したというウクライナ情勢のニュースを受けた地政学リスク回避の影響で、世界的な安全資産である米国債が買われて米国債券価格上昇に伴う利回り低下が起き、米国10年債の利回りとなる米国長期金利が急落したため、債券利回りを受けた金利差トレードの日米金利差縮小時の円買いドル売りが起きたほか、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が核抑止力の国家政策指針を定めた核ドクトリンの改定を承認して核兵器使用基準を緩和していたというニュース報道も話題になったことでも警戒感が高まり、ウクライナと地理的に近い欧州市場で欧州ユーロと英国ポンドが低リスク通貨の円に対して売られた影響も対ドル円相場に波及し、昨夜17時42分頃にドルに対して円相場は一時153円27銭付近に上昇していた。
しかし、一部のニュース続報では、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務相が、「ロシアの核ドクトリンは、米国と変わらない」ことや、ロシアは「核戦争を起こさない立場である」と指摘していたことなどが伝わり始めていたことでは、低リスク通貨の円の利益確定売りやドルの買い戻しも入り始めてドルは円相場で反発を始め、昨夜18時25分頃には安全資産買いの影響で一時4.351%付近に低下した米国10年債の利回りが指標の米国長期金利も反発して下げ幅を縮めて昨夜21時45分頃には米国長期金利が一時4.380%付近に戻したことから、昨夜21時48分頃にはドルは円相場で一時154円21銭付近に反発していた。
欧州英国市場の後半にあたる昨夜22時頃から始まった米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は一時153円97銭付近の始値であったが、昨夜22時30分に発表された最新米国経済指標の10月住宅着工件数は、年率換算件数が前回の135.4万件と前回下方修正の135.3万件と市場予想の133.5万件を下回る131.1万件に減少したほか、前月比も前回-0.5%と前回下方修正の-1.9%と市場予想の-1.4%を下振れする-3.1%に低下し、10月建設許可件数も、年率換算件数が前回の142.8万件と前回下方修正の142.5万件と市場予想の143.5万件を下回る141.6万件で、前月比では前回の-2.9%と前回下方修正の-3.1%よりは下げ幅を縮めた-0.6%であったが、市場予想の0.7%には届かないマイナス圏に留まっていたため、市場予想以下の米国経済指標でも再び安全資産の米国債が買われた影響では、昨夜22時45分頃に米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利は一時4.348%付近にまで再低下し、債券利回りを受けた日米金利差トレードの円買いドル売りの影響で、昨夜22時59分頃にドルは円相場で一時153円40銭付近と米国市場の円の高値でドルの安値を記録したが、先述の欧州英国市場の地政学リスク回避で記録していた一時153円27銭付近に達する前には反発を始めた。
また、米国ニューヨーク株式市場でも、ニュース続報で「米国政府は、ロシアの核ドクトリンに反応しない方針」などの和平方向の報道があったことも意識され、一時の地政学リスク回避のリスクオフ (Risk-off) では欧米株式市場で株価が一時急落した影響からマイナス圏から始まっていた米国主要株価三指数のうち、米国利下げペース鈍化予想の影響では米国政策金利の先高観に警戒感して元から続落トレンドであった米国ダウ工業株30種平均 (Dow Jones Industrial Average) は続落したものの、一時のウクライナ情勢のロシアの核兵器使用懸念がやや緩和された地政学リスク回避後の調整では、米国ダウが一時の大幅な下げ幅を縮小し始めたほか、同じく地政学リスク回避で一時反落し市場前半にはマイナス圏から始まっていた米国S&P 500種株価指数 (Standard and Poor’s 500 index) と米国ナズダック総合株価指数 (NASDAQ Composite) は反発後にプラス圏に転じ上昇したため、安全資産の米国債には米国債券価格上昇後の利益確定売りや持ち高調整が入り始めて米国10年債の利回りが指標の米国長期金利は再び反発し、米国ニューヨーク債券市場の終盤には一時4.398%付近と4.4%台手前に上昇し、低リスク通貨の円の利益確定売りや債券利回りを受けた日米金利差の円相場でのドルの買い戻しが入り、ドルは円相場で反発した。
午前3時頃には、ロシアの核兵器使用への警戒感の緩和のニュースに続き、国際原子力機関 (IAEA / International Atomic Energy Agency) の発表があり、イランが核兵器級に近いウランの生産停止に合意し、イランと核施設へのIAEAの査察官の受け入れに合意したと報じられたことで、世界情勢を受けた核兵器の脅威に対する市場のリスク回避トレンドが更なる緩和に向けたことでも、安全資産の米国債や低リスク通貨の円が利益確定や持ち高調整で売られたため、午前3時5分と7分頃にドルは円相場で一時154円80銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値を記録し、午前3時6分と27分頃にも一時154円79銭付近と高値圏で高止まりを見せた。
今日の市場に向け、米国政策金利のフェデラル・ファンド (FF / Federal Funds) レートの市場予想値を算出する米国シカゴ・マーカンタイル取引所 (CME / Chicago Mercantile Exchange) グループのフェドウオッチ (FedWatch) ツールでは、来月12月17〜18日に開催が予定されている次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Reserve Board) における米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) の米国利下げ幅の市場予想値は、0.25%の米国小幅利下げ予想値が今日は一時59.1%付近で、次回の米国金利据え置き予想値は一時40.9%付近に上昇しており、米国政策金利の先高観が地政学リスク緩和時の米国長期金利の上昇とドルの買い戻しに影響を及ぼしており、ドルは円相場での下げ幅を回復していた。
このため、昨夜22時頃から今朝7頃までの米国冬時間の米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値でドルの安値の153円40銭付近から、円の安値でドルの高値の154円80銭付近の値幅約1円40銭で、今朝7時頃のドル円のニューヨーク終値は154円66銭付近と、前営業日同時刻の前ニューヨーク終値の154円66銭付近と同価格の横ばいレンジ圏であった。
今日の早朝のアジア・オセアニア市場時間の今朝8時50分には、日本の最新経済指標の10月の日本貿易統計の発表があり、通関ベースの季調前は前回の-2943億円と前回上方修正の-2941億円と市場予想の-3604億円に対し-4612億円と赤字額が増え、通関ベースの季調済でも前回の-1872億円と前回下方修正の-2746億円と市場予想の-1467億円に対し-3577億円と赤字額が増加していた。
そのため、今朝9時頃から始まった今日の東京外国為替市場の対ドル円相場は一時154円71銭付近の始値と今朝早朝のニューヨーク終値時点よりも円安ドル高から始まり、今朝9時10分頃の一時154円58銭付近が今日の日本市場の円の高値でドルの安値となり、その後にはドルは円相場で上昇を続けた。
今朝9時55分頃の日本市場の仲値決済に向けては、今日は20日で日本の貿易企業の決済日が集中しやすい5と10が付く日の五十日 (ごとおび / ゴトーび) であったことから、日本企業の輸入実需の円売りドル買い需要が優勢であった。
また、今日の日本市場時間の時間外の米国債券市場で今朝9時頃に米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利は一時4.403%付近と4.4%台に再上昇して始まったことに続き、抵抗を交えながらも高利回りで推移し、市場終盤の東京終値時点には一時4.427%付近にまで上昇した債券利回りの日米金利差の影響が大きかった。
ただし、東京株式市場では、今朝は一時プラス圏から始まっていた今日の日経平均株価が、午前10時過ぎには反落してマイナス圏に転じて一時は大幅安となった影響では、日本株価下落時のリスク回避のリスクオフで国内第一安全資産の低リスク通貨の円が買われる抵抗となったが、午後の株式市場の終盤には下げ幅を縮小して小幅安に向けたことでは、午後15時30分に今日の日経平均株価は3万8352円34銭の終値をつけ、前日比62円9銭安の小幅安で大引けし、低リスク通貨の円の買い戻しの抵抗は限定的なものとなり、債券利回りを受けた日米金利差拡大時の低金利通貨の円売りと高金利通貨のドル買いの影響でドルは円相場で155円台に上昇した。
夕方からの欧州市場と英国ロンドン外国為替市場の参入では、前述の米国長期金利の上昇を受けた日米金利差拡大時の円売りドル買いと、昨夜の地政学リスク回避で欧州通貨から買われた低リスク通貨の円が持ち高調整で売られたほか、午後16時に発表された最新英国インフレ指標の10月の英国消費者物価指数 (CPI / Consumer Price Index) の上振れを受けて、英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE / Bank of England) の英国利下げペースにも鈍化予想が高まったことで、英国ポンドに対しても低金利通貨の円が売られた外貨影響の波及もあり、英国冬時間の英国市場の本格参入時の今夜17時0分の東京終値に向かう1分間の値動きの中で瞬時に記録した一時155円70銭付近が今日の日本市場の円の安値でドルの高値となり、前東京終値比で大幅な円安ドル高となっていた。
このため、今夜17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は155円65〜67銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の154円50〜51銭付近の前東京終値比では約1円15銭の大幅な円安ドル高になった。
今日の日本市場終了後の今夜18時31分頃の英国ロンドン外国為替市場では、米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が一時4.431%付近に上昇し、債券利回りを受けた日米金利差拡大時の円売りドル買いの影響で、ドルは円相場で一時155円85銭付近に上昇幅を広げた後にも高値圏で高止まりし、今夜21時3分頃には一時155円88銭付近にも上抜けている。
今夜この後の米国市場では、最新米国経済指標の発表予定と次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国連邦準備制理事会 (FRB) の高官達の発言予定と米国債券入札予定などがあり、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは、深夜24時頃から次回のFOMC投票権を持つFRBのマイケル・バー副議長の発言予定と、深夜24時30分に米国週間原油在庫、25時頃から同じくFOMC投票権を有するFRBのリサ・クック理事の発言予定、26時15分頃から同様にFOMC投票権保有のFRBのミシェル・ボウマン理事の発言予定と、27時に米国20年債の入札予定を控えている。
また、今夜この後の米国ニューヨーク株式市場の株引け後の明日の朝6時20分頃になると株主達には伝えられているが、世界的な人工知能 (AI / Artificial Intelligence) 半導体大手の米国エヌビディア (NVIDIA) 社の決算報告予定には、日本市場からも注目が集まる。
加えて、債券や株式とコモディティなどの市場影響や、世界の政治要因やウクライナや中東などの世界情勢の為替相場への影響にも引き続き注意が必要である。
一方、欧州ユーロは、今夜17時の東京外国為替市場の今日のユーロ円相場の終値は164円66〜67銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の163円45〜46銭付近と比べると約1円21銭の大幅な円安ユーロ高であった。
主な要因は、昨夜のロシアとウクライナ情勢の地政学リスク回避で買われた低リスク通貨の円の利益確定売りや持ち高調整で欧州ユーロが買い戻されたほか、米国長期金利上昇による債券利回りの日米金利差拡大を受けた低金利通貨の円売りと高金利通貨のドル買いで大幅な円安ドル高となった外貨影響もクロス円に波及したことから、ユーロ円も前日比で大幅な円安の東京終値をつけていた。
ユーロドルは、今夜17時の東京外国為替市場の終値は1.0577〜1.0579ドル付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の1.0578〜1.0580付近と比べると約0.01セントの小幅なユーロ安ドル高であった。
主な要因は、米国長期金利上昇を受けた主要通貨に対するドル買いの影響が波及したが、欧州ユーロの買い戻しも入っていたことでは小幅域の東京終値となった。
英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のポンド円相場の終値は197円60〜66銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日の夜17時の195円85〜91銭付近と比べると約1円75銭の大幅な円安ポンド高であった。
主な要因は、前述の通り、今日の夕方16時に発表された最新英国経済指標の10月の英国消費者物価指数 (CPI / Consumer Price Index) が市場予想を上振れし、前月比は前回の0.0%と市場予想の0.5%を上回る0.6%に上昇したほか、前年同月比も前回の1.7%と市場予想の2.2%を超える2.3%で、同10月の英国CPIコア指数の前年同月比も前回の3.2%と市場予想の3.1%を上回る3.3%に上昇し、英国中央銀行のイングランド銀行 (英中銀 / BoE / Bank of England) の英中銀金融政策委員会 (MPC / Monetary Policy Committee) の英国利下げペースにも鈍化予想が高まり、日英金利差予想の円売りポンド買いが起きた。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2024年11月20日の日本時間(JST)21時8分(チャート画像の時間帯は、10月最終日曜日に英国夏時間が終了し、来年3月最終日曜日まで日本から時差9時間遅れの英国冬時間の標準時間 (GMT / Greenwich Mean Time) になった英国ロンドン外国為替市場の英国冬時間 (GMT / JST-9) の12時8分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。なお、米国市場も11月の第1日曜日から来年3月の第2日曜日は米国冬時間 (EST / Eastern Standard Time / GMT-5 / JST -14) にあたるため、2024年11月3日に米国サマータイム (EDT / Eastern Daylight Time / GMT-4 / JST-13) の米国夏時間も終了し、現在の世界市場では欧州市場と英国市場と共に米国市場も冬時間で日本との標準時差となっている。
通貨ペア | JST 21:08の為替レート | 日本市場前営業日JST 17:00の前東京終値比 |
ドル/円 | 155.83 〜 155.84 | +1.33 (円安) |
ユーロ/円 | 164.48 〜 164.50 | +1.03 (円安) |
ユーロ/ドル | 1.0554 〜 1.0556 | −0.0024 (ドル高) |
英ポンド/円 | 197.38 〜 197.44 | +1.53 (円安) |
スイスフラン/円 | 175.96 〜 176.02 | +1.20 (円安) |
豪ドル/円 | 101.30 〜 101.34 | +0.73 (円安) |
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