FXニュース:日米関税交渉の為替影響
2025年4月16日
東西FXニュース – 2025年04月16日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 中米関税報復で米株反落
- 欧米関税交渉未進展報道
- 日銀米関税政策的対応も
- 日米株価下落リスク回避
- 米小売売上高とFRB発言
- 明日の欧ECB発表を控え
今日2025年4月16日水曜日の日本の東京外国為替市場の今朝9時頃から今夜17時頃までの対ドル円相場の為替レートの値動きは、円の安値でドルの高値の143円18銭付近から、円の高値でドルの安値の142円4銭付近の値幅約1円14銭で、今夜17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は142円14銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の143円22銭付近の前東京終値比では約1円8銭の大幅な円高ドル安であった。
今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界外国為替証拠金取引 (FX / Foreign Exchange) マーケット・トレンドの動向と分析はまず、昨日の日本市場終了後の欧州市場と英国ロンドン外国為替市場では、昨夜17時頃のニュースで中国政府が国内航空会社に米国ボーイング航空機の供給停止を指示したという報道を受けて、米国ボーイング社の株価先物が急落したほか、米国ダウ先物も反落するなど米中貿易摩擦の警戒感が再燃し、ドルが低リスク通貨の円に対して売られて下落し、昨夜18時26分頃の対ドル円相場は一時142円68銭付近と、前東京終値比で円高ドル安に転じていた。
しかし、欧州市場で昨夜18時に発表された欧州ユーロ圏総合の最新経済指標の4月欧州ZEW景況感調査が前回プラス圏の39.8からマイナス圏の−18.5に低下したことや、欧州ユーロ圏主要国ドイツの4月独ZEW景況感調査の期待指数も前回の51.6と市場予想の9.5を下回るマイナス圏の−14.0に低下したことでは、欧州ユーロもドルに対して売られた外貨影響が対ドル円相場に波及し、昨夜20時20分頃には米国債売りで米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が一時4.401%付近と4.4%台に反発していた影響もあり、ドルは円相場で昨夜20時41分頃に一時143円19銭付近に反発していた。
また、明日に欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) 理事会の金利発表を控える中で、先日に「欧州連合 (EU / European Union) は依然として建設的で、米国との公正なディール(Deal / 取引)に向けた用意がある」と欧米関税交渉に前向きなコメントしていたマロス・セフコビッチ欧州通商担当委員が前日に米国でハワード・ラトニック米国商務長官達と会談したが、昨夜の米国ブルームバーグ通信 (Bloomberg) のニュースでは米国関係者筋の情報として、「米国と欧州連合(EU)の関税をめぐる交渉はほとんど進展していない。米国が提示した対EU関税の大半は撤廃されないだろう」と報じられた調整もあった。
その影響などから、昨夜21時頃から始まった米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は一時142円90銭付近の始値であったが、安全資産の米国債買いの影響でこの時間には米国長期金利は一時4.381%付近に反落しており、昨夜21時25分頃にドルは円相場で一時142円60銭付近と米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。
ただし、昨夜21時30分に発表された最新米国経済指標の4月米国ニューヨーク連銀製造業景気指数は前回の−20.0と市場予想の−14.5よりも改善された−8.1であったことでは、市場安値後のドルの買い戻しが一旦入ったが、同時発表の3月米国輸入物価指数の前月比は前回の0.4%と前回修正の0.2%と市場予想の0.0%を下回る−0.1%で、3月米国輸出物価指数の前月比も前回の0.1%と前回修正の0.5%を下回る市場予想通りの0.0%であったことでは再びドルが売られて、昨夜21時50分頃にドルは円相場で一時142円60銭付近の米国市場の円の高値でドルの安値を再記録した。
とはいえ、米国市場で2度目の安値をドルが円相場で下抜けしなかったことでは、テクニカル分析的なダブルボトム (Double Bottom) の二番底からの買いサインとなり、ドルは円相場で反発を始めたほか、先物市場では一時下落していた米国主要株価三指数が、昨夜の米国大手金融株の決算報告を受けて米国市場前半に一時買い戻されて揃ってプラス圏で推移した時間があったことでは市場高値後の低リスク通貨の円の利益確定売りや持ち高調整も入り、昨夜23時16分頃にドルは円相場で一時143円26銭付近に反発上昇した。
しかし、米国の対中貿易摩擦などへの警戒感は根強く、米国ニューヨーク株式市場では、米国主要株価三指数の米国ダウ工業株 (DJIA / Dow Jones Industrial Average) と米国S&P 500種株価指数 (S&P500 / Standard and Poor’s 500 index) と米国ナスダック総合株価指数 (NASDAQ / National Association of Securities Dealers Automated Quotations Composite) が米国市場後半に揃って反落してマイナス圏になると、株価下落時のリスク回避のリスクオフ (Risk-off) で低リスク通貨の円の買い戻しが入ったが、米国主要株価三指数は前日比で揃って安値の終値をつけたものの、S&P500やナズダックが小幅安に留まったことや、この日のシティグループやバンク・オブ・アメリカなどの米国大手銀行株の決算好感の影響では、市場終盤には低リスク通貨の円の利益確定や持ち高調整も起きて、米国ニューヨーク株式市場終了後の米国ニューヨーク外国為替市場終盤の今朝5時58分頃にドルは円相場で一時143円28銭付近と、米国市場の円の安値でドルの高値を記録した。
このため、昨夜21時頃から今朝6時頃までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値でドルの安値の142円60銭付近から、円の安値でドルの高値の143円28銭付近の値幅約68銭で、今朝6時頃のニューヨーク終値は143円21銭付近と、前営業日同時刻の143円6銭付近の前ニューヨーク終値比で約15銭の円安ドル高をつけた。
今朝早朝のオセアニア市場では、今朝6時台に米国長期金利が一時4.298%付近に低下したドル売りが先行し、今朝7時13分頃にドルは円相場で一時142円92銭付近に下落したが、今朝8時10分頃から次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) のリサ・クック理事の発言への警戒感などもあり、今朝8時21分頃には今日の日本市場に向けてドルは円相場で一時143円28銭付近に買い戻された。
しかし、今夜この後のFRBのジェローム (ジェイ) ・パウエル議長の発言予定が注目される一方で、FRBのリサ・クック理事の発言は大学における2025年度の優秀卒業生賞受賞者の挨拶程度で金融政策には特に言及しなかったことでは再びドル売りが入り、今朝9時頃から始まった今日の東京外国為替市場の対ドル円相場は一時143円16銭付近の始値になり、今朝9時0分の1分間の値動きの中で瞬時記録した一時143円18銭付近が今日の日本市場の円の安値でドルの高値となり、今日の日本市場では対ドルの円相場が上昇した。
今日の東京株式市場では朝から日経平均株価が下落しており、また米国経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル (WSJ / Wall Street Journal) が「第二次ドナルド・トランプ米国政権が、貿易相手国と行っている関税交渉を通じて、中国との取引を制限するよう圧力をかける計画であることが分かった」と報道した影響などもあり、米中貿易摩擦や米国相互関税による世界景気の先行き不透明感に対する市場警戒感の中ではドルに対して低リスク通貨の円が買われやすかった。
また、日本政府の赤沢亮正経済財政・再生相と米国政府のドナルド・トランプ政権の閣僚との協議予定が報じられ、加藤勝信財務相とハワード・ベッセント財務長官達の協議でも為替問題が論じられる観測報道があった影響もあり、米国相互関税回避のために日本政府が円安是正を強いられる市場予想による円買いも入り、対ドルの円相場が上昇を続けて一時143円台から142円台に向けていた。
日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) の植田和男総裁は、産経新聞のインタビューに応え、第二次ドナルド・トランプ米国政権の米国関税政策が日本経済に対する下押し圧力となった場合は、「政策的対応が必要になるかもしれないが、情勢の変化に応じて適切に判断する」と今後の政策見直しの可能性に言及し、「企業や家計のコンフィデンス(心理)は既に一部反応しているものもある」と米国相互関税政策がもたらす影響を見極める考えを示し、「トランプリスク」について、「2月以降は悪いシナリオの方に来ている。そこまで悪いことは起きないだろうという淡い期待感が消えた」が、関税の影響については「予断を持たずに点検する」と強調し、「見通しを丁寧に作っていく」としており、日銀は経済・物価の見通しが実現していけば追加利上げを継続する方針を維持していることを示唆しており、「賃上げの広がりを反映し、物価を考慮した実質賃金は今年半ばから後半にかけてプラス圏で定着していく」と予想していた。
午後14時台に今日の日経平均株価が下げ幅を広げる中で、前日比で一時609円超の大幅下落を見せた時間があったことでは、今日の午後14時59分頃に対ドル円相場は一時142円10銭付近と、株価影響のリスク回避のリスクオフの低リスク通貨の円買いを見せた。
市場終盤には安値からの株の買い戻しの抵抗もやや混ざったものの、今日の午後15時30分頃に今日の日経平均株価は3万3920円40銭の終値をつけ、前日比347円14銭安の-1.01%の大幅安で大引けした。
午後からの欧州市場に続き、夕方から世界最大規模の英国ロンドン外国為替市場が参入した頃には、ドナルド・トランプ大統領が「米国のインフレは低下している。ほぼ全ての製品のコストは下がる見込み」と発言していた影響もあり、時間外の米国債券取引で米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が低下する中で、夕方16時48分頃にドルは円相場で一時142円4銭付近の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録し、2024年9月末以来の今年最大の円高ドル安を更新した。
このため、今夜17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は142円14銭付近で、昨夜17時の143円22銭付近の前東京終値比で約1円8銭の大幅な円高ドル安になった。
なお、今夜その後の英国ロンドン外国為替市場では、今夜17時22分頃に米国長期金利は一時4.296%付近にまで低下したが、その後に「中国政府が、米国政府が敬意を示すなら交渉に応じる」との一部報道が話題になったことでは急反発して4.3%台に向け始めたため、今夜17時28分頃にはドルも円相場で一時142円95銭付近に反発している。
今夜この後の米国市場では、最新米国重要経済指標の発表予定と米国債入札予定や、次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) 高官達の中でも市場への影響力が最も強いジェローム(ジェイ)・パウエル議長の発言予定が注目されているが、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜21時30分に最新米国重要景気指標でもある3月米国小売売上高の発表と、今夜22時15分に3月米国鉱工業生産と 3月米国設備稼働率、今夜23時に4月米国NAHB (National Association of Home Builders / 全米住宅建設業者協会) 住宅市場指数と2月米国企業在庫、今夜23時30分に週間米国原油在庫、 26時に米国20年債入札予定と、26時30分頃からFRBのジェローム・パウエル議長発言予定のイベントがあり、29時に2月対米証券投資なども控えている。
米国株式市場でも、明日17日に米国ネットフリックス (Netflix) の決算報告予定などがあり、今週金曜日のグッドフライデー (Good Friday) やその後のイースターマンデー (Easter Monday) までの欧米連休を控えた世界の株式市場と債券市場やコモディティ市場などの為替相場への影響や、米国相互関税ディール交渉を含めた政治影響に加え、世界情勢と要人発言などのファンダメンタル分析向けのニュースは、テクニカル分析と共に世界のFXトレーダー達の値動き予想材料になっている。
一方、欧州ユーロは、今夜17時の東京外国為替市場の今日のユーロ円相場の終値は161円79銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の162円71銭付近の前東京終値比で約92銭の円高ユーロ安であった。
主な要因は、昨夜の欧米関税交渉の停滞報道を受けた欧米貿易摩擦の警戒感による欧州ユーロ売りによる低リスク通貨の円買いや、明日の欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) 理事会を控えた欧州追加利下げ予想が影響を及ぼしたほか、今日の日経平均株価下落を受けた株価リスク回避のリスクオフでも、欧州ユーロや英国ポンドに対して国内第一安全資産の低リスクの円が買われやすかった。
そのため、英国ポンドも、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は188円76銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日の夜17時の189円39銭付近の前東京終値比で約63銭の円高ポンド安であった。
なお、英国は対米貿易赤字国であることでは、米国相互関税に対する警戒感は欧州連合加盟国より弱かったことでは、比較すると円相場での下げ幅は小幅域になっていたが、英国財政懸念は燻っている。
また、今日の午後15時に発表された最新英国経済指標の3月英国消費者物価指数 (CPI / Consumer Price Index) は、前月比が前回と市場予想の0.4%以下の0.3%で、前年同月比も前回の2.8%と市場予想の2.7%を下回る2.6%であったことも英国ポンドの為替相場に影響を及ぼしたが、物価基調の3月英国CPIコア指数の前年同月比は前回の3.5%に対し、市場予想通りの3.4%であった。
ユーロドルは、今夜17時の東京外国為替市場の終値は1.1388ドル付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の1.1361ドル付近の前東京終値比で約0.27セントのユーロ高ドル安であった。
主な要因は、米中報復関税報道などを受けた世界的な安全資産の米国債買いの影響により、米国債券価格上昇に伴う利回り低下の影響があった時間の米国長期金利低下時のドル売りが影響を及ぼしてほか、トランプ関税の先行き不透明感によるドル売りでは、低リスク通貨の円買い以外にも、欧州ユーロなどの自国通貨を買い戻す値動きも観測されていた。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2025年4月16日の日本時間(JST / Japan Standard Time)の19時50分(チャート画像の時間帯は英国夏時間 (BST / British Summer Time / JST-8) の英国ロンドン外国為替市場時間の11時50分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。なお、米国市場は2025年3月9日から11月2日まで米国夏時間 (DST / Daylight Saving Time / JST-13) に日本との時差が1時間短縮に調整されており、欧州英国市場も2025年3月30日から10月26日まで英国夏時間のサマータイム (BST / British Summer Time / JST-8) に時差調整されたことには注意が必要である。
通貨ペア | JST 19:50の為替レート | 日本市場前営業日JST 17:00の前東京終値比 |
ドル/円 | 142.70 〜 142.72 | −0.52 (円高) |
ユーロ/円 | 162.09 〜 162.11 | −0.62 (円高) |
ユーロ/ドル | 1.1362 〜 1.1364 | +0.0001 (ドル安) |
英ポンド/円 | 189.25 〜 189.31 | −0.14 (円高) |
スイスフラン/円 | 174.60 〜 174.66 | −1.07 (円高) |
豪ドル/円 | 90.91 〜 90.95 | −0.15 (円高) |
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