FX週刊ニュース(10月2週)|ユーロ/米ドル:ユーロ安/米ドル高はさらに進行か?考えられる大きな要因とは?

2022年10月10日
FX週刊ニュース(10月2週)|ユーロ/米ドル:ユーロ安/米ドル高はさらに進行か?考えられる大きな要因とは?

東西FX週刊ニュース – 2022年10月10日

高田 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 米ドル/円:止まらぬ円安。1ドル150円となる日は近い?
  • ユーロ/米ドル:ユーロ安/米ドル高はさらに進行か?考えられる大きな要因とは?
  • 英ポンド/米ドル:イギリス財務省大幅減税を発表。英ポンドが急落へ。
  • 豪ドル/米ドル:安定傾向が続く相場。問題点は他国の経済状況か?
  • 続くエネルギー戦争。長く続くロシアウクライナ問題。
  • 金価格が若干の上昇傾向。今後の金価格相場は安定するか?

  • 米ドル/円:止まらぬ円安。1ドル150円となる日は近い?

円安の流れが止まらない。年初に1ドル=115円台だったドル円相場は、その後、上昇が続き、7月には140円目前まで迫った。ドル買い取引の手じまいなどから、一旦130円台前半まで下落したが、その後、再び上昇を開始し、9月にはとうとう140円を超えた。急ピッチで円安が進んだ理由について、一般的には日米の金利差であると説明されることが多い。

アメリカは量的緩和策からの撤退を進めており、金利の引き上げフェーズに入っている。一方、日銀は依然として大規模な金融緩和を行っており、ゼロ金利政策が続く。アメリカは金利が高く、日本はほぼゼロ金利であることから、分かりやすく「アメリカで運用したほうが有利なのでドルが買われる」といった説明が行われる。

筆者も時折そのような説明をすることもあるのだが、厳密に言うと金利差を活用した投資家の動きが直接、円安を招いているわけではない。

確かにアメリカのほうが金利が高い場合、日本円で資金を借りてドルで運用する、いわゆるキャリートレードと呼ばれる取引が活発化する。だが、現実にはキャリートレードを行う投資ファンドはそれほど多くないと考えられ、この取引が為替にもたらす直接的な寄与度はそれほど高くない。

為替取引を行う投資家にとって、金利差を活用した取引そのものよりも、理論上、そうした取引が可能であるという状況のほうが圧倒的に重要であり、これがドル買いを誘発していると考えてよいだろう。

加えて言うと、アメリカの金利が高いということは、市場からドルが回収されていると解釈できる。一方、日銀はゼロ金利を継続しており、日本円は大量供給されている。つまりドルの量は減り、円の量は増えているので、当然のことながらドルの価値は上がり、円の価値は毀損しやすくなる。

今回の円安について、あえてひとことで説明すれば、日本とアメリカの金融政策の違いがもたらしたものであり、日銀が金融政策を大きく転換しない限り、状況が変化する可能性は低い。

一部の専門家は、購買力平価による理論的な為替レートを根拠に、現在の水準は大幅に円安であり、円高に戻る可能性が高いと指摘している。

確かにドル円相場については、戦後、一貫して購買力平価に沿って動いてきたという歴史があり、購買力平価がそれなりの説得力を持っているのは間違いない。

  • ユーロ/米ドル:ユーロ安/米ドル高はさらに進行か?考えられる大きな要因とは?

今週は、日米欧の政策キーマン達の講演などが相次ぐ。注目はやはり、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウェル議長をはじめとした米金融政策キーマン達の言動である。インフレリスクとそれを抑制するための強力な金融引き締め政策が必要との見解が相次いで示される場合、11月の連邦公開市場委員会(FOMC)での大幅利上げとそれに伴う米金利の先高観、そして世界経済の先行きリスクが意識され、外為市場では米ドル高優勢の状況が続くことが予想される。

今週、注目の通貨ペアは下落トレンドが加速しているユーロドル(EURUSD)である。現状、ユーロドルは3つの要因-(1)経済の先行きリスク、(2)政治のリスク、(3)米欧の金融引き締め政策スタンスの差-により、下落幅が拡大する可能性が高い。

欧州中央銀行(ECB)はインフレの進行と通貨安に歯止めをかけるため、利上げスタンスへ急転換している。しかし、域内経済の先行きリスクの方が強く意識され、ユーロドルは2002年9月以来となる水準(0.9660レベル)まで下落し、ユーロ安が止まらない。

ロシアウクライナ紛争の長期化により、欧州経済は引き続きエネルギーの供給リスクとインフレリスクに直面するだろう。この状況が続くことを考えるならば、欧州経済の先行きリスクは、引き続きユーロ相場の重石となろう。

経済だけでなく欧州の政治情勢もユーロ相場の重石となる可能性がある。

25日に行われたイタリアの総選挙では、メローニ党首率いる野党の極右「イタリアの同胞(FDI)」が第1党となり、中道右派連合(FDI、極右「同盟」、中道右派「フォルツァ・イタリア」)の政権が発足する情勢となった。実際にイタリアで中道右派連合の政権が発足する場合、対ロシア制裁を含めた様々な政策でEUの結束が揺らぐ可能性があろう。そして金融政策の面でも、「ユーロ安/米ドル高」を促す状況が続く。

短期金融市場では、米国のFF金利が年内に4%台へ到達することを織り込み始めている。一方、ECBも年内に中銀預金金利を2%台まで引き上げる予想となっているが、米欧の相対的な利上げペースと政策金利の水準には明確な開きがある。そして現時点で、この差が埋まる可能性は限りなく低い。

  • 英ポンド/米ドル:イギリス財務省大幅減税を発表。英ポンドが急落へ。

クワーデング英財務相が40年ぶりとなる450億ドル(GDP比1%)の大幅減税を柱とする経済対策を発表した。その財源はすべて国債発行で調達される見通しだ。財政悪化への懸念から英ポンドが同日、1ポンド=1.09トドルと1985年以来となる37年ぶりの安値を付けたほか、英国二年物国債利回りも急騰して4%の大台を超えた。一年前の二年物利回りの0.4%と比べて10倍となった。

今回の経済対策の内容をみると、まず大型所得税である。来年4月から最高税率が現在の45%から40%に引き下げられる。年収20万ポンドの所得税引き下げにより年間4,500ポンドの減税になる。法人税率も19%から25%に引き上げる予定であったが、現行の19%を維持する。国民保健サービス(NHS)の保険料の引き上げも見送る。

さらに、株式の配当課税も大幅に引き下げられるほか、土地印紙税(スタンプ税)も住宅の第一次取得者の取得促進のために引き下げられる。またリーマンショックの時に導入された銀行員に対する賞与上限規制の撤廃も実施する。

エネルギーパッケージを通じたエネルギー価格の下落からピーク20%に達するとみられたインフレ率が4%程度引き下げられる効果がある、と試算されている。しかし、インフレ率の低下は総需要の増加によって相殺されるとともに総需要抑制のためにBOEは追加的な金利引き上げを強いられることになる。

有力シンクタンクの見通しでは、拡張的な財政政策の影響で、BOEは5%までの利上げを強いられるとして少なくとも2024年まで利下げ局面を迎えることはないと予想している。

今般の米国のインフレ急騰とFRBの「物価上昇は一時的」との楽観を早い段階から警告していたラリー・サマーズ元米財務長官はブルームバーグテレビに出演して「英国は主要先進国で最もひどいマクロ経済政策を遂行した、と長く記憶されることとなろう」と酷評している。英ポンドの下落、英国債の金利上昇が続いたとしてもやむを得ないであろう。

  • 豪ドル/米ドル:安定傾向が続く相場。問題点は他国の経済状況か?

今週もオーストラリアドルは安定傾向であった。豪ドル/米ドルは0.6400あたりで推移し、大きな上昇下落は見られなかった。豪ドルの政治的安定も経済へ良い影響を与えており、当分の間はオーストラリア国内で大きな問題は発生しなさそうだ。

唯一の懸念は世界経済の減速である。世界全体の後退懸念が資源国通貨である豪ドルの上値を抑える可能性が十分に考えられる。豪州国内の景気がいくら堅調な回復を見せていても、世界経済の減速によって資源需要が減退。ゆくゆくは豪州の輸出減に繋がり、豪経済に悪影響を与えるとの考え方からだ。

周知の通り、アメリカ、ヨーロッパ諸国をはじめとした。「主要国の金融引き締め方針」という金融政策の方向性の違いが世界経済に影響を与えてきており、長期目線で豪ドルにどのような影響を与えるかを専門家は懸念をしている。

  • 続くエネルギー戦争。長く続くロシアウクライナ問題。

主要石油輸出国機構であるOPECプラスが5日(現地時間)、来月から1日の原油生産量を200万バレル減産することで合意したことから、エネルギーをめぐる覇権競争が激化するものとみられる。ウクライナ戦争でこの冬の欧州のエネルギー問題に対する懸念が続く中、各国はそれぞれ生き残りをかけた戦略を打ち出している。

この日のOPECプラスの減産幅は、市場の予想(100万バレル)をはるかに上回る水準で決定された。新型コロナパンデミックが始まり世界経済が冷え込んだことで、1000万バレル減産に合意した2020年4月以降、最大幅の減産だ。5日の国際原油価格(ブレント原油12月先物)は、OPECプラスの大規模な減産のニュースで前日より1.71%上がった93.37ドルを記録した。

今現在は米国がサウジとロシアに自尊心を傷つけられたものと見られるが、「ウォール・ストリート・ジャーナル」は「エネルギー戦争の勝者には誰もなれない」と分析した。OPECプラスの減産決定は、短期的には原油価格上昇と影響力拡大につながるだろうが、長期的には米国を含む西側諸国を刺激し、逆風を受ける恐れがあるということだ。同紙は「ホワイトハウスはグリーンエネレギー転換の意志を強調した」と「産油国がいま原油(販売)収入を最大化しようとするならば、西欧は石油からさらに早く遠ざかる方法を探すだろう」と伝えた。

米国と欧州などの主要国はエネレギー騒動を防ぐために、「自国優先」戦略に頭をひねらせている。バイデン大統領は11月8日の中間選挙を控え、「原油輸出制限」カードをちらつかせている。輸出を制限し、自国内での原油と石油製品の価格安定を図る計画だ。ジェニファー・グランホーム米エネレギー相は、石油企業の輸出拡大が米国内でエネレギー価格を引き上げる要因として作用していると思うと述べた。「ロイター通信」は4日、「業界ではバイデン政権が輸出制限を強行する可能性があるとし、ますます憂いている」と伝えた。

  • 金価格が若干の上昇傾向。今後の金価格相場は安定するか?

金相場は、月曜日に欧州大手銀行への懸念から株式市場が下げ、OPECの原油減産への懸念から債券価格が上昇する中で、最新のデーターでは、コメックス先物・オプションの投機家の金地金への強気ポジションは14年前のリーマン危機以来最低となっているにもかかわらず上昇していました。

先週の資金運用業者による子メックス金先物・オプションへの強気ポジションは、金価格が2011年の世界金融危機のピーク1920ドルから45%下落し、ようやくトロイオンスあたり1045ドルで底打ちした2015年のクリスマスにつけた最低値をわずかに下回っっていました。

ドル建て金現物価格は、先週1.0%上昇し、8月中旬以来の大きな上昇となった後に、本日ロンドン時間昼過ぎに0.3%高のトロイオンスあたり1665ドルをつけていました。これは、国債利回りと株式市場が共に再び下げ、エネレギー価格は上昇する中で、堅調ながら小動きとなっていました。

今週の経済指標カレンダー
時間 経済指標(イベント) 通貨 重要度
月曜日 – 2022年10月10日
1日中 カナダ – 感謝祭 祝日
1日中 日本 – 国家体育の日 祝日
18:10 ドイツBubaヴエルメリンク氏発言 EUR
21:00 ドイツ連銀総裁ナーゲル氏発言 EUR
22:00 ECBのレーン氏発言 EUR
火曜日 – 2022年10月11日
06:45 電子カード小売り販売数 (前月比) (9月) NZD
08:01 BRC小売売上高 (前年比) (9月) GBP
08:30 Westpac消費者信頼感指数 (10月) AUD
08:50 季節調節済み経常収支 JPY
08:50 経常収支(季節調整なし) (8月) JPY
09:30 NAB企業信頼感指数 (9月) AUD
15:00 平均賃金(含ボーナス) (8月) GBP
15:00 失業保険申請件数 (9月) GBP
15:00 雇用者数(対前3ヶ月) (前月比) (8月) GBP
15:00 失業率 (8月) GBP
21:00 ドイツ連銀のブルクハルト・バルツ氏発言 EUR
21:45 ECBのレーン氏発言 EUR
22:00 ECBのエンリア氏発言 EUR
水曜日 – 2022年10月12日
00:00 ドイツBubaヴエルメリンク氏発言 EUR
00:30 FOMCメンバー ハーカー 談話 USD
01:00 FOMCメンバー、メスター談話 USD
01:45 スイス国立銀行 トーマス・ジョルダン総裁発言 CHF
02:00 3年物中期米国債入札 USD
03:00 MPC委員カンリフ氏の発信 GBP
03:00 ECBのレーン氏発言 EUR
03:35 BOEベイリー総裁発言 GBP
07:00 オーストラリア準備銀行 エリス総裁補発言 AUD
08:01 RICS住宅価格指数 (9月) GBP
15:00 国内総生産 (前月比) GBP
15:00 国内総生産 (前年比) GBP
15:00 鉱工業生産 (前月比) (8月) GBP
15:00 製造業生産 (前月比) (8月) GBP
15:00 月次GDP(対前3ヶ月) GBP
15:00 貿易収支 (8月) GBP
15:00 非欧州連合貿易収支 (8月) GBP
17:00 MPC ハスケル委員発言 GBP
18:00 鉱工業生産 (前月比) (8月) EUR
18:30 10年物独国債入札 EUR
20:00 OPEC月次報告 USD
20:35 BoEのMPCピル委員発言 GBP
21:00 NIESR 月次GDPトラッカー GBP
21:30 コアPPI (前月比) (9月) USD
21:30 生産者物価指数 (前月比) (9月) USD
22:30 ラガルドECB総裁 発言 EUR
木曜日 – 2022年10月13日
01:00 EIA短期エネルギー見通し USD
01:00 WASDEレポート USD
02:00 イングランド銀行金融政策委員会委員マン委員発言 GBP
02:00 10年物中期米国債入札 USD
03:00 FOMC議事要旨 USD
05:30 米国石油協会 週間原油在庫 USD
07:30 連邦公開市場委員会メンバー、ボウマン氏発言 USD
15:00 ドイツ連銀総裁ナーゲル氏発言 EUR
15:00 消費者物価指数 (前月比) (9月) EUR
15:00 消費者物価指数 (前年比) (9月) EUR
15:30 生産者物価指数 (前月比) (9月) CHF
17:00 IEA月次報告 USD
17:30 イングランド銀行 信用状況調査 GBP
20:00 イングランド銀行金融政策委員会委員マン委員発言 GBP
21:30 コアCPI (前月比) (9月) USD
21:30 コア消費者物価指数 (前年比) (9月) USD
21:30 消費者物価指数 (前年比) (9月) USD
21:30 消費者物価指数 (前月比) (9月) USD
21:30 失業保険申請件数 USD
金曜日 – 2022年10月14日
00:00 原油在庫量 USD
00:00 クッシング原油在庫 USD
未定 次連邦財政収支 USD
06:30 製造業購買担当者景気指数 (9月) NZD
10:30 消費者物価指数 (前月比) (9月) CNY
10:30 消費者物価指数 (前年比) (9月) CNY
10:30 生産者物価指数 (前年比) (9月) CNY
12:00 中国輸出 (前年比) (9月) CNY
12:00 中国輸入 (前年比) (9月) CNY
12:00 貿易収支 (米ドル) (9月) CNY
15:45 消費者物価指数 (前月比) (9月) EUR
15:45 フランスHICP (前月比) (9月) EUR
16:00 スペイン消費者物価指数 (前年比) (9月) EUR
16:00 スペインHICP (前年比) (9月) EUR
16:55 ドイツBubaマウデラー氏発言 EUR
18:00 貿易収支 (8月) EUR
19:00 ユーロ圏財務相会合 EUR
21:30 コア小売売上高 (前月比) (9月) USD
21:30 輸出価格 (前月比) (9月) USD
21:30 輸入物価指数 (前月比) (9月) USD
21:30 小売売上高 (前月比) (9月) USD
21:30 製造業売上高 (前月比) (8月) CAD
21:30 卸売売上高 (前月比) (8月) CAD
23:00 企業在庫(前月比) (前月比) (8月) USD
23:00 ミシガン消費者信頼感見込み最終 (10月) USD
23:00 ミシガン大学消費者信頼感指数 (10月) USD
23:00 小売業在庫(自動車を除く) (8月) USD
土曜日 – 2022年10月15日
02:00 ベーカー・ヒューズ社のリグ・カウント USD
02:00 ベーカーヒューズ社発表の米石油採掘リグ稼働数 USD
04:30 米国商品先物取引委員会 英ポンド
投機的ネットポジション
GBP
04:30 CFTC原油の投機的なネットポジション USD
04:30 米国商品先物取引委員会 金
投機的ネットポジション
USD
04:30 米国商品先物取引委員会 Nasdaq 100
投機的ネットポジション
USD
04:30 米国商品先物取引委員会 S&P500
投機的ネットポジション
USD
04:30 米国商品先物取引委員会 豪ドル
投機的ネットポジション
AUD
04:30 米国商品先物取引委員会 円
投機的ネットポジション
JPY
04:30 米国商品先物取引委員会 ユーロ
投機的ネットポジション
EUR
21:30 ドイツ連銀総裁ナーゲル氏発言 EUR
22:00 BOEベイリー総裁発言 GBP


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